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受付嬢

「さぁ、いつでもかかって来なさい。あんた程度には負けないわよ」



「俺も舐められたもんだな、お前相手なんともねえ。S級って言っても、どうせ雑魚だ」



「何を根拠にS級が雑魚って言ってるのか知らないけど、念のため教えてあげる。S級冒険者は、あなたが思ってるより全然強いわよ。あまり調子には乗らないことね」



「だとしても俺よりは雑魚だろ。お前なんて一瞬で蹴散らしてやるよ!!」



 こいつ自分が1番強いとでも思ってるのか? 可哀想な頭だな。最強は俺だっつの。



「はいはい、おやめください。問題を起こさないでくださいよ。仮にもS級とA級の冒険者なんですから」



 ん? こいつは確か、いつも受付のカウンターにいる受付嬢か。


「受付嬢ってのはこんな問題の解決までやってるんですか? 大変そうですね」



「ほとんど。あなたのせいですけどね。面倒を増やさないでください。私たちも楽じゃないんですよ? お仕事大変なんですから、こんな事で手間をかけさせないで」



「はいはい、すんません。気をつけます」



「おい受付嬢。邪魔するってのはどういう事だ? お前もぶちのめされてえか?」



 こいつバカだろ。ギルド職員である受付嬢に喧嘩売るとか、ほぼギルドに喧嘩売ってるだろ。



「良いんですか? そんな事したらあなたは確実にギルドから処罰を受けますが。最悪ギルドからの追放。実質、冒険者引退になりますが」



「くっ••••••覚えとけ。今度会った時は絶対にぶちのめす」



 処罰を受けるって言われた直後に予告をするなよ。



「面倒ごとにならなくてよかったわね。一件落着? かしらね」



「そうかもね、受付嬢さんのお陰かもね。あとでお礼言っとかないと」



「あ、個人依頼の報酬をまだもらってないわ。報告しに行きましょう」



「今回受けた個人依頼を達成したわ」



「分かりました。それではこちらが報酬になります」



 ゴトッ



「どうも。それじゃあセイン、行きましょう」



 そうだ、お礼言っとかないと。


「そうだな。さっきはありがとうございます。受付嬢さん」



「いえ、業務の範囲内です」



 ようやく、帰れるな。結局時間かかったな


 なんなら、いつもよりも時間がかかった。モンスター討伐のクエストが多かったし、久しぶりに人と戦ったな。



「じゃあ私は帰るわね。あとは自由にして良いわよ」



 あ、帰って行った。てか足速いなあいつ。そもそも俺のスピードに追いついてる時点で人外だ。普通の人間であのスピードで走る人いないだろ。


 それにしても、自由にしろって言われてもなあ。特に何かあるわけでもないし、体調もなんか良くなって、早く帰る理由もないし、どうしようか。



 スタスタ



「セイン様、少しよろしいでしょうか」



 さっきの受付嬢だ。受付嬢の方からようがあるなんて珍しいな。


「問題ないですよ。何か話でも?」



「どうです? 私はお昼休憩なので、外で話をしませんか?」



 外で? なんだ。もしやこれ、デートのお誘いか?


「デートのお誘いですか? 嬉しいこともあるもんだね」



「違います。用事があるだけです」



 ここまで真顔でハッキリ違うって言われると少し傷つく。


「冗談ですよ。じゃあ行きましょうか」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ここら辺で良いでしょうか」



 全く人がいない。周囲に人の気配も感じないし、そんなに重要な話でもあるのか?


「それで、お話っていうのは?」



「さっそく本題に入ります。私を、あなたのパーティに入れさせてもらえないでしょうか!」



 え??? パーティ? 受付嬢が俺のパーティに? どういう事だ。そもそも冒険者でもないだろうに。



「混乱しても仕方ないですよね。実は私、冒険者のライセンス持ってます。B級の立派な冒険者です。受付の仕事が多くて全く冒険者業はしてないですけどね」



「B級って普通に強い部類だと思うんだけど、どうして受付嬢を?」



「ギルド職員はお給料が良いんですよ。常に死と隣り合わせで、依頼をクリアできる保証も無い。正直、そんな危険な仕事に対して報酬の額は見合ってないです。それなら安定してお給料を貰える受付嬢を選んだわけです」



 なるほど、だいぶ現実的な考えだ。依頼の失敗はほとんどの場合は死を意味する。そんな、リスクとリターンが見合ってない仕事だからな。


「でも、どうして受付嬢を? 安定した稼ぎなら他のところで働いても良いんじゃない?」



「受付嬢にならないか。と誘われたんですよ。ほら私、自分で言うのも気が引けますが美人ですし、真面目だと自負してますし。一応B級ということもあって、先ほどのように喧嘩を止めるだけの実力はありますから」



 確かに、こいつ美人なんだよな。冒険者の間では、こいつが可愛いって話をよく耳にする。



「私の話は良いんですよ。それより本題に戻ってください」



 そうだった。俺は今、パーティに入れてくれってお願いされてるんだった。


「悪い悪い。まず聞きたい事が2つある」



「答えられる範囲であればお答えしますが」



「まず1つ目、なんでアンタは他のパーティじゃなくて、俺のパーティなんだ? 俺はD級。アンタはB級。2つもランクが高いんだ、俺のところじゃなくて良いだろ?」



「そうですね、私はあなたを実力者だと評価しています。それこそ私より強いと思っています」



 ほう、珍しい人もいたもんだね。俺を実力者なんて言ってる人は見たことないんだが。



「それに私はあなたの事、そこそこ信用しているんですよ。他の男のように変な目で見ないですし。それにシェラ様と仲良くしている。それだけであなたのパーティを選ぶ価値はあると思いますが」



「それで、なんでアンタは俺のことを強いと思うんだ?」



「シェラ様とパーティを組んでいる。D級昇格試験の時にあなたはC級のポイズンアントを討伐して来た。それと、護衛任務やその他討伐任務、ほとんどで無傷です。ニトロドラゴン討伐の時、爆発を受けませんでしたか?」



 ああ、あの爆発する変なトカゲか。確か爆発に巻き込まれて痛かったんだよな。


「そうだな、爆発を受けたよ」



「私は、あの爆発を生身で受けてピンピンしてる人間を見た事ありません。以上の理由から普通ではないと判断しましたが、それでも不思議でしょうか?」



 こいつよく見てるな。他の奴らはランクで判断してバカにするけど、ちゃんと細かいところを見て判断してる。

 B級の実力者で、ちゃんと人を見て判断してる。それに真面目な性格。面白そうだな。



「それで、2つ目の質問は」



「俺、アンタの名前知らないんだ。教えてくれ。仮にもこれから仲間としてやって行く人の名前を知らないわけにはいかないだろ?」



「それって••••••パーティに加入させてくれるという事ですか?」



「ああ、そういう事だ。これからよろしくな! えーっと•••••」



「アメリアです。気軽にエマとでもお呼びください」



「そうか。よろしくなエマ」



 そういえば受付嬢の仕事はどうするんだ。流石にパーティ組みながら無理だから、やめるのかな。


「受付嬢の方はどうするんだ?」



「もちろんやめますよ」



「良いのか? 安定した稼ぎがなくなる上に、冒険者は死と隣り合わせの職業だぜ?」



「加入が決定した後にそんな事言わないでくれますか。私をバカにしないでください。いつでも死んでやる覚悟ですよ。ハナから死ぬ気はないですが」



 嘘つけ。死と隣り合わせとか言って受付嬢になったやつに、死ぬ覚悟があるとは思わないんだが。そこは気にしないでおこう。


「じゃあ、俺は帰るよ。特にすることもないからな」



「そうですね。では、また明日、ギルドで」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「それで。なんで受付嬢がセインと一緒にいるのかしら」



 しまった。シェラと何も話をせずに勝手に決めたんだ俺。シェラに話しとくの忘れてた。

 でもシェラが帰った後だし、俺はシェラの家知らないし、仕方ない。はず。


「いやあ、それはだな。うちのパーティメンバーになったんだよ」



「パーティメンバーねぇ? 私は何も聞いてないのだけれど? セイン。どういうことかしら」



「だってパーティに入れてくれってお願いされた時、シェラ帰ってたし」



「それなら今日に持ち越して話せば良かったでしょ。大事なことを勝手に決めないで頂戴。セインのパーティではないのよ。私とセインのパーティでしょう?」



 うっ、何も言い返せない。正論すぎる。



「悪かったよ。でも、今更断るってのもできないし」



「まあ、面白そうだから良いけどね。別に悪い人じゃ無さそうだし。でもこれからは、大事なことは私にも伝えなさいよ」



「はい、分かりました」


 静かだけど確かな圧を感じる。シェラってば普通に怒ってるな。もっと怒鳴ったりするイメージあったけど、説教の時も意外と静かなんだな。



「あの、そろそろ私の紹介を••••••」



「ごめんごめん。忘れてた。自己紹介よろしく」



「自己紹介だったんですねこれ。てっきり紹介してくれるのかと」



 そんな面倒なこと俺がするわけないだろ。俺ってばなるべく楽しく、そして楽な生活をしたいんだ。



「私はアメリア。エマとでもお呼びください。B級冒険者です。よろしくお願いしますね、シェラ様」



「ええ、よろしく。B級なら私達がいつもやってる討伐クエストにもついて来れそうね。あなたの実力は分からないけど、少し期待をしとくわね」



「よし、紹介が終わったな。じゃあ今日は何するんだ? シェラ」



「私の扱いちょっと雑じゃないですか?」



「そうね。B級モンスターの討伐任務を受けるわ。エマがどれくらいの強さか見極める為にね」



「おお、それは良いな。確か俺の時もなんかモンスター倒したよな」



「無視ですか。やっぱり少し扱い雑ですよね」


「とりあえずわかりました。B級モンスターなら1人でも勝てると思います」



 おいおい、ずっと受付嬢やってたんだから、ブランクは有るだろ。まあピンチになりゃ俺たちでなんとかなるけど、1人でB級は大丈夫か?


「ずっと受付嬢やってたんだ。ブランクは大丈夫なのか?」



「ブランクがあるからと言ってそう簡単に負けませんよ。忘れてませんか? A級やS級がバケモノレベルなだけで、B級も十分強いんですよ」



「そう。なら良かった。B級すら1人で倒せない。ましてや、ブランクで即戦力にならないメンバーは、ここには要らないからね」



「では、セイン様はB級のモンスターを1人で討伐出来ると?」



「ん? ああ、もちろん。B級程度なら負けないよ」



「そんな話は良いから、早く行くわよ」

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