悪夢の序
「僕の中に君はいるのだろか?」
「君の中に僕はいるだろうか?」
ただそれだけ確認したかったから。つ
僕は向かうよ、君のもとへーー
19歳 学生
12月、4月から始まった大学生活ももう半年以上が過ぎ、慣れというか怠惰な生活が続いていた。
そんなある日彼はやって来た。
”ピンポーン”
ネットで「コードレスマウス」を購入したのを思い出し「はい」の二言返事で扉を開けた。
そこにいたのは…
「誰?」思わず声に出てしまった。
ぼろぼろのジーンズを履き、薄汚れた緑のパーカーを着た中年の男。
頭部はもっとひどい、ぼさぼさの髪は目までかかり、無精ひげを立派にたくわえたその口は「こいついっちゃってるな」と思わせるように笑っている。でもなぜか濁った眼はどこか芯があり、俺をじっと見つめている。
明らかに宅配業者の類ではない。では友人?いや、自分が一番嫌いなタイプの人間「不潔野郎」を友人なんかにする訳がない。友人の変わり果てた姿とか、だったら「残念・バイバイ」としか言いようがないが…。
「俺か」
何か不審者がしゃべった。その目からは黒い大粒の液体が、涙が頬を伝っていた。
う…こいつホンモノさんだ。初めてみたよ変質者。露出狂、ストーカーなど思い浮かぶ。
こいつはどのジャンルにも分類できなさそうだ、新手か。「変な人には近づくな」全人類みな兄弟の共通意識であるこの言葉が私の脳内に響きわたっている。
「失礼」
扉をすっと閉めた。いや閉まらない。
「あれっ?」
男は扉をしっかりと掴んでいたのだ。びくともしない。
私は最終手段である叫ぼうとした瞬間。
男はそのまま扉を力ずくで開け、私の顔の近くに汚らしい口を近づけ囁いた。
「目をそむけるな」
なぜかその言葉に私の悲鳴は打ち消されていた。
正確には声が出なかった。
殺されると思った。
でもこいつ何かが違う…
「時間が無い」男は続ける
分かった俺がこの男を一番嫌いな理由。
「俺はお前だ…」