衝撃のニュース!
※ユニークスキルを覚え……ません。
※金や権力で軍隊を派遣……しません。
※武器屋や道具屋を牛耳……りません。
※鍛冶師や錬金術師には……なりません。
カチカチカチカチカチ……
時計の針は23時59分。
薄暗い部屋の中。
マウスのボタンを連打する音が木霊する。
時は2037年12月31日
世間を騒がせたゲームと言えば星の数ほどあるが、自他共に認めざるを得ない超人気ゲームタイトル。
その中でも、未だ色あせる事の無いシナリオやシステムだけでなく、やりこみ要素が満載のおかげでライト層から廃人まで、誰もが楽しむことができる第三作品。
50周年記念を迎えるドラゴンクエスト3が今流行りのフルダイブRPGとして2038年2月10日にリリースされると突如発表され、クリスマス一色の世界を驚かせたのはつい先日のこと。
当然、俺はその波に抗うどころか、サーファーの如く喜んで乗りまくる。
急いで新調した高速モデムと高速ルーター。
それらが正常に起動している事を確認しつつ、時計を見ながら何の反応も見せないダウンロードボタンをクリックしまくる作業を開始する。
人気作品と言えど、たかがゲーム。
しかもパッケージではなくダウンロードのため売り切れは存在しない。
それにも関わらず、何故故に周辺機器を新調してまで必死になっているのか?
求ム!
アレフガルドの救世主!
一番乗りには賞金1000万ドル!
~ ドラゴンクエスト3フルダイブβ版 ~
2038年1月1日 0時00分 始動!
参加資格:ダウンロード終了後、開始ボタンをクリックのみ!
※尚、参加者は先着順となります。
※漏れた方はβ版をお楽しみ下さい。
ゲーマーでなくとも食いついてしまう一文。
一番乗りには賞金1000万ドル!
参加者数が書かれていない所が非常に嫌らしいが、それでも食いつかざるを得ない魅惑的な謳い文句。
世界中を探せば、良くも悪くも奇人変人が五万といるため可能性は0に近いとは思うが、ゲームをするだけで誰でも夢を掴むチャンスがあると聞けば、年越し間近にも関わらず、ワンチャン俺にも……
等と思いつつ、正月番組そっち退けでモニターに齧りついてる人間が、世界に何万……
いや、何百万人居ることやら。
当然、ドラクエ好きを自負している俺は、諦める事なくクリックし続ける。
『ゴーン!』
『ゴーン!』
一瞬だが、近くから鳴り響く除夜の鐘に気を取られる。
おっと危ない。
モニターに目を戻すと、既にダウンロードボタンがダウンロード中へと変化していた。