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第六話未来は僕らの手の中

ひとしきり泣いた後、彼女は真っ赤になって俺を突き飛ばしてベッドに潜り込んだ。


「シツカちゃーん!クウカイ!リキュー!遊ぶぞー!」


彼女も泣き腫らした顔など晒して俺と顔を合わすのは気まずいだろうとそう思い、子供たちを呼んだ。ちなみにシツカちゃんが一番上で8歳クウカイ、リキューは双子で5歳だ。

遊びたい盛りの年だが遊びの種類は少ないだろうと俺は予測していた。

おそらく同年代の子供で集まることはできないはずだ。

子供は目を話すとすぐ逸れる。町の外に対して危機感、恐れは抱いていても子供が何人も集まれば気付いたら町の外だったと言う状況になってもおかしくない。

子供はいつだって遊ぶことに全力だ。例えば鬼ごっこなどしていたら無我夢中で逃げてるうちに気付かず門を抜けるそれを追いかけて走る大人の門兵、それに驚きさらに町から離れていく、そこにばったり魔物と遭遇そんなことがあるのは予想できる。

まあ子供って意外と賢いし防衛本能が大人よりもしっかり機能してるから杞憂かもしれないが親は心配だろうし過保護と言われようと家の外から出したがらないだろう。

もしくはそもそも子供が少ないと言う可能性や身分の問題だと言う可能性もあるが同年代との接触はないように思える。

大人としか関わっていないような大人びた対応がそういった裏側を感じさせる。

もちろん王族の子息だからそう言う教育を徹底しているのかもしれないがどちらにせよあまり遊びを知らないだろうと予測できる。

そんなことを考えてるうちに嬉しそうにきゃっきゃと寄ってきた。

ワクワクしている子供たちにだるまさんがころんだや、椅子取りゲーム、それとかくれんぼは何かあったら怖いからやめて俺の一人演劇などで遊んでいた。

すると落ち着いたのか部屋から出てきた獣人の娘が怒った顔で詰め寄ってきた。


「君は嘘つきだね!」


いきなりの嘘つき呼ばわりに驚いてほへって感じにほおけてしまった俺に子供達が嘘ついちゃダメだよと随従してくる。


「一生一緒にいてくれるっていったじゃないか!それなのに僕を置き去りにして遊んでたじゃないか!」


ああ、そう捉えたのか。まあいいけど。


「ごめんごめん。嬢ちゃんも気まずいと思ってさ。俺としても気を使った結果だったんだよ。」


「シロナって呼んで!それで、君の名前は?」


「ジンだ。名前の由来は酒。自分で決めた。よろしくシロナ。」


由来や自分で決めた云々の時はキョトンとしていたが名前を呼ぶと嬉しそうにはにかんだ。表情がコロコロ変わってかわいいな。


「さっきステータスを見たとき僕のステータス好い気にすごいレベル上がってたんだけどあの魔物たち倒せたの?」


「あーまあなんと言うか必死だったからあんまり覚えてないけどなんとか倒せた。」


倒したのは俺だが俺じゃない。そのせいでなんともはっきり言いにくい。

俺にあんな化け物たちに向かって行く勇気なんてないしあんな自暴自棄な自己犠牲が精神の塊のような戦い方をできるような心の強さなどない。

あれは俺で春が俺ではない、全く別の人間といえよう。

それがたとえ俺が生み出した人格だとしても。

そして子供達は町の外に行って魔物と遭遇したことは知っていたが逃げて帰ったと思っていたのだろう、立ち向かったなどと言うのは想定外だったようで泣きながら危なことはしちゃダメだとまた説教が始まった。

さっきまで一緒に全力で遊んでたから抱く情も帰ってきたときの比ではなかったようで一際説教は激しかったしものすごい勢いで泣いた。

泣かれると言うのはかなり困るものだ。どうしていいかわからん。ひたすら平謝りするばかりだった。

だがもうしないとは言えなかった。

あれはひたすらに痛かったがシロに任せれば俺も戦える。強くなれる。それがわかった。

俺は強くなりたい。そして誰かのために生きたい。

この世界ならきっとそれができる。


「次はシロナと一緒だし、しっかり準備をしていくから大丈夫だよ。な、シロナ!」


そう言うと子供達は不満そうにしていてシロナは嬉しいような申し訳ないようなそんな顔をしてこちらを見ていた。

子供達が何か言い募ろうと口を開きかけたところ夕飯ができたと知らせが来て渋々みんなで手を引いてリビングに向かった。

人が作ってくれたものに文句は言いたくないがやはり王族とは思えない質素な食事だった。

調味料もほんのり塩の風味がするだけだ。

そして空気が重い。否が応でも責められているような気分になった。


「アギト。俺とシロナはこれからも町の外に出て魔物と戦うぞ。」


いきなり行った俺にアギトは怒り狂って席を立った。


「あんな思いをしてまだ懲りんのか!それとも今度こそ死ぬ気か!」


「俺は死ぬ気なんてかけらもねぇよ。だけど懲りてねぇってのはあってるかもな。なんたって俺は平和で命の危険のない世界に生きがいを見つけられなくてそれが我慢できなくてこの世界に来ることを願ったんだ。ただ生きているなんて我慢できない。俺は俺のために誰かのために生きたいんだ。」


「だがお前のスキルは・・・。」


「どんなハンデがあっても工夫次第だ。あんな戦い方をしていたら狂っちまうかもしれない。だけど、俺は狂ってでも戦いたい!」


この世界は多分戦い続けなければ人類存続すら怪しいのだろう何もできない人間を抱え込んでいる余裕なんて本来はないはずだ。

そうじゃなければシロナがあんなに思い詰めることもないだろう。

だからアギトも何も言わない。言えない。

子供達も奥さんもこちらを心配そうに見ている。

多分この奥さんだって普段は戦いに町の外に出ているのだろう。

そしてこのままではこの子供達も戦いに行かなければいけない時が来る。

そんな未来は許せない。許せないからと行って俺がこのままでできるこてゃないだろう。

ならば狂ってでも体が別の人格に乗っ取られようとも俺はあがきたい。

なぜなら可能性があるはずだから。


「アギト。だって神様が言っていたんだろう。異世界人がこの世界に良い結果をもたらすかもってさ。」


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