表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

あの帽子は似合わない

作者: 雲母あお
掲載日:2023/12/08

「お似合いですよ。」

え!?全然似合ってないよね?

店員さん困らせてるよね?

心の中で謝りつつ、

「ちょっと他も見てみますね。」

店員さんに帽子を返す。


憧れのシンガーソングライターが雑誌で被ってた帽子。


「やっぱり似合わなかったな。」

ため息をついて、お店を後にした。


ある日、気になるカフェに遠出した時のこと。

途中ショーウィンドウにまたあの帽子が飾ってあった。

いつも買わないテイストの服と合わせてある。


「この帽子素敵ですよね。」

店員さんに話しかけられうつむいてしまう。

似合わないくせに私なんかがすみません。

心の中は卑屈な思考でいっぱいだ。


「お似合いになると思いますよ。」

「!?」

この人は悪くない!でも、簡単に似合うと言ったこの店員さんにイラッとした。

「私の何がわかるんですか?似合うなんて簡単に言って!こないだ別の店で試着したら全然似合ってなくて、店員さんも困った顔してた。でも、この帽子がいいの!被りたい!でも似合わないの!」

せきを切ったように喋り出しうつむく私を、黙って見守っていた彼女はこう言った。

「その時も、そのお召し物でしたか?」

え?

「いつも同じテイストのお洋服を着ていますか?」

テイスト?

でも、この店員さんは、バカにした目をしていない。


「お時間がありましたら、私にお客様をコーディネートさせていただけませんか?」

「は、はい。」

勢いに負けて返事をすると、嬉しそうに店内を案内してくれた。

入り口でチラッと値札を見てほっとした。

いつも着ないテイストの洋服で新鮮だけど、こんな可愛い服のお店、私には場違いに思えてずっとうつむいていた。


「どうぞ。」

試着室に案内される。

あれ?私こんなに可愛かったっけ?

試着室から出るの、ちょっと恥ずかしい。


「このコーデは、最後にこの帽子を被って完成なのです。」

店員さんの手にはあの帽子……


このお店に入る前なら、断っていただろう。

でも今は……


私は目をつぶり、少し前かがみになる。

店員さんは、まるで女王様に王冠を讃えるように、私の頭に帽子をそっとのせた。


「お似合いですよ!」

店員さんの弾んだ声がする。

思わず目を開ける。


憧れのシンガーソングライターのようにはいかないけれど……


今の私を変えようとは思わなかった。変われるとも思わなかった。

1つのことにこだわって、決めつけて……

そのままいたら、今、目の前にいる自分には出会えなかっただろう。


鏡には、照れくさそうにうつむく私がいた。




感想、評価、いいね、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お話がきちんと整っていて、主人公の心の動きが真っすぐ伝わってきて素敵でした!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ