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一人芝居  作者: 志波 連
3/20

 通学路の中ほどにある秋葉神社のすぐ隣には西浦地区会館という施設があります。

 ここは小春が所属する演劇部が、今回の練習成果を発表する会場でした。

 高台にある会館は坂の下の道からもよく見えて、夕陽が当たると黄金色に輝くのです。


「母さん、わたし発表会がんばる。明日の朝一番に英子に謝るよ。それでまた一緒に練習させてもらえるように頼むね。だからお願い……早く目を覚まして観に来てよ」


 そう心の中で呟くと、地区会館の舞台をちょっと覗いてみたくなった小春は黄金色の坂を上って行きました。

 神社の脇道を上り、石段を10段ほど登ると地区会館です。

 500人ほどのキャパがある場所で、この町の規模には少し贅沢な施設といえるでしょう。


「あれ? 開いてる・・・・・・」


 誰もいないはずの会館はなぜか玄関が開いていて、小春は中に入っていきました。


 ホールの中の照明は消えていましたが、窓の暗幕の隙間から漏れる夕陽が、舞台を浮かびあがらせていて、まるでスポットライトに照らされているように見えます。

 エアコンもついていないはずなのに、ホールに入った途端に汗がスッと引き、逆に背中の真ん中から冷たいものが広がっていくような感じがしました。


 両腕にじわじわっと鳥肌が立ち、寒気に身体がぶるっと震えます。

 少し気味悪く思った小春は踵を返し、出ていこうとしましたが思ったように足が動きません。


「なに? どうしちゃったの?」


 そんな小春の脳に若い女の声が直接響きました。


「誰じゃ」


「え? なに?」


「私は秋葉城主・神崎光成の娘、七緒である。そなたは誰じゃ」


 驚いて逃げようとしても、小春の足は床に縫いつけられたように動きません。

 舞台を見ると、光が人の形に集まって中央に浮かんでいるではありませんか。

 怖くて声を上げようとしても、何故か声もでません。


「私は七緒。お前は誰かと問うておる」


 その瞬間、小春のスマホが着信音を鳴りました。

 それと同時に舞台の光は消え、小春の体も金縛りが解けたように動くようになったのです。

 着信に出ると、病院からでした。


「もしもし・・・・・・」


 それは奈津子が亡くなったことを知らせる電話でした。


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