バケモノ
戦闘が少し多めです
「どうした? ビビってるのか? これが殺しのプロなんて冗談だろ?」
「ふざけるなよガキッ!!」
お、効いてる効いてる。モブ君激おこだよ。相変わらずあのリーダーみたいなやつは冷静か。こんな安っぽい挑発に乗るようなら失格だよね。
「おい、待て!」
シュッ、ガキン!
「なにっ!? ナイフで剣を止められる訳!」
「おいおい、剣を抜くのも攻撃も遅い。おまけにナイフに防がれて。こんな体たらくで••••••」
グシャッ!
「勝てる訳ないだろ。流石に舐めすぎじゃねえの?」
って言っても、こいつら1人ずつ来てるから瞬殺出来てるだけで、複数で同時に来られると面倒だな。
「だから待てと言ったのだ。お前らは最初何を見てたんだ! まず1人で勝てる訳がないだろう。だと言うのに、あんな安い挑発に乗って殺されるとは」
あくまでリーダーのおっさんは、ちゃんと理解できてるらしい。
「へえ、おっさんよく分かってるな。でもな、どれだけ束になってもお前らが勝てる確率は0だ。帰ったらどうだ?」
「バカを言え。可愛い部下を殺されてそのまま帰るやつがあるか」
うーむ。もう少し冷酷なやつだと思ってたんだが、意外と部下思いらしい。
「でも、こんな見え見えの安い挑発になって即死する部下はこの先要らないだろ? 必要のないやつを選別できる良い機会じゃないか」
「貴様! 言わせておけば!」
タッタッ
だから、挑発に乗るなって言われたばかりだろモブ。バカなのかこいつら。
シュバッ
「腹から胸にかけて綺麗に切れたな。お前の部下はバカしかいないんだな。もう少し楽しめると思ったけど、時間の無駄だ。全員殺る。シェラ、魔法よろしく」
「やっと私の出番ね、1人でやりすぎなのよ。水銃弾!!」
バンバンバン!!
おー、5人くらいダウンした。思ったより威力も範囲も十分あるんだな。やっぱりあのトカゲが吹っ飛ぶくらいだし人間に対して使えば、そりゃ普通の人間なら即死だろうな。
「仕事をしてるって言ってくれよ。残ったやつは俺が全部やるから」
「舐めやがって!!」
グシャッ! バシュ!
この程度のスピードに対応出来ない程度じゃ、三流だ。よくこれで暗殺なんてしようとしたな。残りは、あのリーダーのおっさんか。
「小僧、貴様どうやってそんな身体能力を手に入れた。反射神経、スピード、力。どれを取っても普通じゃない。それに、的確に急所に攻撃を当てている。お前は、何者だ••••••」
何者って言われてもな。
「ただのD級冒険者だよ。最強のね」
「ふざけるな! ただの冒険者がその強さ、ありえない。なぜ、S級じゃないんだ!?」
「そりゃ、俺がそもそもランクを上げようとしてねえからな。お喋りはここまで。それじゃあ、逝ってらっしゃい」
ドスッ••••••ドサッ。
「ぐ、バケモノ••••••めぇ」
ふう、ようやく片付いた。それにしても街中で人も見てるってのに、堂々と戦闘なんて何考えてんだか。お陰で道が血まみれだよ。
「ふ、本当にバケモノね。でもそうね、私もそんな身体能力をどうやって手にしたのか気になるわね」
「それはまぁ。秘密ってやつだよ。いつか教えるよ。それよりも俺は、なんでシェラが同じ魔法しか使わないのか気になるけどな」
「それは、他の魔法を使う必要がないからかしらね。ほら、私って水魔法が1番得意だし、水銃弾なら他に比べて素早く使えるし、初級魔法だからほとんどリスクないのよね」
まあ、十分な威力があって、他よりも優れてるとこがあるなら納得だな。普通だとありえないんだろうが。てかシェラって水魔法得意なのか。初耳だね。
ガチャ
「え? なんだいこれは。し、死体••••••?」
寧ろあんなに騒いでたのにこいつ気づかったのか。
「ちゃんとした護衛だよ。こいつら殺し屋だと思う。多分どっかの誰かに依頼されて、あんたを殺そうとしてたよ。だから俺らがなんとかしたって訳」
「おぉ!! そうだったのか。ありがとう。命の恩人だよ」
こいつ、さっきまでD級とか言って馬鹿にしてたくせに、調子の良いやつだな。
「用事は終わったろ? 早く帰るぞ。俺らも早く護衛を終わらせたいんでな」
「そうね、割と疲れる依頼だったし、早く帰るわよ」
「分かったよ。じゃあ帰るぞ」
それにしても、こいつなんで狙われてるんだ。特にあいつら、瞬殺しすぎて弱く見えたけど、1人1人は弱くない。特にリーダーっぽいあのおっさん。単純な1対1の戦闘ならB級でも苦戦すると思う。
それだけ戦闘慣れしてる手練れを送ってるってことは、確実に仕留める気満々って事だよな。
考えるより聞いた方が早いな、直接聞いてみるか。
「んで、なんであんた狙われてるんだ? 心当たりはねえのか?」
「商売は実力世界だ。上の人間を引きづり下ろす為に、殺しをするなんてよくある話さ。それの標的になったんじゃないかな。僕はクリーンで正当な商売をしているからね、別に恨みを買うことはないはずだ」
「でも、悪い噂をよく耳にするのだけれど、あれは何なの?」
そりゃ確かに。全然いい噂を聞かないって言ってたな。
「自分の為なら殺し屋を雇うような世界なんだ、悪い噂を流す程度よくあるよ」
「だいぶ闇深い世界なんだな。って事は、あんたは何も悪くないって事かよ」
「もちろん。悪事っていうのは、あまりにリスクが大きすぎる。それに対してメリットが少ないことの方が多い。そんな事僕はしないさ」
「今回は私たちが居たから良かったけど、これからは気をつけなさいよ。少なくとも商談中に押しかけてくる奴等だもの。自宅やお店の場者はバレてるでしょうね」
「そんな時は君たちのパーティを雇うさ」
またこんな面倒なことするって? まあ依頼なら仕方ねえか。
「時間があったらな。その時はまぁ、よろしく」
「いつでも雇うよ。なんなら給料を払うから、ずっとボディーガードやってくれない?」
「いや、それはお断りね」
「うん、お断り。調子に乗るな」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今回は助かったよ。ありがとう」
ようやく帰れる。疲れたー。久しぶりにあんなに戦闘した気がする。いつもモンスターは瞬殺だからな。
「帰る前に、ギルドに寄ろうぜ。報酬の受け取りだ」
ザワザワ
「なんつーか、ギルドの近くで、ちょっと騒ぎが起きてねえか? なんかめちゃくちゃ大男なんだけど」
「あれは! クロイスじゃない」
へー、アレが噂のクロイスか。でけえな。190近くありそうだな。名前くらいは聞いたことがあったな、確かこの街のギルドに20人程度しかいないA級冒険者の中でも、最もSに近いA級最強の冒険者だったか。
「それで、そのクロイスってやつは、なんか他の冒険者と揉めてるっぽいけど?」
「喧嘩かしら。クロイスは評判が悪いのよ。他の冒険者に横暴で、自分より弱い人間を見下してるの。逆らわれるのが嫌いで、命令を無視したら怒って殴りかかってくるって話も良く聞くの」
なんだそいつ、人間じゃないだろそんなやつ。それで、喧嘩してる相手がもうボコボコじゃねえか。めちゃくちゃ一方的に殴られてる。降参してるのに殴り続けて、そこまでするかよ。
「周りは周りで止めないんだな」
「話くらいは聞いたことあるでしょ? クロイスはS級に最も近いA級冒険者。クロイスに真っ向から戦って方は冒険者はほとんどいないから、誰も止められずに好き放題って感じなのよ」
「いかにも自分中心の考え方だな。そんなので冒険者が務まるかよバカみてえだ」
「あぁ? 誰がバカだって? って、ぷっ。ハハハ。お前はシェラと組んだD級の雑魚じゃねえか」
なんだ聞こえてたのか。耳は良いらしい。頭は悪いけど。
「おっと、聞こえてたのか。そりゃ悪い、つい本音が」
ザワザワ
「あぁ!? ふざけやがって。D級の雑魚が調子に乗るなよ!!」
ガシッ
「ちょっと待ちなさい。セインは私の仲間なの、殴るって言うなら、容赦しないわよ」
へえ、腕を掴んで止めに入るなんて、カッケェじゃん。前から思ってたけど、シェラって結構仲間思いだよな。
「あぁ? おい、シェラお前S級だからって調子乗ってるんじゃねえか? 俺に逆らうなんて良い度胸じゃねえか」
「私を誰だと思ってるの? あなたの強さは認めるけど、まさか私に本気で勝てると思ってるの?」
シェラもだいぶ冒険者だなあ。なかなか大男にああ言える女居ないし、流石S級かな。
「んだとこのアマ! 俺を誰だと思ってる。S級とはいえ、女に負けるようなら俺の名が廃るってもんだ」
観戦しても良いが、流石にここで問題を起こすわけにもいかないしな。止めてやるか。
「おいおい、一回落ち着けよお前ら。問題を起こす気か?」
「D級の雑魚が何をほざいてんだ、パーティだかなんだか知らねえが、引っ込んでろ。俺はこいつをボコボコにして解らせねえと気が済まねえよ」
本当にこいつは話が通じねえな。だからA級止まりなんだよ。
「そもそもシェラは近接戦闘が苦手なんだ、しかも武器だってない。そんな女を一方的にボコって自慢するのか? 「俺はシェラを倒した」って? それはダサすぎるだろ。だからやめとけ。お前の名前が地に落ちるだけだ」
「なんだとD級! 調子に乗るなよ!」
「そうだ、1つ教えといてやる。お前じゃ俺に勝てないんだ。やめとけ、D級に負けた。そんなクソみたいな汚名がつくだけだ」
これで引いてくれれば良いんだが、流石に面倒ごとは起こしたくねえんだ。
「言わせておけば。お前が俺より強いだと? 冗談は他所でやりな。ぶっ殺してやる」
シャキン!
おいおい、こんなところで剣を振り回す気かよ。感情と行動が直結しすぎだ。なんにも考えてねえだろこいつ。
「おいおい、こんなところで剣を抜くバカがあるかよ。周りの迷惑考えろ」
スッ
「ッ!?」
ブンッ!
あっぶな。S級に1番近いって言われるだけはあるな。動きがめちゃくちゃ速い。さっきのおっさんなんて比べ物にならねえ。
「ちょっと、本当に剣を抜いて攻撃するなんてバカじゃないの。何を考えてるのよ」
「うるせえ、ここまでバカにされたのは久しぶりだな。絶対に殺してやる」
「話聞かねえな本当に。俺らは早く帰りたいんだ、だから今すぐ剣をしまって退いてくれ。無駄な争いは好きじゃない」
って言って引いてくれるようなら、ハナから問題は起こさないんだよな。
「ふざけんな! 俺をバカにしておいて逃げる気か?」
期待はしてなかったけど、やっぱりダメだね。こんな酷いやつは流石に初めてだぞ。本当に人間かよこいつ。
ま、こんな話通じない奴は倒して強行突破しかねえよな。
「あー、はいはい。分かったよ。お前をぶっ倒せば良いんだな。シェラ、頼んだ」
「ちょっと!? やっぱり私がやるのね。分かったわよ、こいつに力の差ってやつを見せてあげる」
「なんだ、シェラが相手かよ。まぁ良い、こんな雑魚一瞬でぶちのめして、D級のクソ雑魚を殺す」
まあ、クロイスがどれだけ頑張ってもシェラは負けないだろうがな。さっき散々心配したが、普通に心配する必要がないくらい強いんだよな。
「まあ、頑張れよシェラ。勝てるって思ってるからな」
「はいはい。すぐ終わらせるわよ」
「なんだ、お喋りは終わりか? ならぶっ殺す!」