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このゲームにはまだ名前がない  作者: 榊巴
第一章:序節 鬼ごっこ
17/24

一章:序説 第十七話 卑怯


ダントルは自身の剣を構える。

クレスは向かい合うように、ダントルと対峙する。


ダントル

「なぁクレス どうして君はクレスなんだい?」


クレス

「どこかの書籍か? 俳句でも読むのが得意なデブなのか」


素の速さで一瞬でクレスの元におり、その半月状の剣を大きく振るう。


クレス

(......容赦なしか!!??)


振り向かせてくれる時間はなかった。

やれることは、ユビキタス(発散)の他なかった。

もう一度それを発動すると、ダントルは一瞬で後ろに飛び出す。

そのまま剣を振り下ろすが、すんでの所でクレスは避ける。


(どういうことだ? 誓約があるh...加虐趣味か?)

「容赦がないね さすがは傭兵ってところですか」


今回、魔法をあえて(・・・)発動しなかった。

それは彼が魔法を"見えているのか"どうかが今回の戦いの山場になる。


ダントルは半月状の剣を撫でるように持つ。

「口がよく回るね そのお口の悪さが原因で、"狙われたのかな"?」


クレス

「よく言う 容赦のなさはお前みたいなデブヤロウほどじゃないさ?」


ダントル

「はっはっは こりゃ言いくるめられたな

だけどいい加減そのお口切り落とすぞ ガキ」


そう言うと剣を下ろす。

走る構えをする。クレスはその動きに反応し、腕を出す。


ダントル

(魔法か.....だが!!)


突っ込み、クレスに向けて剣を斬り上げる。

ブンッという音がなると空気が圧縮し、吹き飛ぶ風圧が周囲を巻き込む。

一瞬にして、クレスは切られた。


あえなくも、無残にも

そして、剣の風圧が先ほどの切られたはずのクレスを霧のように消し去った。


ダントルは驚く。

気付くと遠い場所にクレスは立っていた。


ダントル

(やはり 予想通り依頼主の"追っている最中"に殺していいリストと"このクレスという少年の前でロンドールのガキを目の前で殺す"。

予想外(イレギュラー)はあるが、おおよそ依頼主通り

ならこのクレスは殺すのは難しい(・・・)


その口は嬉しそうに口角を上げる。


クレスは即席の魔法を出来上がったことに予想外な嬉しさがあった。

ユビキタス(発散)は魔素に自身のイメージ(・・・・)を乗せ、相手に"共有させる"ことが出来る。

なら! 相手にとって都合の良い幻覚を見せることが出来るのではないのか!?)


名付けて、【見える(見えさせる)】だ!。


.....ロマンはないが、このデブに対抗するために必要な"速さ"にはこの魔法がある。


そして 相手に魔素(・・)が見えていない!!


ダントル

(あいつ いつ魔法(・・)を使った?

いやいい? "殺せない"ってことは犯しがいがありそうだ)


ダントルは嬉しそうに剣を撫でる。

「なぁクレス この剣の正式名称はなんだと思う?」


そう言われたクレスはダントルが掲げる剣を見つめる。

重厚感のある大きく反った刃渡りの大きい剣。

「まずは剣の名前を名乗るより、自分の名前を名乗ってみたらどうだ?」


ダントルは笑う。

「確かに」と、礼儀をかける。

「お初にお目にかかります

わたくしダンタリ騎士団の副団長を務めていますダントルと申します。

今だけお見知り置きを」


クレスも礼儀をかける。

「クレス・カルエといいます。

そして今回でさようなら」


ダントルたちは互いにほくそ笑むと、

ダントルは話を続けた。

「ではお話を この剣にまだ名前がなくてですね 南洋 アディス周辺国で戦争が起きた際に拾ったものでしてね

彼らは、剣のことをシャムシエルと呼んでおるんです。

基本、剣はまっすぐ作り上げ、折れないように作るのが一般的。

ですがとある地方では、深く反った細い剣があり、これを月に見立て、三日月剣と呼ばれています。


そしてこれはとある名無しの部族が作り上げた刃渡りを広げた傑作。私は気に入り、鹵獲(ろかく)したのです。

たしか....あいつらはふぁる...ふぁるしお....

まぁなんだっていいです。」


そしてその剣をクレスに向ける。


「この剣の特性は、その破壊力にあるのです。

ああ、思い出しました。

古エーゲ語でファルクス()のような威力を持つことシャムシエルということから、

名はフォールチュン、ファルシオンとその地方で呼ばれておりました。


その威力は重さとこの頑丈さで鎧を頭上からかち割れる威力を誇る。」


クレスはそれを聞き、手を叩く。


「ご高説どうも 確か剣というのは切れ味が大事だとお聞きしましたが、そのファルシオンに切れ味はあるのですか?」


「切れ味? ああ、いくら切れ味がよくてもすぐダメになる。

鍛冶師に嫌われる手法だ。

大事なのは "叩く" こと。

剣は脆い、頑丈に、頑丈に頑丈に!作り、相手を"叩き斬る"モノに、価値があるのですよ?

ちなみにこの剣、肉切るときにとっても扱いやすいのですよ」


そう嬉しそうに剣を見つめる。


肉ね....と()な想像をするクレス。


ダントルはクレスを持つ剣を見つめる。

「その剣はあまり見たことがないですね

抜かないのですか?」


「ええ、必要な時に抜きますのでご安心を」


「か細い剣ですね」

ダントルは嬉しそうに連想する。

「まるで女子(おなご)の腕のようですね

すぐに折れてしまいそう」


「女性は優しく扱うのが定説ですよ?」


「失敬 女性と子供を見るとつい興奮してしましてね 手荒く扱ってしまうのです。」


「そうか」


クレスはダントルの元へと走り出す。

ダントルとは大違いの遅さ、だがその瞬間、クレスは剣を抜く。


ダントルは一瞬、思考をする。

()が抜く瞬間か!?)


だがクレスの動きはブラフである。

硬直したダントルに向けて、放つ。


ユビキタス(発散)


一瞬の激痛と咽びにダントルは(ひざまず)く。

その隙を狙って、首元に剣を抜き、差し向ける。


ダントルは叫ぶ。

アドウェルサス(逆転)


クレスは剣を振り抜くが、そこには誰も居らず。

後ろに跪いていたダントルが居た。

それに気付くのが遅く、首を捕まれ振りほどけないクレス。


クレスは魔法の発言(発現)をしたはずなのに、なぜ今効かずに自身を掴めているのか想像できなかった。

苦しむ間際に、見える(目に宿す)を見ると、ダントルの周囲に発散によって集束されているはずの魔素がなく。

それ(・・)は自身の位置にあった。


位置の逆転。 これがダントルの魔法か....


だが、ダントルはユビキタス(発散)のダメージは効いているのかよろめていた。


「ぐ...へへ やっと捕まえた」


一瞬、ゾッとする。ダントルの笑顔は歪さがあったからだ。

本能からか、自身の右手にある剣をダントルに突き刺そうとしていた。


だが、


ぐいっと首に圧力がかかる。

「おっとこれ以上抵抗すると、死ぬぞ ガキ 抵抗するな 優しくするからさ」


そんな風に優しく諭す。


クレスは考える。

(........いや、俺を殺さないはずだ)


一瞬の判断。クレスは剣を振り上げる。

狙う場所はダントルの手の(けん)

撫でるように()った。


ダントルは「このガキッ」と言いつつ、クレスから手を離し、自身の手を見つめる。

血は出ていたが、開いたり閉めたりと確認し、無事に手は動いていた。


クレス

(浅かったか)


ダントル

(このガキの目つきが変わるたびに、判断力がバケモノになっている。

齢13のガキに出来る行動力じゃないぞ

だが、いいゾこれ)


ダントルの口元に(よだれ)がたれる。

目つきが真剣になったダントルはただ黙って、自身の血のついた手で涎を拭き伸ばす。


クレス

(初見で失敗した。 策は.....)


だが考える時間なんて与えるわけがない。

気付くとダントルの剣は自身を大幅に超えるように横に並んでいた。

クレスは本能で剣がある方向に剣を立てて、攻撃を防ぐ。

が、その威力は凄まじく、クレスの体は"叩き"飛ばされる。


壁にぶつかる衝撃に、肺がやられ(むせ)てしまうクレス。


ダントル

「いいねぇ いいね!! その抵抗力 いい味出してるよ とっても壊したい!!


この(ファルシオン)は有名ではなくて、どうしてこの傑作を世に広まっていないのか不思議なんです。

子供(・・)を切るのに使え、

子供(・・)を脅すのに使え、

子供(・・)を犯すのに使えるんです。


だからさ、だからさぁ クレスてめぇが壊れないのが最高なんです」


クレス

「何を言っているんだ?」


ダントル

「称賛です 称賛ですよ クレス

あなたはこの一瞬で、俺を本気にさせた。」


その瞬間、圧という圧を感じた。

鳥肌が立つ。

それもそうだ。まだ魔法(見える)が残っているその瞳には異常が映り込んでいた。


ダントルから大量の魔素が噴き出し、集束し、噴き出し、集束をなんども何度も繰り返していた。


ダントルは笑う。

「さぁ、奇跡(まほう)の時間だ。」


ミレス(奴隷は)アドウェルサス(あなたを)ミニステルアリス(兵士だと言った)


気がつくと、クレスの視線は一変する。

目の前に一切合切の変化はなかった。

あるのは"思考の変化"だ。


全身に震えがある。

立ち上がる力に一切の恐怖もなく、あるのは...


"抗えない"という一心のみである。


『なんで!?』『いや』『ああ』『そんな』『いやだ』『戦わないと』『けどどうして?』『俺は負け犬なんだ』『戦いたくない』『死にたくない』『剣なんてもってなんの意味がある』『俺は奴隷なんだ』『逃げられない』

『いつだって逃げられなかった』『あいつらは俺を助けなかった』『』『』『』『』『』『』『』『』


思考が巡る。ただ巡る。


目の前のダントルは恍惚(こうこつ)としていた。

彼は嬉しそうに天井を見る。

「」ああ、これが"君"の覚悟か!!??


思考は異様だが、意識はあった。

自身の思考を異常だと認識出来る時点で、認識と思考と体は別モノであるということ。


つまり"ダントル"の思考と"俺"の思考を入れ替えた(・・・・・)


こいつは超ネガティブ思考である。


だけど、だけど ここまで体が動けないほどなのか?。。。。


自身の思考に塗れる中、震える体を見つめる。


ダントルは嬉しそうに見つめる。

「どう? すっごくよくない? 俺の考え」


どこがだ!! 考えることはもうできないが無意識や意識する時間を減らせば、どうにか体に命令が出来る。

直感で動け


そう言うとクレスは体を震わせるながら、剣を支えとして立ち上がる。


ダントルは驚く。

「俺でも苦労するのに、よく立ち上がれるね」


嫌味か....よく"あれ"で動けたな


クレス

いやだ(めんどくさい) 戦いたくない(やろうだな)


ダントルはこちらに走る。

その速さとキレは異様に早く感じた。

思考が邪魔する中、慣れない直感で動くほかなく。

避けることはできず、剣で受ける他しかなかった。

だがダントルは嬉しそうに剣戟(けんげき)を続ける。


戦いたくない ああ、ダメだ 直感すら飲まれ

ど、

 う、

  し、

   た、

    ら


『先輩 一度でも反抗期してみたらどうです?』


「はんこうき?」


『はい 反抗期 うちの娘は早々に来たんです 先輩まだ反抗期来たことないでしょ?』


「だが....」


『ぶつける相手居ないからです

反抗期って呼ばれるのは他人に反抗したから反抗期って呼ばれるんです

俺は多分....先輩を助けれません

だけど先輩の鬱憤(うっぷん)だけはなんとか晴らせると思うんです。


だから殴ってください!』


「はぁ!!?? ドMかぁ!!」


『あははw 違いますってそんな性的関係 妻だけで十分ですよ 違います

うちらに愚痴でもなんでもいいから吐いてくださいって意味ですよ!!』


「はしょりすぎだ」


『1回でもいいんですから 俺たちにぶつけてください 先輩の鬱憤を』


結局それを俺は断った。


『ならいつでも言ってくださいね 俺たちはそれぐらいでは離れたりしませんから

あ、けど言い過ぎたら俺たちも怒りますからね?』


「ふっw そうだな 1回怒ってみるか」


親指を立てる後輩。

『いいんじゃない?1回カチキレてください!!』


「ああ」


「あああ?」


「あ゛あ゛あ゛!?」


「うっぜぇなー何楽しそうにしてやがんだ

このネチネチクソ豚ヤロウが!!」


かぁんと大人の力がこもった一撃を吹き飛ばされる。

!?っと驚くダントル。

クレスの顔に凄まじい怒気を込めていた。


一瞬、鼓動を速めるダントル。

「何が言いたいんだ!!」

再び剣を振り下ろす。

だが剣を受けきるクレス。


「てめぇがネガティブ思考なのすっげぇどうでもいいんだよ 他人の思考取れて何を嬉しそうにしてんだよ そういう考えは自分で作り上げてからやるもんだよ!」


「ハァ!? 俺が どれだけその考えに苦しまんできたか!!??」


「てめぇの家族とてめぇの穴ほじ殺された程度で何をナヨナヨしてんだよ」


「!? どうしてそれを」


("思考の入れ替え"であるなら、経験値はその思考の中に紛れているはずだ!

それを"利用"しろ!!

思考は人生の積み上げで出来上がるからだ

ジャネーの法則にのっとるなら、

0〜20歳x3で約60年分の子供時代の経験が思考(人生)を作り上げる要因になる。


なら思考回路(ダントルの人生)に出てくる単語と経験と直感が俺の"武器"になる!)


「それでえ? 復讐したんかそいつに!?」


「ぐぅそれは!!」


「してねぇよなぁ?? ええ? お前なんもせずに親が妹が弟犯され殺される瞬間、ションベン蒔き散らかしてただけじゃねぇかよ!!」


ぐっ心臓が痛い、自分も...抗えなかったからこそ分かる....だけど今こいつに勝たないと友達が死ぬ!!。


「うるさい!! うるさい! うるさい」


剣戟が強くなっていく。


「何年探した?」


「......」


「一日たりとも探していないよな?」


剣撃がどんどん強くなっていく。


「...........」

(どうしてだ!? どうして俺の考えが効かないんだ!!)


「当たり前だよ "(おまえ)の家族"陵辱されて、ブチギレないほうが難しいだろ」


(こいつ もう"俺"の思考に飲まれている!?)


クレスの目に怒りが宿る。

「血まみれの家族の部屋の隅でガタガタ震えるクソガキがやったことはなんだ!!??」


ダントルは奥歯を噛み砕きそうになる。

(クレスの剣の扱いが自分と重なっているように見える。

まるで自分自身と戦っているようだった。

怖い、こわい、恐い

なのに"こいつ(クレス)"の思考は何も感じない 感情(・・)がないのか?!)


クレスは叫ぶ。

「てめぇと同じようなクソガキに自分の受けた身を与えてるだけじゃねぇか 1個も成長すらしてねぇ 抵抗もできねぇガキ相手に八つ当たりしてるだけの怠惰な豚ヤロウだよ!!」


ズカズカと言ってくるダントルはブチギレて、剣を放り投げて、クレスを犯した。


――


床に寝込むダントルを見つめるクレス。

「...........」


以前として思考に飲まれているが、殺せばこの魔法は元に戻るのだろうか。


俺が扱ったのは、見せる(見えさせる)

ダントルの思考を利用し、あいつ自身の都合がいい幻覚を見させた。


.......意識は冷静になってしまった。

ダントルがぶつけたかった想いを俺が勝手に果たしてしまったからなのだろうか....


クレスは剣を鎖骨の間に心臓めがけて突き刺そうとする。


子供の手ではこの男を筋肉の多い胸に突き立てるのはむずかしい。

だから.....お願いだから 死んで楽になってくれ ダントル。


突き刺そうとするが、ダントルの脂肪と筋肉により、セミスパタの細い剣が折れた。

パキンッという音と痛みでダントルの正気が戻る。

だが現実のクレスを目の前にまたも狂気に戻る。クレスは冷静なまま折れた剣で喉に突き立てる。


.............................


ぐっと剣を抜こうとするが、筋肉収縮により抜けなかった。


そのまま倒さると重さによって折れた剣は首を貫いた。


クレスの思考はもう元に戻っていた。

「.......お前の復讐相手をいつか見つけてやる

だからもう自分を追い詰めなくていい

逃げたかったんだろダントル

だからあの...魔法なんだ......」


そう言い、その場をあとにする。


――――――――――――――


グラディウス

「ようやく見つけた クラカル」


休憩しているクラカルに槍を向けるグラディウス。


クラカル

「おお、グラディか どうだ学園生活は楽しんでいるか?」


グラディウスは笑う。

「ええ 楽しもうとした瞬間に、先ほど台無しになりましたよ」


クラカルはふとももを叩く。

「ははは そりゃ失敬なことをしたわ けどすまん 仕事だから すぐ撤退するからちょっちまっとけ」


「人死に が出るのに?」


「あれ? お前 弱くなった?」


「ご冗談を 前よりはキレが入ってるかと思いますよ?」


その一突きで一瞬にして、クラカルの頭蓋を吹き飛ばすが、クラカルは首だけで避ける。

「おお恐い恐い」


「さすがです」


「誰がその武器の扱い方を教えたと思っている?」


グラディウスの目先にダガーが飛んできた。

避けた瞬間、クラカルは槍を掴み、グラディウスを引き込む。


「ぐx」


引き込まれるのと同時にダガーで刺しこむ。

グラディウスはそれを手のひらで抑え込む。


血まみれの手が滑り、クラカルのダガーは抜かれる。

グラディウスは槍ごと蹴り飛ばされる。


「何をそんなに必死になる?」


「本気を出すな そう教えただろう?」


「この学園は父上たちが作り上げた平和そのものだ それ作り上げた本人たちが瓦解させてはいけないだろ!!」


「こんな血まみれの平和 誰が望むというのだ グラディウス・ピピン ピピンの子」


グラディウスは言葉が詰まる。


「はぁこれだから子供は口も少なく、中身もない 当事者でもない俺たちの苦労を簡単に言葉にする いつからそんなに偉くなった!!」


「守りたいものを守る 次期公爵として務めるのは当然の定めです。」


「受け継がれていないのに?」


「意志は受け継ぎました」


「言うねぇ この(いや)しきクラカルを前にして会話は気をつけるんだよ」


気がつくと手の空いた傷口にダガーが差し込まれていた。

一瞬の行動に動けず、顔面に膝蹴りを受ける。


鼻血を吹き出すグラディウス。

「さすが 弟子でも容赦ない。」


クラカルはそのままグラディウスの槍を踏みつけ、喋る。


「二つ名というのもなかなか難儀なもんでね かの賢者 (さか)しきロートリウス公と似たような名付けられるのにほんと不相応というかなんというか」


「名前負けしてないと思いますよ 卑しきクラカル」


「そうだなー」


気付くと蹴りを一発かまされる。

口に血がたまるグラディウスは吐き出す。

「ペッ 会話をしつつ、相手に意識をそらす 何回やられても慣れない」


「当たり前だ 手口を替え続けるからこそ慣れないものだと思わせる。 それが卑しさだ」


グラディウスはふっと笑う。

「ここで終わるのか....」


クラカル

("追っている最中"殺していいリストに入ってるんだよな ま、殺してもいいか 俺の手口も知っているし)


「あ、お前 道中で誰かと出会ったか?」


「ハミルトン 殺したよ」


「あいつかー いいコンビだったんだけど」


気付くとグラディウスのダガーが横から来ていた。


「グラディウス!!!」


クラカルはその呼び声で行動を止める。

グラディウスはこの方向へと向けると胸に手をおさえたミエラ。


「ようやく追いつき」


「逃げろ!!」


気付くとミエラの目の前に矢が飛んでくる。

だが矢は外れ、ミエラの頬をかすった。


ミエラ

「ひぃ....」


グラディウスはクラカルの手元を見る、小弓を構えていた。


「さすがに早撃ちは難しいか」


「クラカル!!」


「おっとっと」


力が入った槍で足元を崩され、グラディウスから離れるクラカル。

グラディウスは立ち上がり、自身に挿し込まれたダガーを抜く。


ミエラ

(もうグラディウスが傷が.....

クラカル 改めて見るともの凄い恐い顔...

このクラカルはゲーム内では、2回行動というチート付きNPCとして出てくる。

恐い.....だけど)


ミエラの覚悟はもう決まっていた。


グラディウス

「逃げろ ミエラ」


ミエラ

「だけど.....」


グラディウス

「こいつは 卑しきクラカル 俺の師匠だ」


ミエラはおどろく。

そんな新情報は初耳だったからだ。

だけど思い当たる節はあった。


ゲーム内で、唯一あのよく喋るグラディウスが喋っていなかったイベントだった。

この世界、私が知らない設定多くない?


だけど、そんなの関係ない!!


師匠、先生、結構けっこうコケコッコーよ!!


私は覚悟した。

あのときにちゃんと決めたんだ。


なんのために なんのためにみんな幸せエンドを想像してきたか!!

ちっちゃい頃から"ここ(メリバ)"を止めるために考えてきたか!!


走れ!

私はなんのために!

考えろ!!

考え尽くせ!


走るんだ(【】)!!


気がつくと、自身の体はクラカルの前に出てくる。

クラカルは動揺し、懐にあったダガーを取り出し攻撃を防ぐ。


クラカル

「へぇ」


グラディウス

「ミエラ!!」



ミエラ

(あれ? 私なんで? だけど!)

「黙っててください!!」


グラディウスは驚き、口を塞いでしまう。


「これはあなただけの戦いじゃないんです!

わたしたちの戦いなんです!!」


―、そうだ

結局俺は 民に死んでほしくなかったのだ。

苦しみはある、苦労もある、失敗しかない、


だけど精一杯元気で笑って欲しかったんだ。


だからあの戦地で泣いていた女の子に、笑って前を向いて欲しかったんだ。

ただ前を.....理想論なのは知っている。


だから俺は "自分の手が届く範囲しか助けられない"

気に入ったモノ(・・・・・・)しか大事にできない。

だからこそ、俺は()が嫌いなんだ。


だけどミエラは違った。

ただ彼女は俺を叱っただけだとは思う。

だが、俺を叱責した内容には優しさがあった。

バカみたいな話だが、"気に入ったんだ"。

気に入ってしまった。


だが、あの女はバカだよ ほんと

ああ、ほんとうにバカだ


バカみたいに戦地に突っ込んで、

バカみたいに気負って、

バカみたいに俺を守ろうとする。


そうだな 巻き込まれた、巻き込まれてない関係ない。

ミエラは覚悟したんだ。

俺も覚悟しないといけないな。


グラディウス

「たしかに俺たちの戦いだったな!」


グラディウスは槍を携え、クラカルに突貫(とっかん)する。


クラカルはふざける。

「なんだおまえら、想いあっていたのか?」


ミエラ

「違います!! 推しが死ぬ姿を見たくないだけです!!」


グラディウス

(え?そうなの!?)


一瞬槍を止めてしまう。


クラカル

(あ、グラディ傷付いた。狙おう)


ダガーが飛んでくるが、それを気づいてるかのように弾く。

その意識がグラディウスに向いてる瞬間に、ミエラは斬り上げを行う。


クラカル

(この女 妙に速いな 魔法か?)


それはグラディウスからの目線でも分かるが、2,3歩離れようとしているが、それにつかず離れず素早い動きで攻撃するミエラが居た。


クラカル

「しつこい女は嫌われるぜ?」


ミエラ

「推し活がしつこいって言う話でしたら、そりゃ当然でしょ?」


その隙を見つけるように、グラディウスの突きが続く。


クラカル

「あんまり使いたくないが....

ユベオー(命令する)、―

マグナ(偉大なる)カエレスエィス(天の)ノドゥス(結び目よ)、―

ノヴァヌービル(新しい雲を)、―

オムニビス(全ての人のために)アンテプルマ(その羽根で)、―

アドアーク(我々を包み)アキッピオアゴー(たまえ)、―」


ミエラ

(魔法!? 詠唱文??)


グラディウス

「させるか!!」


突きで詠唱を中止させようとするが、クラカルは笑う。

カンっという軽い金属音が響くと、グラディウスの槍は奇妙な形(巾の字)の武器に引っ掛けられる。

それを見たミエラは横薙ぎをするが、それを見越してか、抑えた槍ごと武器を地面に突き刺し、避ける。

突き刺した右手でがら空きのミエラに向けて、拳を打ち込む。


ミエラ

「キャぁ」


グラディウス

「ミエラ!!」


ミエラは自身の頬を抑え、「大丈夫」と言った。


クラカル

「魔法というのは楽だな "知らなくても"武器になり、"知っていても"武器になる。」


グラディウス

「卑しきクラカルは伊達じゃないんだな

その武器はなんですか?」


クラカル

「名前はない 槍対策で作った武器だ。

効果は上々だな うん」


ミエラ

「卑怯ですね 手の内を明かさないなんて」


クラカルはそのどくろのような顔でミエラを見つめる。


「卑怯? 殺し合いに卑怯もくそもないよ

お嬢さん 生きたら勝ちのこの世界で卑怯は最善策だよ」


ミエラは突っ込もうとするが、クラカルは手を出す。


「まぁ待て」


ミエラは疑問を浮かべた。


「少しションベンをしたくなった」


ミエラ、グラディウス

「「はぁ!!??」」


クラカルは「ちょっと待ってくれよ〜」と彼らに背を向け、ほんとうに流した。


「..............」


グラディウス

「.............」


ミエラ

「切ろ......」


そう剣で切り落とそうとすると、

「おっとっとー」


キャア かかったかかった!! さいa

濡れたという意識が集中してる瞬間に、ミエラは蹴り飛ばされる。


一体何が起こったかを目の前に見ると、クラカルは漏らし(・・・)ながら足を上げていた。

「嬢ちゃん

たしかに敵の隙を狙うのはいいことだが、こういう風に武器にするやつが居る。

おしかったなー嬢ちゃん あと一歩踏み込んでいたら死んでいたよ?」


グラディウスは呆れた口調で言う。

「ミエラ 彼が卑しきクラカルと呼ばれる所以だよ.....

彼は戦っている相手の意識を逸らす、注目させる、潰すことで相手より優位に立つことで"卑しき"という呼び名が付いた。」


ミエラは赤面する。さいあくという他がないからだ。


「まぁそれはハミルトンが居て、ようやく発揮するんだけどな あいつは盾での生存率が高い。

死にたくない、死にたくないと叫んだ上で相手を追い込んでいくんだ。

その隙を俺が弓で狙う。

あ、ちなみに"卑しき"っていうのは弓を扱うことにも意味がある。


うちのエルテ人は弓を人に向けるのは卑怯者という意味合いがある。

だから戦場ではお貴族様は弓を使わない。」


ミエラ

「だとしてもさっきの戦法はキモすぎない?」


クラカル

「だけど これでもう近付けなくなっただろ?」


ミエラ

「!?」


クラカル

「こっちの考える時間が増えるってもんだ。


お嬢さんいいこと教えてあげよう

相手を焦らせたら、相手の時間を奪え、

こっちは悠々自適に考える時間が作れる。


『相手に嫌われろ』

それが戦う時に案外生きられる術だ。」


クラカルはふぅスッキリしたという顔をした。


「よしっ!! 本気出すか!! 手土産だ」


そういうとローブを脱ぐ。


ミエラとグラディウスは驚く。

そこにあったのは、クラカルのどくろを連想させる顔とは裏腹に、筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な体。

全身にダガーを差すためのベルトに、背中に携えた弓。


見た目の衝撃が来た瞬間に、2度目の衝撃が来る。


ミエラとグラディウスは一瞬にしてクラカルによって吹き飛ばされる。


ミエラ、グラディウス

「「かはぁ」」


「これが卑しきクラカルの本領だよ」


戦況は佳境にへと向かう。―

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