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このゲームにはまだ名前がない  作者: 榊巴
第一章:序節 鬼ごっこ
19/24

一章:序説 第十九話 裁定

ハッ!? そう目を覚ますと知っている天井が目の前にあった。

トリステルが顔を覗かせる。


「あ、お姉ちゃん 無事!?」


「え? え!? トリステル様!!」


驚いて起き上がるミエラ。

周囲を見渡すと、医務室に居るようでトリステルと槍を支えに寝ているグラディウスが居た。


不思議とみんな無事だということに、安心したのか一息つかせる。


「お姉ちゃん すっごい血出てたけど、大丈夫? 今も痛くない?」


そう言われ、無意識に顔を触れる。

そこに何の痛みも、違和感もなかったため、ミエラは「大丈夫だよ」とそう伝える。


トリステルは安心し、ベッドの横にあったイスに座る。

「よかったー」


その勢いで出た音で起きるグラディウス。

すっと焦点を合わせるとベッドから立ち上がっていたミエラを見るやいなや、急いで駆け込み「大丈夫か!?」と2度目(・・・)が起こる。


ミエラはグラディウスも安心させるように、

「大丈夫大丈夫」と逆にグラディウスを心配する。


「ああ、俺は騎士だ これぐらいの怪我なら全然....それにクラカルのあれは本気じゃなかった」


それは私も思う。

本気で殺そうとしていたなら、

"もうとっくに殺されていた"


そんな力量を感じさせるほどの相手だった。


一瞬ハミルトンの.....姿を思い出す。


それで吐き気を催してしまうミエラ。

大丈夫か?と優しく背中を擦るグラディウス。


「グラディウス様はすごいですね

私は結局なにもできませんでした」


「いいや一番勇敢なのは君だ ミエラ

君が居なければ、俺はもうとっくに...」


トリステルが割って入る。

「そんなことはどうでもいいよ 2人とも無事だったんだから ....僕憲兵呼んでも、全然入れなくて心配で心配で」


そう目をうるわせていた。


すると部屋へと入る人が何人かやってきた。


そこにはアルトとアルランとマクナガルが入ってきた。

3人とも私を見つけるやいなや、一同「大丈夫か?」と駆け寄ってきた。

3度目です。


(みんな心配してくれたんだ....)


―、

アルト

「結局今回はダンタリ騎士団の暴走が原因なのか?」


グラディウス

「.....分からない」


アルト

「分からないって ミエラも巻き込まれててそれを一言で済ましていいのか?」


グラディウス

「.....」


アルランはその2人の間に入る。

「ともかく今回の首謀者を学園側は捕まえたという話だ」

アルト、マクナガル、ミエラ

「「え」」


トリステル

「そうなの?」


ミエラ

(ちょっと待って、)そう顎に手を添える。


アルト

「ま、待て 首謀者? 本気で言ってるのか?

そんな噂1個も....」


マクナガル

箝口令(かんこうれい)...」


アルランは顔を崩さずに話す。

「元々この学園は様々な国の貴族の子たちが入学する仕組みで国家間の法にのらない独自の法がある。

だから、ここの領地を持つ王家(・・)でも分からない所が多い。」


グラディウス

「.......首謀者は誰だ アルラン」


アルランは目を閉じ、少し声を落として言った。


「今回の首謀者は....

クレス・カルエ・デ・サルゴという人物だ」


一同は皆目見当がつかない様子だった。


ミエラは"その名前に聞き覚えがなかった"。


(私は知らない....

え? 本来ここで追放されるのは、

クレス・ロンドールって子じゃないの?)


クレス・ロンドールとは、

ここ(・・)を治めるロンドール辺境伯の一人息子。

いや、作中では確か辺境伯の当主(・・)の地位を持っていたはず。

白い髪に不思議な色合いをした高身長の少年だが、様々な問題を学園に持ち込むアルテメリア学園での悪役だった。


悪役令嬢はアリス・カルタミナル様だけどね。

だけど、今回の事件のせいで首謀者だと疑われそのまま追放処分になる子だった。


(名前が似てる....だけど カルエ・デ・サルゴがノイズすぎる。)


ミエラは疑問からさらなる疑問が浮かび上がる。

ミエラは立ち上がり、その疑問を晴らすために動く。


アルト

「ミエラ?」


ミエラ

「すみません ちょっと野暮用が」


アルト

「その体で!? ついていこうか?」


グラディウスは立ち上がる。

「いや俺が」


トリステル

「僕も」


ミエラは大丈夫と言いながら、そそくさと出ていった。


ミエラ

(この学園には裁判所があるはず 今すぐに向かわないとクレスが追放されちゃう!)


医務室に残された一同に沈黙が走る。


グラディウス

「.........」


アルラン

「グラディウス ミエラは戦えたのか?」


アルト

「おい アルラン いくらなんでも」


グラディウス

「本人は戦いたくないとおもう」


マクナガル

「....ふん 羊飼いの1人が血に染まる必要はないのにな」


トリステル

「でもグラディウスを助けようとしていたよ?」


アルランは少し俯かせる。

「.........彼女はなにかを知っているそうだな

貴重な情報源だ グラディウス彼女を護衛しろ」


グラディウス

「御意」


アルト

「俺はミエラが心配だから俺も彼女の側に居る」


トリステル

「ぼくも」


アルランは「そうか」とそう冷たく言い、そのまま医務室に出る。


マクナガル

「調べ物がある すぐに出る。」


彼もすぐさまに出ていった。


―、

アルランは壁を叩く。

「クソッ 俺が近くに入れば彼女は傷がつかなかったはずなのに....首謀者はクレス(・・・)ではない そんな簡単な話じゃない 絶対に捕まえてやる」


そう意気込むアルラン。


―、

マクナガルはすぐさまにミエラたちが戦った場所とクレスという首謀者の逮捕現場へと向かっていた。

「暴いてやる この落とし前 高くつく」


そう凄んでいた。


――――――――――


「え.........」


一同が驚愕していた。


噂が今さら(・・・)ながらも聞こえてきた。

ミカエラ

「.....朝に事件があったの?」


アリス

「その首謀者がクレスさ...ま?」


2人にあるはずの笑顔で居たはずのクレスの姿が瓦解する気分になった。


「そう 私目の前で見たんだけど、アディス王女さまに襲いかかろうとしていたんだって」


「恐いね ねー」


「私見た見た 血まみれの状態だったよね」


箝口令が敷かれているはずなのに、噂は瞬く間に広まっていたようだった。


ミカエラとアリスはおもわず閉口してしまっていた。


ヘルナ

「その当時の状況って覚えていますか?」


「え? 突然だったよ 目が覚めると白い男が王女に襲いかかろうとしてたってだけ。

周りみると血まみれだし、壁傷だらけですっごく怖かった。」


そう当時の状況を語る少女。


「みんな何が起こってるか分からないうちに憲兵さんたちがその男の子を取り押さえてた光景までは見ていたよ」


クレア

「そう...でしたか 皆様おつらいのにお教えくださってありがとうございます」


「ううん やっぱり話さないと落ち着かなくて」


「うんうん」


「私もそう感じる。 近くに殺人鬼が居るって考えたらもう怖くて」


―、

沈黙が通る一行。

一生懸命に探していたはずの男性を、

男性は殺人を犯していたショックは一体どれほどのものなのか想像だにもできない。


私はただ後ろにある教室(・・)に背を向けるほかがなかった。


ヘルナ、クレア

「「アリス様、ミカエラ様」」


何も擁護ができない状況に一言添えることができない私たちをお許しください。


そう心から祈らざるおえなかった。


ミカエラ

「.....アリス様 やっぱりクレア様にお会いしませんか?」


アリス

「ミカエラ?....だけど私....」


ミカエラ

「お気持ちはご理解できます。

ですが私たちはクレス様にまだお会いしたことはありません」


アリス

「......」


ミカエラ

「そうです まだお会いしたことはないのです ですから1回会ってから一緒に考えてみませんか?」


アリスは考える。

「そうね....まだ感謝の礼も行っていないのですから ちょっとは叱責の一言くらい述べさせていただかないと割に合いませんわ」


勇気づけたミカエラにのっかるヘルナとクレア。

「「そうです アリス様 クレスというお方に裁きの言葉を!!」」


アリス

「そんな重苦しい言葉は言うつもりはないのだけど....」


ミカエラはそれを聞き、あははと少し元気に笑う。


―――――――――


俺は檻の中にいた。

冷たい石畳、寂れたイスに青い空が映る窓がどこか終わりを感じさせた。


どうしてこうなったのか...


ただ言えることはあった。

恐らく本命は"イリアスを殺すこと"ではない


俺....なのか?

だけど動機は?


考えれば考えるほど、謎しかなかった。


そして.....

ダントルの死と記憶、リミカルドの思い出と狂気、壊れかけた子供を思い出す。


「」おえ、おえおええええ


えづく。 耐えられなかったようだった。


もし自分が原因であるのなら、彼らを巻き込み、人を殺す恐怖が自身に震えをもたらす。

今だにあの光景が目に焼きついていた。


赤く、あかく、明く 


だけど、俺はその選択肢(つみ)を背負わないといけない。

()に言われた通りのことをしないと...


ぎいぃっと奥の扉から入ってくる人が居た。

その人物はエデリだった。


「クレス....」


「エデリ様」


エデリは深刻そうな顔でベンチに座り込む。


「無理言って、この留置所に入れてもらったよ」


「エデリ様 俺は....」


「人のせいにしてはいけません」


そういうエデリは凄んでいた。


「え.....」


どこかピシリと何か(・・)が悪い感触があった。

心臓が痛くなった。


「人を....殺したらしいですね

十戒(じっかい)に書かれていることをどうして君は守らなかったのですか?」


そう諭していた。


そうか....


「ですがイリアスが襲われて....どうしようもなく」


「主に誓えますか?」


「.....主に?」


「ええ、あなたは"石を投げられる人"だと言えますか?」


「それは.....」


"石を投げられる"

それは羊飼いが罪ありきと疑われる人が周囲に石を投げられる様を見て、周囲に投げかけた。

『ここに自身に一切の罪を犯したことがない者のみが"この者"に石を投げよ』


そう言い、唯一石を投げていたのは羊飼い()のみであったという逸話だ。


「人に罪を擦りつけてはいけません

あなたの行動は人に迷惑をかけたのです。

あなたが背負うべき罰なのですよ

クレス」


『そうだ お前が悪い クレス』


どこからともなく声が聞こえる。

周囲を見渡すクレス。


そっぽを向かれたように感じたエデリ。

「はぁロートリウス様がこれを見たら、一体どう嘆くか.....」


そう頭を抱えるエデリ。


「しかし これほどクレスが【7つの大罪(・・・・・)】に匹敵するほどの傲慢(ごうまん)さとは私も驚きました。」


その言葉に驚きを持つクレス。


エデリは立ち上がり、吐き捨てるように言う。


「悔い改めなさい 主はあなたを見ています 最期の審判に相応しい人物にはクレス

あなたにはなれないでしょう。」


「.....ひどいことをおっしゃいますね」

どうしようもなく反論したくなった。


「ひどい? 血を染めた者に救いを投げかけているのですよ?

その傲慢さ 此度の審判で洗い流さないといけませんね」


そう言うエデリの目は冷たく眺めていた。


(やっぱりこの人に相談をしなくてよかった だけどもし相談していたらこの結果も変わっていたのだろうか.....)


そう言いたくなった。


ガチャリと憲兵が現れる。

「おい出ろ」


そう言われ、どこかへと連れてかれる。


俺はその場の真ん中に立たされる。


観客が周囲に居り、俺を見つめていた。

その中には、心配そうに見つめるイリアスとハク。

だがエデリの姿はなかった。


カンカンそう木槌で打たれる音が響く。


「これより 此度の"学園襲撃事件"のその首謀者であるクレス・カルエ・デ・サルゴの裁判を始める。」


俺が居た場所は裁判所だった。


裁判長

「被告人 クレス・カルエ・デ・サルゴよ

あなたは此度の事件の首謀者である。

相違(そうい)ないね?」


クレス

「違います」


周囲がざわざわとなる。


周囲を見渡すと、様相は学園の装飾が飾られており、恐らくは学園内での簡易(かんい)裁判所であろうと推測した。


だが、弁護側であると思われる席には"誰も居なかった"。


クレス

(私的裁判か.....)


ヤジが飛ぶ。

「ふざけるなー!! うちの子供が重傷を負い、今も辺獄(リンボ)彷徨(さまよ)っているんだぞ!!」


クレス

「それはお悔やみ申し上げます。

ですが私は何もしていません。

友人であるイリアス・ロンドールが狙われていることを知り、襲撃者と争っていた次第です。」



裁判長

「では 首謀者は他に居ると?」


クレスは毅然(きぜん)と言う。

「はい。」


バンッ と机を叩き、立ち上がる人物が居た。

彼の様相は青の肩がけ布を掛けた金髪の男が居た。

「裁判長 彼は嘘をついています。

発言の許可をしてよろしいですか?」


裁判長

「よろしいでしょう

学園神秘学 学部長 グレゴリウス・ダイアロゴス殿」


その言葉を聞いたグレゴリウスは一礼をし、発言する。

「かの者 クレス は聞けばロートリウス公の弟子とお聞きします。

農民の出でありながら、図々しく学園に居座る姿は何かをしていたに違いありません。」


裁判長

「ですがそれだと、確証はありません。

エーゲ帝国の法にも『疑わしきは罰せず』と考えられます。」


グレゴリウス

「いいえ 疑わしきは罰するべきです。

現に彼は此度の襲撃者、ダンタリ騎士団に手紙を送っていたのですから!!」


周囲がざわざわとなっていた。


クレス

(たった一日も経たずにイリアス暗殺まで持っていける魂胆がすごいな)


イリアス

「ま、待ってください!!」


周囲から声が響く。

その声の元から離れようとするとその声の主が現れた。


裁判長

「かの子供は?」


グレゴリウスは少し睨みつけるように見つめる。

「イリアス・ロンドール 彼はロンドール辺境伯の一人息子です。

此度の学園襲撃事件の被害者です。」


イリアス

「発言の許可を!!」


裁判長

「よろしい 一刻(一分)だけだ」


イリアス

「クレスは何もしていません。

彼は僕を助けようと一緒に戦ってくれたのです。

もし本当にしゅぼう....」


カンカンカンと音が鳴る。

「静粛に やはり子供の戯言に時間を割いたことは失敗であった。」


イリアス

「え....なんで」


そう倒れそうになるイリアスを支えるハク。


クレス

(すまない イリアス 今回は私的裁判(・・・・) 結果は決まってる)


グレゴリウスは頭を抱える。

「ああ、此度の被害者にはアディス大王国王女が居たという話ではないですか」


裁判長

「なんと 隣国の賓客も巻き込んだと」


グレゴリウス

「そして証人もいらっしゃいます。」


そう検察側であろう場所から1人の少女が出てくる。


イリアス

「君は!?」


ハク

「え!?」


クレスは目を見開く。


ラナ・ミリエスタ

「はい 彼が首謀者になります」


そう冷たく指をさす。


クレスは思う。どうしてと


ラナ

「クレス様は此度の首謀者だと自分自らおっしゃていました。

これが秘密だと」


そう嘘泣きをしていた。


「私....しんどくてしんどくて」


グレゴリウスは宥める。

「ああ、なんとか弱い子羊にもこの始末。

裁判長 彼は大罪に必すべきかと考えられます。」


裁判長

「失礼ですが、グレゴリウス殿

その大罪(・・)とはなんですか?」


グレゴリウスは説明する。

「人が誘惑されてしまう大きな罪だと言われています。


傲慢(ごうまん)

嫉妬(しっと)

憤怒(ふんど)

怠惰(たいだ)

強欲(ごうよく)

暴食(ぼうしょく)

色欲(しきよく)


の7つとされています。」


裁判長

「では彼はどの罪に該当するでのか?」


グレゴリウスは笑う。

「傲慢と怠惰でしょう


彼の者は傲慢にも人を見下し、自身の罪は避けられると考えたあの発言(・・・・)


そして、自身で行わず、他者に罪を擦りつけるその姿、怠惰と言わざるおえません」


裁判長

「なるほど....ではみなのもの 各々が思う裁定を下してください」


周囲は親指を立て、サムズアップしていた。

ヤジが飛ぶ。


クレスは少し驚く。

(え? グッジョブってことかその意味?)


カンカンカンと木槌が叩かれる。


静粛(せいしゅく)に 静粛に!!

民意がなされました。

判決を下します。


被告人 クレス・カルエ・デ・サルゴ


彼を 学園 追放処分と下しま...」


「異議あり!!」


ざわざわとなる周囲に、一際大きな声が響く。

「誰を持って、簡易裁判を下しておる

裁判長」


裁判長は「この声は」と驚く。


グレゴリウスは舌打ちする。


かつりかつりと民衆をかき分けるローブをかけた人物。

「そも この学園は各国間の協力の元出来上がった組織。

であるならば、襲撃を受けた際に慎重に調べ、各国間に伝達するべきである。


相違ないか? 裁判長」


裁判長は顔を逸らす。


「相違ありません」


そしてその男は後ろについてきてる2人と並び立つ。


フードを外す。


拵えた髭と薄汚れた金髪、痩せこけた顔の老人。


「この賢者 メルトナーは"見ています"。

私の"見識"からは逃げられませぬぞ」


裁判長

「で、ですが メルトナー様

此度の襲撃に早々に首謀者を発見したのです なおのこと裁定を下すべきではないのですか?」


メルトナー

「"責任逃れ"をするためにか?」


裁判長の背筋が凍る。

クレスは何事かとメルトナーを見つめているとそれを見たメルトナーは笑顔で返す。


メルトナー

「聞けば 事件は今日(こんにち)の朝と聞き及びます。

それが今日のお昼時に行う。


まるで逃げるような行いではありませんか?

そうは思いませんか 他学部長、神秘学部長 グレゴリウス殿」


グレゴリウス

「いえ」


メルトナーはとぼける。

「はて 学園の法では

襲撃など予想外の外部からの影響をもらった際に、各国間に伝達し、その警備責任者に責を負うというのをお忘れですか?」


ざわざわと言う周囲。


「そして責任逃れするかのようにたらい回ししているの、今日の警備責任者はあなた

裁判長 でしたね」


裁判長

「ひぃ!?」


メルトナー

「ガキ相手に本気になりすぎだぞ クソガキ やっぱり候補者は慎重に選ぶべきだと思いますよ ダダン2世 しかも十字教に選定させるべきではなかったんです。」


周囲が驚く。


「「ダ、ダダン2世」」


隣に立つ大柄な男はフードを外す。

「そうは言うな 向こうの取り決めを受けなければ、資金源も支持者も少なかった。

それだけの話だよ」


裁判長は深く深く座り込んでしまった。


ふくよかな顔だが、筋肉はしっかりと出来上がった屈託のない人物。


ダダン2世

「余はアディス国 その君主

アディス・ダダン・ダダン2世・エラストスである。

こたびの事件、裁判を行うと聞き及び、拝聴(はいちょう)しに来た。」


グレゴリウス

「ど、どうしてあなたが」


ダダン2世

「ん? バッハハハ 腑抜けたことを申すな

『アディス大王国王女が居た』と発言していたのは君じゃないか?

うちの1人娘も巻き込まれていると聞かされれば、脱兎の如く駆け寄るのが必定よ

彼のように」


グレゴリウス

「くっ」


泣き崩れていた貴族に駆け寄るダダン2世。


「君の仇はクレスではない、犯人は見つけよう このダダン2世に誓って」


貴族はただ黙って、手を合わせていた。


メルトナー

「では 裁判はおって、沙汰を下すという形でよろしいですか? 裁判長」


裁判長

「で、ですが....」


メルトナー

「ここの法はエーゲ帝国に則って、

『疑わしきは罰せず』でしたが....

おや? 裁判長 何か言いたいことが?」


少しうなだれたまま、木槌を叩く。


裁判長

「此度の裁判は次回へともっていきます」


メルトナーは手を叩く。

「すばらしい 彼の英断に感謝します。」


そう言い、被害者であるラナを睨みつける。


「おい クソガキ お前の|私情《こいごころ

》で大人を巻き込むんじゃねぇ

てめぇの親 さっき領地没収して降格処分を下した。

人を巻き込んだその重さ、重々(じゅうじゅう)に噛みしめるんだな」


ラナはひぃっと声出し、膝を地につける。


メルトナーは小声で言う。

「俺たちが地獄に30年も費やしたたった20年の平和 そうそうに潰せさせるわけにはいかない」


「メルトナーさま もうそろそろ」


そう可愛らしい声で言うフードをかぶった小さな子がメルトナーの裾を引っ張っていた。


メルトナー

「ああ、そうだな」


クレスに小言で伝える。

「君がクレスか ロートリウスの弟子とかなんとか」


クレス

「は、はい」


メルトナー

「ふーん」


大きく開いた目でクレスを"見ていた"。

「時に、クレスよ」


クレス

「イリアスと言う子 君が裁判で逆転した瞬間、自分の父親のもとへ走っていったぞ?

ほれ急げ」


(え?)


どうしてそれを知っているのか?という疑問が湧いた。


メルトナー

「大丈夫 ロートリウスにも手紙で送っている 事後処理はあやつに任せたら楽だろう

ほれ走れ」


そう言われ、背中を叩かれる。

目の前にはハクが居り、今報告した。


「マスター イリアスがどこにも居ないのです 拐われたのでしょうか?」


そう心配していた様子のハク。


クレスは後ろへ振り向くと、メルトナーは嬉しそうに手を振っていた。


ハクの背中をさすり、「イリアスの居場所は分かる そこへ向かおう」とそう言った。


ダダン2世

「それでメルトナー 犯人は見つけれたのか?」


メルトナー

「申し訳ありません 私の"目"からは逃れた様子。」


ダダン2世

「そうか お忍びで学園都市にきたら、急に学園にきてほしいという君の言葉を従って正解だったな」


メルトナー

「だって伝えなければ、その責任者として俺も殺されるんでしたらそりゃ必死になるもんです しかも俺が居ない間に起きたんですからね」


ダダン2世は笑う。

「あはは かの見てくれのメルトナーに殺されるとはなんと栄誉なことか」


メルトナー

「ですけど 殺すんでしょ?」


ダダン2世

「ああ うちの娘が巻き込まれたのだ

殺す 野ざらしがいいか? 鳥葬がいいか? 火葬がいいか? 少なくとも土葬にも、船葬墓(せんそうぼ)という栄誉ある葬儀はないと思え」


メルトナー

「」おっかない


ダダン2世はそそくさと帰っていく民衆を見て思う。


「これがお前たちの手にしたかった平和というものか?」


メルトナー

「少なくともうちはどうでもいい派です。

本気で欲しかったのは、うちの王とロートリウスですよ」


そう肩を竦めるメルトナー。


ダダン2世

「にしては腐敗が速いな」


メルトナー

「早めたのは先手を取った十字教連中です。

あいつらは自分たちに都合がいい駒を彼らに送ったんですよ」


ダダン2世

「確か 支援者として、学部長などの位の指名権を貰うと言っていたな

それか」


メルトナー

「残念ながら 俺はやめとけって言ったが、向こうも飲ませ方がうまくてな

現に30の国家、滅ぼして20年も音沙汰なしなのも十字教の手腕のおかげだ」


ダダン2世

「厳密には3国だ 十字教が学園建設に繋がる間の10年に勝手に争って滅んだ国も含めた数字だ。」


メルトナー

思想誘導(プロパガンダ)って奴すね」


「...........一体どこの誰がこの学園を襲撃したのか 襲えば各国から狙われるのは確定だろうに」


ダダン2世は煽る。

「ふっ見てくれのメルトナーも随分と落ちぶれたものよ」


メルトナー

「"見てくれ"はやめてください

まだ見識と呼ばれたほうがマシです」


ダダン2世

「ふむ 余にはかの賢しきロートリウスと並ぶ者としての敬称なのだが」


メルトナー

「まだあいつほどじゃない

だから弟子入りしようとしたんですよ?」


ダダン2世は笑う。

「あはは あれを聞かされた瞬間は噴飯モノだったぞ メルトナー」


メルトナーは呆れた。

「へいへい んじゃ 学園の責任者たちに聞き込みで行きますか」


ダダン2世

「そうだな 責の重さを知らぬ者どもに知らせにゆこう」


そう2人は残された学部長と裁判長と共に簡易裁判所に残った。

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