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一人芝居  作者: 志波 連
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『吾じゃ! 紛れもなく吾に宛てたもの。その真実とはなんじゃ? あの火事のことか? ええい! じれったい! 早う持って参れと言え!』

 

 七緒に代わって小春が言いました。


「教えてください! 何が書いてあるのですか? 姫とは七緒のことですか?」


「よくご存じで。おそらく神崎七緒姫のことでございましょう。最後の城主である神崎光成様には七緒姫しかお子がなかったはずですから」


「それで、中にはなんて書いてあるのですか?」


「申しましたようにこれは『開かずの巻物』でして。私どもが開こうとしましたら電流のようなものが流れて開けることができないのです。私も何度も試みたのですが、どうにもなりません。この近代科学の世の中では信じがたいですが、陰陽師の呪術としか考えられないのです。公にするにはいささか荒唐無稽が過ぎるとして、ずっと秘匿とされてきたのです。もし本当に陰陽師の呪術であれば、七緒姫しか開くことはできないと伝えれております」


『小春! 早う開けよ。私にしか開けられぬなら、今のお前にはできるはずじゃ!』


小春は頷き、神主の顔を正面から見据えました。


「倉橋さん。その巻物、見せていただけませんか」


「ここまでお話したのですから、見せるのは吝かではございません。しかし開けるのには賛成しかねます。先ほどから申しておりますように、本当に危険なのです」


「危険とわかったら諦めます。見るだけでもいいのです。お願いします!」


「……承知いたしました」

 

 そう言うと宮司は奥へと行き、古い木箱を持って戻ってきました。


「少しでもあなたの危険が下がることを願い、まずは祈禱を捧げましょう」


 巻物の入った箱を神棚に備えると、腹の底から響くような声で何やら神に祈り始める宮司。

 小春は仕方なく、その後ろで畏まって頭を下げたが、七緒はイライラと悪態をついていた。


「終わりました。でも本当に気を付けてくださいね。少しでもピリッとしたら手を離すんですよ」


「はい。ご心配いただきありがとうございます。でも大丈夫だと思います」


 宮司は一瞬ポカンとしたが、諦めて神棚から木箱を降ろした。


「これでございます」


『待ちかねたぞ! 小春、さあ、開けるのじゃ』

 

 そっと木箱に手を伸ばす小春。

 ふたを開けると中には絹の表装がされた巻物が入っていました。

 何の躊躇もなく手を伸ばすと、親切な宮司が慌てて声を出します。


「危険です! やはりやめましょう」


 宮司の言葉より先に小春の手が巻物に触れました。


「あっ!」


 宮司が小春を止めようと手を伸ばしながら叫びました。

 小春の手に載った巻物が一瞬激しく光を放ちました。

 そしてスッとその光は消え、巻物を守るように結ばれていた真田紐がプツリと音をたてて切れたのです。


「なんと! これはどうしたことだ」


 驚く宮司をよそに、ゆっくりと巻物を開く小春。

 そこには驚きの真実が記されていました。


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