一章:序節 第十三話 私はこんなのを知らない!!
「通れない...」
そう呟くトリステル。
グラディウスとミエラはその言葉の意が分からず、とりあえずトリステルの元へと向かうが...
ぼよよんっと不思議な感触にぶつかり、うっと情けない声で後ろに倒れ込むミエラ。
グラディウスは「大丈夫か?」とミエラに目線が行く。
ミエラ
「なにこれ.....」
そうとしか言えなかった。
グラディウスはトリステルの前に手を差し出すが、不思議な膜のような感触が手に伝わる。
だが押し込めず、前には進めなかった。
グラディウス
「ダメだ 前に進めらんねぇ」
ミエラ
「.................」
ミエラはグラディウスのその言葉に聞き覚えがあった。
偶然かもしれない、そう考えたくなるほどの強烈な一言だった。
(これ3年生のイベントじゃ?.....)
そう彼女の脳裏に思い浮かべる光景に、
確かにそのイベントがあった。
それは突然の襲撃だった。
アルテメリア学園は様々な問題があり、その中の問題に殺傷沙汰になるイベントがある。
アルラン王子たちはそれに巻き込まれ、事件解決に向けて行動する。
だけど....だけどまだ3年生になってない!!
こんなの知らない。
ミエラ
「結界.....」
グラディウスとトリステルは何かを知っているようなミエラに反応する。
グラディウス
「何か知っているのか!?」
トリステル
「おねぇ...ミエラさん知ってるの?」
少し体が震えるのを抑えるように両手で体を包むミエラ.....
グラディウス
「お、おい」
トリステル
「ミエラ...さん?」
このイベントは下手したら、誰かが"死ぬ"イベントだ。
そう "死ぬ" ただでさえこのゲームは王子たちが死ぬ可能性があるイベントや依頼が多い。
その中でもトップクラスに生存率が低いイベントの一つがこれ。
ダンタリ騎士団によるアディス第一王女及びカストル国元第六王女の凌辱のすえの暗殺イベント。
被害者は"結界"という魔法により、逃亡不可能になり、追い詰められ略奪されるという顛末。
私たちはそれを阻止しようと動くことも出来るが、その阻止がトップクラスに難しい。
ましてやまだこの育ちきっていない体なんてとても.....
"推し"が死ぬ....そんな覚悟まだ....
「おい! おい!」
揺さぶれていることに気付く。
「ぐ、ぐ、グラディウス様....」
グラディウス
「なんだ?」
ミエラ
「お逃げください」
グラディウス
「は?」
ミエラ
「逃げてください! あなたはこのイベントでは生き残れない!!」
グラディウス
「いべ....何を言っているんだ 君は!!」
ミエラは懇願するように縋り付く。
「お願いします 生きてください!!」
(推しには死んでほしくない!!)
ミエラのその顔には涙が溢れ、困窮した顔をしていた。
その状況に見ていた2人は唖然とした顔をする。
グラディウスは落ち着いた声で言う。
「何をそんなに君を急がせる
昨日の君とは全然違うじゃないか 落ち着いてくれ」
そう宥めるが、ひっくひくとえづくミエラは落ち着けずに居た。
トリステル
「お姉ちゃん....」
―、
トリステル
「落ち着いた? お姉ちゃん」
以前として涙が溢れていたが溜め込んでいた感情が一気に出たのかゆっくり喋れるようになったミエラ。
グラディウス
「ミエラは何かを知っているんだな?」
ミエラ
「............」
トリステル
「お姉ちゃん 言ってくれないと分からないよ?」
ミエラは口を固めていた。
グラディウスは....ふん....と深呼吸するように鼻息を出し、立ち上がる。
グラディウス
「.....死んでほしくないってことは、つまり俺が戦わないといけない理由があるんだな」
そうトリステルとミエラに背を向けた。
ミエラ
(しまった!)
しまったしまったしまったしまった
ダメ、行ってはダメ!!
お願いします 神様 彼を死なせないで!!
お願いします!!
ダメなんです
彼は"あのとき" "あのとき"に、
彼女を守るために死んじゃった
私は唯一彼だけが想いを告げずに....
想いを告げなかった!
私は許せないんです!
私は許せなかった。
グラディウスは両思いだったのに、
勝手に自己満足に死んだヤロウを簡単に死なせたくないです!!!
『私はあんな結末を認めない!!』
気がつくとグラディウスのズボンの裾を掴んでいた。
グラディウスはミエラのほうへと顔を向ける。
ミエラ
「あ.....」
グラディウス
「どうした?」
ミエラ
「言います....何が、起こっているか言いますから勝手にいかないでください」
グラディウス
「......わかった」
グラディウスは膝を地にあて、ミエラにしっかりと顔を合わせる。
ミエラ
「.........これは....結界という魔法です。
一定時間経つと自然と消えるものです。」
グラディウス
「その時間は?」
ミエラ
「1じか....おそらく一つ時半です」
グラディウス
「一つ時半か 長いな」
グラディウスはミエラに本題を投げる。
「結界ということは出られないということだ これを作った本人が居るということだな?」
ミエラ
「はい....」
グラディウス
「そいつは俺と戦うのか?」
ミエラ
「わかりません」
グラディウスは疑問を浮かぶ。
グラディウス
「? おれは死ぬんじゃないのか?」
ミエラ
「わかりません ただ死んでほしくないんです」
グラディウスは考えるように目をそらす。
「はっきりしないな....」
「ごめんなさい」
トリステル
「お姉ちゃん....きっとグラディウスが戦う相手の危険性を知っているから死んでほしくないんだよね?」
グラディウス
「........相手は誰だ? 俺は誰と戦うんだ?」
ミエラ
「だ...ダンタリ騎士団」
トリステルとグラディウスはぞっと鳥肌が立つ。
グラディウス
「ダンタリ騎士団か..... おい、トリステル」
トリステルはそれを理解したのかコクリと頷く。
「わかった アルラン兄様たちを呼んできます。」
ミエラはその状況に理解できずに居た。
グラディウス
「ダンタリ騎士団は帝国ではその悪名の高さで注目を浴びていた。
だがあれの管轄は、―」
「いや、まぁいい あいつらの目標はなんだ? どうして学園を?」
ミエラ
「おそらくは....アディス第一王女とカストル国元第六王女の暗殺」
グラディウス
「白昼堂々と....しかも....裏切ったのか?」
その含みにはミエラは聞こえなかった。
グラディウスは「わかった...」とそう結界の奥へと向かおうとしていた。
ミエラは裾を引っ張り、足を止める。
「なんで行こうとするんですか!?」
「死にたいんですか!!」
グラディウス
「行かないといけない」
ミエラ
「なんで!?」
グラディウス
「国のため、人のためと言うが....
そうだな 君のためだ」
ミエラは意味がわからないとしか感じるほかなかった。
グラディウス
「君は先日 俺を品位がないと罵った。」
ミエラ
「それなら 私のためになんてならない!!」
そう間に、挟むように喋る。
グラディウスは落ち着いた口調でミエラの肩を掴む。
グラディウス
「聞け 実はなあれは痛快だったんだ
俺を罵るやつは大人連中ですら居なかった。
だが君は"俺のため"に罵ったんだろ?
そんなやつは一生お目にかかれない」
そう笑顔になった。
「偶然...だろうがなんだろうが、
君は俺を"助けた" そう"助けたんだ"
親しき仲にも礼儀ありと言うんだろ?
なら俺が為すべきことは、
アディス第一王女とカストル国元第六王女の安全と礼儀を重んじてくれた君の安全を守るため、"騎士"として戦いに行かなければいけない」
ミエラ
「それであなたが死んでしまうかもしれません!」
グラディウス
「死なない」
ミエラ
「え.....」
グラディウス
「君の心配して泣いてる姿を見たら、余計死にたくなくなった だから安心しろ」
そう朗らかな笑顔で言った。
ミエラ
「グラディウスさま....」
(ああ、....けどそれは"彼女"に言うべきセリフだった)
"彼が亡くなったシーン"を思い出す。
"彼女が馬車で想いを告げてしまったシーン"を思い出す。
私はただ モニター越しにしか見えなかった。
ただのビジターでしかなかった。
けど、何度妄想してきたことか!!
何度考えてきたことか!!
なんのためにあの"みんなメリバエンド"を回避出来ないかを考えてきたか!!??
今でしょ!?私
動け、動きなさい!!
死なせない
死なせたくない
死なせてなるもんか!!
絶対に彼女に告白させてやるんだ!!
ぐすりと目の前が見えなくなるほどの涙を服の袖で拭いとる。
覚悟は決まった、―
ミエラはすっと立ち上がる。
「グラディウスさま 私も戦います! 戦わせてください!!」
グラディウスはその覚悟を決めたミエラに驚きを隠せなかった。
グラディウス
「」だけど、君は....
ミエラ
「人が死ぬとわかっている戦地でそう易々と行かせるわけには行きません」
その声量はハッキリとした声だった。
その耳に、その心にミエラの覚悟はしっかりと伝わった。
グラディウスは目を閉じる。
そして、―
「分かった ミエラ ふたたび俺を助けてくれ!」
ミエラは自身のスカートの裾を破る。
「わかりました」
そう答えた。
――――――
「お、おい!! 何を武器を携えているんだ!」
探し始める傭兵たちに向け、言葉を交わそうとするが「邪魔だ」その一言で押しのけられる。
だが、男は何かを喪ったように茫然自失の如く彷徨い始めた。
よく見ると周囲が何も見えず、何も聞こえないように歩いていた。
ダントル
「団長の魔法って....」
リミカルド
「正確にはわからないが、相手を意志喪失させる魔法だ」
ダントル
「それって最強なんじゃ...」
リミカルド
「」そうは言いたいけど、お前に試しても
ダントル
「え、俺にもためしたの?」
リミカルド
「剣と同じように有効時間と有効範囲があるっぽいんだなこれ」
ダントル
「な、なるほど」
リミカルド
「そう だからクラカルの結界と俺の魔法は相性抜群っぽくてな 広範囲でも効くようになってる。」
ダントル
「なんか竿兄弟みたい」
リミカルド
「殺すぞ?」
そういえばという風に先ほどまで意識があった男に目を向け、団長に報告するダントル。
「さっき見たいな 効いてないやつも居るっぽいすね」
リミカルド
「ああ、なんで効かねぇかはわからん
だが言えることはある。」
ダントル
「?」
リミカルド
「"追っている最中"に殺していいリストのやつらは動けるんじゃないか?」
ダントルはなるほど!とポンッと杵を打つように手をたたく。
ダントル
「つまりは依頼主は見越してリストを作っていたと?」
リミカルド
「気味悪りぃ」
ダントル
「ですね!」
――――
バンバンと見えない壁を叩くが伸びる布のように感じた。
エスメ
「なによこれ....」
サリィ
「不思議な感触ですね.....」
エスメ
「どうする?」
そう聞かれたサリィは悩んでいた先も行けず、ただこの場に居たとしても...という感じだ。
少し頬をさすり、考える。
すると歩いてくる音が聞こえる。
それは回廊の脇道から現れる。
そこには何も見えず、何も見えずただ茫然自失と道を歩く一行。
天になにがあるのか、
なにが見えているのか、
わからないような様子だった。
エスメはその光景に気味の悪さを感じた。
サリィはその光景に理解が出来なかった。
そして.....彼らの一行に紛れるように、どかすかのように、避けるかのように動く誰かが居た。
そしてその群れから、
がちゃりと軽装の鎧と片手のハンマーを携えた角刈りの男が現れる。
マルド
「」お、みつけた ニコリッ
その笑顔はひどく歪んでいた。
ひどく歪みこわれていたえがおに
" わたしたち " はこわくなった。
エスメとサリィは彼が居る方向とは別に走り出した。
悲鳴は出せなかった。
出したくなかった。
もし.....出したら.................、―
―――――――――――――――――
クレス
「どうする?」
イリアス
「別行動は危険だ 下手に別れたら死ぬ」
ハク
「私も同意です。」
イリアス
「仕方ない 武器が必要だ こっから武器庫行けるか?」
クレスは考える...三角測距法的に行けるどうかを考える。
クレス
「確か武器庫は訓練場近くだったよな?」
イリアス
「ああ、そうだな....」
なら、と指を出し、目と指で比較対象を作る。
今見える位置には円形図書館が見える。
円形図書館は膜外だが、ここからの距離は分かる。
そして武器庫があるとされる訓練場は、.....
クレス
「訓練場は膜外っぽい」
イリアス
「そうか.....」
そう言っていると回廊から心を落としたかのように彷徨う人々が居た。
クレスとハクはその違和感を感じ、すぐさまに見えるを発動させた。
よく見ると、彼らの周囲には魔素にまみれていた。
だが、周囲にある魔素は吸い込まれているのに彼らを"包む魔素"だけはあの天にある膜まで吸われていなかった。
ハク
「マスター あれに触れないほうがよさそうですね」
クレス
「イリアス 彼らには近づかないほうがいい」
イリアス
「なぜだ? あれに関係しているのか?」
クレス
「あそこ周辺は毒煙地帯だと考えてくれたらそれでいい」
イリアス
「わかった あの一行を避けるならどうするこっちの道からになるが...」
そう指をさすイリアス。
クレスは考える。
「悪手だと思うが教室に戻ろうと思う」
イリアス
「悪手かそれは?」
ハク
「教室で使えるものがあるかもしれませんし、最善の可能性もありますよ」
イリアス
「まぁもっとも最善なのはあそこに居る警備兵の剣を借りるのが最善かもな」
クレス
「近づけないからな」
イリアス
「そうだな クレスの意見に従う」
クレス
「よしっ向かうぞ!!」
一行は態勢を立て直すために、走り出す。
―、
回廊に廊下と行く先々にある道を曲がり走っていると脇目に見えた会堂の中に隠れるように座り込む人影が見えた。
クレス
「待ってほしい!」
一同が足を止める。
クレスはその会堂に入ると、その足音が聞こえビクリと体を震わせていた様子だった。
息を殺す。
そうとはいえないほどの怯えようだった。
そしてその影が見える所まで辿りつくと.....
身なりがととのった男の子が居た。
「き....君は?」
怯えた様子だった。
クレス
「どうしてここで隠れているんだ?」
「か、隠れるも何も!!みんなおかしくなっっちまったからだよ!!」
あ、っと口元を抑え、会堂の扉の奥を見つめていた。
小さな声で呟く。
「だ、だって ここにいるみんな 死に神にさらわれたようにこの世を彷徨っているんだ! この世の終わりだよ!」
クレスはその男の子の肩を掴む。
「大丈夫だ これはすぐに終わる」
「なんでわかるんだよ....」
「俺たちが終わらせてくるからだ」
「......」
「今俺たちは一旦教室に戻ろうと思っている」
「は? 教室? 君は噂の特待生!?」
しぃーと口元に指をさす。
「俺たちに付いてきてほしい そこは安全だと思うから」
逡巡するが、「わかった」とそう答えた。
クレスはこくりと頷き、こっちに来てくれと言うように会堂の外へと向かった。
男の子はその先を恐れたが、ぐっと握りこぶしを作り、彼らについていく。
イリアス
「君 名前は?」
「......キラル....キラル・コントラリウス」
ハク
「キラルね よろしく」
キラルは白髪の美少女に少し頬を赤らめた。
キラル
「よ、よろしく/////」
(う、うつくしい)
行く先々では、何人か魔法の影響を受けた様子は見当たらなかった。
そのため、保護し、一緒に教室へと向かうこととなった。
出会った人は念の為、名前を確認した。
キラル・コントラリウス
ラナ・ミリエスタ
サナトリウス・シビュレ
シリウス・マルタリー
の4人だった。
大所帯となった一行だが、すぐさまに目的地であるロートリウス教室に辿り着いた。
ラナ
「ここが...教室....」
サナトリウス
「な、なんでもいい ここが安全なんだよな?」
心配そうに見つめる人たちを安心させるため、クレスは「安全だよ」とそう答えた。
シリウス
「なんで こんなことに....」
キラル
「お、おいお前ら何を、....」
イリアス
「あったぞ」
そこには剣があった。
鉄製のしっかりと作られた75cmの刃渡りの幅が広い剣を見つけたイリアス。
「グラディウス エーゲ帝国で古くから使われている名剣ってやつだ。」
クレス
「1個しかないのか?」
イリアス
「あるとしたらほら」そう剣を投げる。
それは細く、刃渡りが40cmぐらいの幅が細い杖のようにも見える剣だった。
「それはセミスパタっていう短剣だ。
このグラディウスの後継、今のエーゲ帝国での最新鋭装備だ」
「さすがは賢者 歴史研究のために保管していたのか?」
キラル
「」お?お前たちなにを?
イリアス
「なにって この騒動起こした連中を懲らしめに行くんだよ」
シリウス
「首謀者がいるのか!!??」
クレス
「今からそいつらを探しにいく」
ラナ
「そ、それならここが安全じゃないってことよ!!」
クレスとイリアスは困惑を隠せなかった。
ラナ
「だ、だってあ、あなたたちが居なくなったら私たちはどうなるの? 武器は?
その敵が、やってきたら私たちはどうしたらいいの!!??」
そう状況が状況なのか相当に焦っていた様子だった。
クレス
「大丈夫だよ ここは学園でも端っこ
人っ子1人も通らないよ」
ラナ
「そ、そんなの誰がしんじろって...」
クレスはラナの肩をつかみ、じっと見つめる。
「俺を信じてほしい」
クレスの優しい顔がラナという女の子の焦燥感に落ち着きをもたらした。
クレス
「大丈夫 すぐに応援を呼んでくる」
「だから待っていてほしい」
彼女は頬を赤らめる。
「はい////」
男一同はその状況に焦りはあったが、ただ聞きたいことがあった。
シリウス
「保険はあるのか?」
クレス
「.......とりあえず奥に書斎がある。
そこなら幾らか隠れられる場所が多い
もし人が入ってきたら、俺たちだとしても警戒して外には出ないでほしい」
全員が固唾を飲む。
シリウス
「わかった 必ず応援は来るんだな?」
ラナ
「必ずお帰りください」
そう手を組む。
クレス
「ああ 保証する」
そう言うとクレス一行は教室から出ていく。
イリアスは少しふざけた口調で言う。
「お前人誑しの才あるよ?」
クレス
「え? 俺結構優しい声で落ち着かせたって思ってたけどてっきり....」
イリアスは鼻で笑うようにはいはいと答える。
それに理解ができずにハクを見ると、ハクはただ親指をたててグッジョブという顔をしていた。
クレス
(どういう意味だよ....)
、―
ハミルトン
「気味が悪いですね 人はかくも心をなくすと彷徨うようになるとは(真顔)」
そう周囲を見ながら歩くハミルトン。
人を避け、会堂の一室、一室を見て回る。
(意外にも素直に物事が進む...
魔法というのはやはり十字教が"奇跡"と呼ぶ理由も分かる)
そして、―
自身の手を見る。
はたしてそれはなにを意味をしているのかを明白にするような雰囲気を真顔の彼から漂わせていた。
がたりと音が聞こえる。
その音は、会堂の隣、書簡を納めた書斎室から聞こえた。
ハミルトンはこの彷徨う人々が起こしたものかとは思ったが、その理性を無視し、本能で音のする方向へ進んだ。
ひぃっと怯えた声が、ハミルトンの心に安らぎを感じさせた。
隠れているだろう机の下に何かが居るのが見えた。
かつり、かつりと軽装の金属音と靴の音が混ざり近づいてくるのが分かる。
僕はただ、―
じっとじっと目の前の足が近づいてくるのが怖かった。
そして左右を見るかのような足遣いでその場を去っていった。
僕はほっとした。
何も来なかった。何も起こらなかった。
それがどれだけの安寧なのかハッキリとわかったような気がする。
もう奴隷の子にも嫌味とか言わないから、このまま何も.....おこらな...いで.......
すっと机の影から何かが現れる。
それは人の顔だった。
その顔に一切の驚きも、感情も、色もなくただじっと僕を見つめていた。
じっとじっと、―
「見つけた」
そう呟いた。
その声には喜怒哀楽という何かが欠落していた。
ぼくは叫んだ。
いやぁああああああああああああ
ハミルトンは頭をかく。
しまった、―顔が見えない。
暗殺対象かどうかがわからないと"殺す"か"殺さない"の判断に決めかねる。
(団長に殺されるな)
「おいガキ(真顔)」
そう呼びかけても叫び泣いていた。
ハミルトンはめんどくさくなり、顔を押さえていた腕を掴み、引っ張りだす。
子供を宙に浮かしていると、子供の力では維持できないためそのまま垂れるようになる子供はただじっとハミルトンを見つめていた。
ひっくひっくと嗚咽混じりのその顔をみているとハミルトンはイラつきそうなのを我慢しつつ、顔を見た。
(やっぱり団長の言う通り、顔のリストに載ってないやつが居る。
よかったやらかすのは私も嫌いだからね)
「なんだテメェじゃないのか(真顔)」
そういうとガキを投げ捨てる。
子供はうっと棚の角にぶつかったのか気絶してしまった。
(依頼主は用意周到すぎる....何か....
いや考えすぎか 今回の印はうちのボスが記していた。
つまりボスが許可済みということだ。
それを疑うことは騎士団を疑うことに繋がる。)
だが、―と何か思うように書斎の扉奥へと見つめている。
誰かがこっちへ走っている音が聞こえる。
「こっちに叫んでいる子が居る!
助けないといけない!!」
「うん、そうだね!」
男女の声、子供の声だ。
だが状況を把握している可能性があるなとも考えるハミルトン。
そして足音がハッキリと聞こえるとここの書斎に辿り着いたようだった。
グラディウス
「お前は!!??」
ミエラ
「あ!?」
彼らから見たら、子供を殺したハミルトンのように見える。
グラディウス
「ダンタリのハミルトンだな」
そう剣を構えるグラディウス。
ミエラ
「私があの子を助ける。」
グラディウス
「ああ、わかった」
ハミルトン
「そういうお前はピピンの子だな?(真顔)」
(やはりリスト通り だが"追っている最中"に殺していいのかの範疇かはわからない。
だが戦うしかないようだな)
ハミルトンは自身のショートソードを下に構え、グラディウスから右手肩と剣を隠すように構える。
「俺たちの邪魔をするなら 殺すぞ ピピン(真顔)」
グラディウスは勇み、構える。
「やれるもんならな!!」
そうして彼らは会敵す、―
戦いの火蓋を切って落とされる。―




