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1995年、神は死んだ!

作者: タナカラボタモチ

神はすでに死んでいるとみんな口をそろえて言うが、僕はそうじゃないと信じてる。神はがいたらこんな世界になってないなんて、そんなわけがない。僕にとって神とは絶対。神の言うことは絶対だし、神の言うことも絶対。神は失敗なんかしないし、そもそもすべてが成功になる。つまり、神がいたらこんな世界になってないなんて主張は、僕にとって土俵にも上がれないくだらない思考ということになる。そもそも神は我々人類に試練を与えるためにこんなごみ溜めのような世界を作っているのであって、それを神の失敗だというのは頭のおかしい人間のやることだ。それに、僕は神に会っている。これは揺るぎもない事実で、僕にとってこれは人生唯一の自慢だ。神は世田谷のボロアパートに住んでいる。僕はそれを知っていて、神は僕が神の存在に気付いていることを知らない。つまり神は実質僕のものだ。と思っている。

今日、そのことを僕の信頼できる友達に話してみた。彼は言った。

「そんなわけないだろ。バカバカしい。きっとその神ってやつも家に行ったら首つって死んでるよ。」

そんなわけがない。そんなわけがない。神は絶対。彼が死ぬなんてことはない。そうだ。そうに決まっている。

西日に照らされた塗装のはがれた扉の、ドアノブに手をかける。

「そんなわけがない。きっと、神は生きている。神は僕のことを笑って抱きしめてくれるはずなんだ。」

短い廊下の間にはトイレと風呂場の扉と、ハエのたかったごみ袋が散乱していて、そこは天国に近しい状況だった。神は私たち人間のことを思って、ごみを排出せず、自分の家で完結させたんだ。そうに決まっている。

歩いていく。だんだん歩いていく。だんだんだんだん歩いていく。だんだん居間が近づいてきて流しっぱなしのテレビでしゃべっているニュースキャスターの声がはっきりしてくる。だんだんにおいがきつくなる。


目の前にはカーテンレールにベルトを巻いて、首をつっている人間がいた。


「そっかぁ。神は死んだのか。」

僕はその部屋に唾を吐きかけて部屋を後にした。

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