A級モンスター
戦闘長いよ
「結局、モンスターは全然居なかったですね。良いことですね」
ショックバイパーを倒した後、結局モンスター出なかったんだよな。
「結局、ショックバイパー1体だけだったし、そのショックバイパーも別に強くないし、そんなに警戒するほどか?」
「忘れたんですか? セイン様が強すぎるだけで、まず村の人たちのような一般人だと到底敵いません。それこそ、ショックバイパーが1体村に出るだけでも、村は壊滅しますよ」
うーん、俺基準で話したらダメらしい。
「確かにそうだなあ。シェラもそろそろ戻って来ると思うから、待ってようぜ」
「••••••」
ん? エマのやつ、ずっと西の方を見てどうしたんだ?
「どうしたんだ? 何かあったか?」
「あの平原にジャイアントボアの群れがいるのが見えますか?」
お、本当だ。大体200メートルくらいか? こっちにあの数が来たら、結構危険だな。それの警戒か。
「ああ、いるな。ざっくり20頭くらい。あの群れがここに来たら危ないかもな」
「ええ。ジャイアントボアは普通は多くても8頭ほどの群れで動いています。群れからハブられて、孤立した個体も居ます。それが私が倒した個体です」
8頭ならなんであんなにいるんだ。20頭ほどいるってことは、通常の倍はいるのか。
「普通多くても8頭なら、なんでアイツらはあんなにいるんだ?」
「恐らく、A級モンスターの出現だと思います」
「A級? それとアイツらに何の関係が」
「ジャイアントボアは、危険を感じると他の群れと協力して、切り抜けようとする習性があります。
恐らく、危険なモンスターが出現して、自分達の群れだけでは対処出来なくて、他の群れと一緒に行動をし、生きようとしてるんだと思います」
B級の危険なモンスターって聞いてたから、てっきりヤバいやつかと思ったら、協力的なモンスターなんだな。
「それで、もし、A級モンスターなんかが出た場合、この村が襲われる可能性があるわけだ」
「はい。より警戒をしないといけませんね」
「セイン、エマ、戻ったわよ」
「シェラ様、A級のモンスターが出たかもしれません」
「ええ、それは知ってるわ。私が見回りをしてると、大量のジャイアントボアを見つけたもの」
お、シェラも既に見つけてたか。ちゃんと見つけて、危険なモンスターがいるって判断ができるのは流石だよな。
「それで、A級モンスターとってやつ、2人とも見てない?」
少なくとも俺は、それらしきモンスターは見てない。
「見てないです」
「私も見てないけど、大体予想はつくわね」
え? マジ? 予想出来ちゃうの? 流石経験者は違うな。
「その予想ってのは?」
「バーニングドラゴンってやつじゃないかしら」
本当にわかりやすい名前つけるよな。絶対に炎吐く典型的的なドラゴンだろ。
「なぜバーニングドラゴンだと?」
「それは俺も気になる」
「この周辺。と言っても、ラール平原は割とバーニングドラゴンが生息してるわよ。実はかなり危険なのよここ
というか、ここら辺でジャイアントボアが、あんなに群れてビビるようなモンスター、バーニングドラゴン以外考えられないわよ」
その危険なバーニングドラゴンとやらが、問題を起こす前に俺らが倒すわけだ。簡単だね。
「なるほど! 流石、シェラ様。これが経験の差ですか」
「んで、どうするんだ? まだ決まった訳じゃないし、誰も姿見てないって事は••••••」
「それはもちろん。探すわよ」
「それ以外ありませんね。行きますよ、セイン様」
やっぱり俺が自由な時間はないらしい。
それにしても、仮に見つけたとして、別々に行動するのに、どうやって報告するんだ。
「なあ、どっちかが見つけたとして、どうやって報告するんだ?」
「うーん。それは考えてなかったわね。まあ、報告せずに戦えば良いんじゃない? 事後報告ってやつ。どうせ勝てるでしょうし」
とんだ脳筋だな。シェラは頭脳派かと思ったら、意外と脳筋でゴリ押しの時あるよな。
「脳筋だけど、わかったよ。じゃあエマ、行こうぜ」
「はい。ではシェラ様、お気をつけて」
あれ、もう居なくなってる。仕事熱心だな〜。尊敬するね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ドラゴンとやらは、全然見つからねえんだが、本当にいるのか? それともシェラの方にいるか」
「私に聞かないでください」
「悪い」
本当に見つからねえな。ちゃんと探してると思うんだけど。ドラゴンどころか、飛んでるモンスターが全然居ないんだが。
「でも、意外とふとした瞬間に見つかりますよ。そもそも居ないなら居ない方がいいモンスターです••••••」
ん? 急に上向いて固まってどうし!?
「ふとした瞬間だとしても、これは不意打ちすぎない? なんで上見たらドラゴンいるんだよ」
思ったよりは小さいけど、どう見てもドラゴンだろ。一応4メートルくらいありそう。赤か黄色かオレンジ色かよく分からない鱗してるな。見るからに炎吐きそう。
『グルルル』
「おいおい、どう見ても俺らを敵対視してるけど、やるしかねえよな」
「ええ、もちろんです••••••」
コイツ!? これはちょっとマズイかもな。
『ガァ!』
バサッバサッバサッ
こいつ、突っ込んでくる。マズイ、思ったより速い!
「エマ! 避けろ!」
「えっ••••••」
ドーン!
バサッバサッ
「大丈夫か?」
「ぐっ! いっつ」
俺は余裕で避け切れたが、思ったより速い。しかも上空からの体当たり。巨体を活かしてきやがった。
エマが避け切れてない。明らかに動きが悪くなってる。
「無理をするな、危なくなったら任せろ」
「なんとか大丈夫です」
おいおい、何が大丈夫だよ。さっきから手足が震えて。ドラゴン相手にビビり散らしてんじゃねえか。
これじゃまともな戦力になりそうにないし、俺1人なら何とかなるが、エマも居るんじゃ、守りながらは難しいな。
「無理をするな。攻撃なんて考えなくて良い。攻撃を避ける事だけ考えてくれ」
「分かりました」
『グァ!』
口に炎の塊が出来てる。あれ多分、ブレスってやつだよな。俺は避けれるがエマは大丈夫か。
「エマ、ブレスが来る。絶対に避けろよ」
多少ブレスに当たっても俺は大した問題にならないけど、エマは戦闘能力が高いだけの普通の人間だし、当たると多分、即死だよな。
「ええ、もちろん。死ぬ訳には行きませんから」
ゴォォォ!!!
おいおい、ブレスもスピードあるのかよ。
「エマ、避けろ!」
パチパチ!!
エマはなんとか避けれたみたいだな。それにしても、ブレスが直撃した地面がだいぶ燃えてるな。これ当たってたら、一瞬で丸焦げだよ。危な。
良い加減反撃するか。流石に攻撃をされ続けるだけじゃ、面白くない。
タッタッ、タッ!
「こんの、クソトカゲ。危ないだろうが!」
カスッ
やっべ、渾身のパンチが避けられた。
バサッバサッ
やらかした、エマのとこに行きやがった。クッソ、俺は今空中だぞ。エマはビビって動けねえし。間に合わねえ。
『ガァァ!』
ドスン!
「エマ!」
「うっ••••••!」
案の定避けれてない。マズイ。息はあるけど、意識がない。
「ふざけんなクソドラゴン、どう責任取るんだよ!」
グサッ
「あー! こいつもかよ」
全然ナイフが刺さらねえ。マジでどうなってんだよ。
『グァァ!』
ブン!
「痛え。吹っ飛ばされた」
空中に急上昇して振り落とすのは、ズルくねえか。物理攻撃全然も致命傷にならねえし、どうすりゃ良いかな。
バシャ!!
『グァ!?』
お、水魔法。ちょうど良いとこに来たな。
「ありがとうシェラ、助かった」
「ええ。それより、セイン? あなたが居ながらこれは、どういうことかしら」
「あいつ、飛んでるだろ? だから攻撃もあんまり当たらないし、エマには攻撃をせずに避ける事だけに専念しろって言ったんだが、避けれなかった。俺のミスだ。一応気絶してるだけだから、怪我さえ直せば大丈夫だと思う」
「仕方ないわね。冒険者なんだし、そんなこともあるわよ。生きてるなら気にしなくて良い。こっちを倒すのに集中するわよ」
って言っても、俺は攻撃当たる気しないし、当たってもさっきみたいにダメージ通らない可能性もあるし、シェラ任せだな。
「とりあえず、私が魔法であいつを撃ち落とすから、あとはよろしくね」
「はいはい、サボろうとして悪いね」
バサッバサッ!
『ガァァァ!』
やっぱりあいつ、巨体の割に飛行速度、結構速いな。アレに当てて落とせるのか?
「水矢」
グサッ
『グァァァァ!』
ドスン
あ、普通に落としやがった。てか初めて見る魔法だな。水で矢を作って発射する魔法なんてあるのか。しかもちゃんと翼に刺さってるし。
「なに突っ立ってるのよ、あなたの番よ」
おっと、忘れてた。
「ちょっとだけ、本気出すか」
スッ
「えっ?」
ザシュッ!
『••••••?』
よし、ちゃんと刃が通った。手こずらせやがって、久しぶりに苦労した。
「終わったよ。本気出したらあっという間だ。これなら最初から本気出せば良かったかもな」
「今、何したの? 一瞬で首が刎ねたけど」
「何って、近寄って首を刎ねた。見た通りだが」
「見た通りって••••••。とりあえずエマを抱えて。村に戻って治療するわよ。話は後よ」
「わかったよ。少しだるいけど、仕方ないね」
まあ、俺のミスの責任だし、こいつを抱えて責任を取るって事にしておこう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「回復魔法」
「••••••シェラ様、セイン様」
お、元気になった。相変わらずシェラのヒールは凄えな。
「起きたか。あのドラゴンは一応討伐したよ」
「あ、申し訳ございま••••••」
「別に、謝らなくても良いのよ。相手が相手だったし。まあ、今回はセインが悪いからね」
おい、なんで俺が悪いことになってんだ。いや、俺が守るって言ったのに守らなかったのか。じゃあ俺が悪いな。
「そうだな。シェラの話はともかく、謝らなくて良い。俺たちは冒険者なんだ、この程度よくある。それに、A級のモンスターと遭遇して気絶と軽傷だけで済んだなら、十分だろ」
「で、ですが。私は、死ぬ覚悟は出来てると言っておきながら、いざモンスターと遭遇したら、動けなくなって••••••」
なんだ。ドラゴンを相手にしてクソビビってまともに動けなかったこと引きずってんのか。気にしなくて良いのにな。
「あのな、冒険者である以前に、俺たちは人間だ。死ぬ覚悟が出来てる奴の方が少ない。そんな覚悟、出来てる方が異常なんだ」
「セインにしては良いこと言うわね。セインの言った通り、気にしなくて良い」
「俺にしてはってどういうことだコラ。そういう事だから、お前も言ってただろ? B級だって強いって。ならそれで良いだろ。お前は実際、強いんだ」
「励ましてくれたのは嬉しいですが、なんというか、セイン様が言うと、違和感がありますね」
「••••••また気絶させるぞ?」
「申し訳ございませんでした!」