B級クエスト
B級のクエストってことで、ラール平原ってところに来たんだが、B級モンスターの討伐らしい。
「なあシェラ、ここ暑くない? めちゃめちゃ汗かいてきたよ俺」
「何言ってるの、こんなに天気良いのよ? 日差しもだいぶ強いし。暑いのは当然じゃない?」
ごもっともなご意見です。だとしても暑くてダルくなって来るんだけど。
「そりゃあごもっともだけどさ、だとしても暑すぎない? それに俺、まだどのモンスターを討伐するかなんて教えてもらってないしさ。ダルくなるだけだよ」
「あ、ごめん伝え忘れてたわね。討伐するのはニトロドラゴンってモンスターね」
なんかとんでもなく爆発しそうなドラゴンなんですけど。
「なんだその爆発しそうな名前のドラゴン」
「え? 爆発するけど。当然じゃない。じゃなきゃそんな名前付かないわよ」
え? いやその通りなんだけどね。だとしても本当に爆発するのか。ブレスとかじゃなくて爆発なんだ。独特なドラゴンだな。
「爆発って言っても、そんな強力じゃないだろ?」
「鱗が爆発するんだけど、割と強いわよ。ほら、そこに1メートルくらいの大きな岩あるじゃない? アレが粉砕されるくらいには強いわ」
アレが? てことは生身の人間とか重傷か即死じゃねえか。しかも鱗って。面倒そうなモンスターだなこりゃ。
それにしても鱗が爆発って、普通に生活するにも苦労しそうだな。自分自身の爆発でダメージ受けないのかな。
「とりあえず、早く終わらせようぜ。こんな暑いところ長く居たくないしな」
「それもそうね、確かもう少し進んだところに居るはずだけど」
「お、アレよ。あのモンスター」
ん? 黄色い鱗に大きな身体で、四足歩行? ドラゴンというより、トカゲじゃねえかアレ。
「アレなの? ドラゴンというよりトカゲな気がするんだけど」
「知らないわよ。トカゲでもドラゴンって名前が付く種はいるの。そんなこと良いから戦うわよ」
戦うのは賛成なんだけど、爆発する鱗とかどうやって攻撃すれば良いんだ。
「でもあの鱗爆発するんだろ? そんなのどうやって戦うんだ?」
「魔法で離れたところから攻撃し続ければ、爆発しても巻き込まれないわよ」
え? 今、魔法って言った? 俺なんてもっぱら近接戦闘ばっかりで魔法なんて使えないんだけど。
「魔法なんて俺使った事ないぞ。どうすれば良いんだ」
「仕方ないわね。じゃあ私が魔法で攻撃して隙を作るから、なんとか倒すとか」
それ俺が爆発に巻き込まれない? 大丈夫だとは思うけど、痛いのは好きじゃないぞ。
ただそれ以外に良い作戦も思いつかないし。
「よし、やろう。俺もそれ以外思いつかない」
「じゃあやるわよ。水銃弾!」
バシャバシャ!
『グルゥゥゥ!?』
えっ、強くね!? え? 絶対あのトカゲの爆発よりシェラの魔法の方が強いだろ。あの巨体が1メートルくらい吹き飛んだぞ。俺絶対いらない。
そしてあのトカゲ、急に攻撃飛んできたもんだから、ビックリしてねえか? ビックリしてるとこ悪いけど。
「狩らせて貰うぜ!」
『グガァァ』
ドーン!!!
「やっぱり爆発するのかよクソトカゲェェ!!!」
なんで地面抉れてんだよ。想像以上に威力が強いな。結構痛い。
「水銃弾! セイン大丈夫!?」
バシャ!
『グゥゥ••••••』
「俺は大丈夫だ。てか、あれ爆発するじゃねえか。結構痛いんだぞ」
「それは悪かったわ。回復してあげるから少し我慢して」
「まあ俺も賛成したからな、シェラだけの責任じゃねえよ。悪い」
「それはどうも。回復魔法」
どんどん傷が回復していく。ヒールって初めて受けたんだけど、こんなに傷の修復するものだっけか。
「こちらこそどうも。ヒールって初めて受けたんだが、こんなに回復するものなのか?」
「いえ、魔力量のせいよ。普通のヒールなんて切り傷程度しか回復しないわ」
「へえ、それはつまりシェラは魔力量が多いんだな」
「そうね、他の人よりは多いと思うわ。みんな勘違いしてるけど、私は剣士じゃなくて魔法使いなの。魔法一本でここまでのし上がってきたの」
そうなのか!? 俺は魔法も使える凄いやつだと勝手に思ってたんだが。
まあさっきの水魔法の威力があればソロでも勝てるよな。実際、今回は俺何もできてないし。
「でも、魔力量が多いとなんで強くなるんだ?」
「魔法って、使った時の魔力使用量が多いほど、より強くなるの。ということは、同じ魔法でも魔力の量が変われば威力も変化するってことよ」
「魔力が多いと、一度に使える魔力も多くなって、その分強くなるってことか」
「そう、だから魔力が多い人ほど魔法はより強力になるし、回復魔法だってより効果が強くなるの」
こいつ説明分かりやすいな。いやこの程度説明するのに下手な方が困るが。
「説明どうも。それより早く戻ろう。ここは暑いから長居したくない」
「その前に解体。もうひと仕事やるわよ。素材は貴重な収入源よ」
忘れてた〜。素材も売れば金になるんだった。
「えー。分かったよ、早く済ませるか」
あー、思ったより時間かからなかったな。早く済んで良かった。
「じゃあ、今度こそ戻ろうぜ」
「そうね、流石に戻りましょうか。お疲れ様」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ニトロドラゴンの討伐終わったのだけど」
「ニトロドラゴンですね、報酬金になります。お疲れ様でした」
俺がやった時は素材を見せて証明しないといけなかったのに、シェラは報告で終わりか。これがS級の信頼ねえ。
「終わったな。じゃあこれからどうする?」
「そうね。久しぶりにあんなに暑いところに行って私も少し疲れたし。今日はもう解散にしましょうか」
「そうか••••••そうだ。一緒に何か食わない?」
「そうね、ちょうどお昼だし良いわよ。ランチくらい。それにニトロドラゴンの素材を換金もあるし」
シェラと雑談なんてまともにしたこと無かったから、良い機会かもな。
「そうだ、良い店知ってるんだ。そこ行こう」
あそこの店、安いし美味い。金が人間にとっては理想の場所だからなあ。
「期待はしないでおくわね」
「ちょっ!? なんでだ。少し期待してもいいだろ? 美味いぞ。安いしな」
なんだ、俺の紹介は期待してないってか。信用されてんのかなこれ。
「どうかしら。私と食の好みが合うかしらね。ふふっ」
シェラも冗談言って笑うんだな。結構意外だ。
「それで、そのお店にはどれくらい行くの?」
「2日に1回くらいか? 割と行ってると思う」
「それなら期待できそうね」
さっきは期待してなかったって感じな言い方だな。
「やっとかよ。最初から期待してくれて良いのに」
「ほら、長話せずに、早く行くわよ」
「ちょっと! 俺が案内する側だって!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、着いたぞ。ここが俺オススメのマルク食堂だ」
「自信満々にオススメするから、てっきり隠れた名店的なお店かと思ったら、結構人気なお店なのね」
確かに、今日は珍しく人が多いな。いつもはそこまで多くはないんだが。
「いつもはこんなに人居ないんだけど、珍しいこともあるもんだな」
「いらっしゃい」
「お、マルクさん、こんにちは」
ザワザワ
なんだ、急に視線が••••••。
ああ、なるほど、シェラが来たから。こいつ結構綺麗なんだよな。こんな綺麗な人とパーティ組めるなんて。って、嫉妬されてたなあ。
「お、兄ちゃん、今日は彼女連れか? 珍しいこともあるもんだな」
「違いますよ! 彼女じゃなくてパーティメンバーです。逆にマルクさんも珍しく店が賑わってるじゃないですか」
急に変なことを言うもんじゃないよ。ビックリした。
「ああ! 珍しい事にな。ありがたい限りだぜ」
「あ、あそこの席空いてるじゃない。ちょうど2人席だし」
ガタッ
「んー。なあシェラ」
「どうしたのセイン。座らないの? お腹でも痛いのかしら」
「いや••••••お前って、大きいよな」
俺が小さいのかシェラが大きいのか。
「何、急にセクハラ? 帰っても良いかしら」
「違う違う、いや違くはないけど。そっちじゃない。身長だよ。改めてこうやって向かい合うと気になってな」
「急にセクハラしてきたのかと思ったわ。それより早く座りなさい」
「ごめんごめん。それにしても、席が空いてて良かったな。空いてなかったらしばらく待たされてたかも」
「その時は流石に帰ってたわよ。良かったわね、席が空いてて」
別の店に行くとかじゃなくて、帰るんだな。
「そこは帰らなくて良いだろ? 別のお店を探すとかさ」
「嫌よ。私はセインがオススメのお店があるって誘ってくれたから来ただけ。そもそも家に帰ってご飯作るつもりだったのよ」
「へえ、シェラって料理出来るのか」
「私のことなんだと思ってるのよ。一人暮らしだし、家事くらいはできるわよ。料理は特にね」
てっきり外食ばっかりでまともに家事をしてないものだと思ってたけど、違うのか。意外だな。
「ちょっと、意外って思ったでしょ。本当に私のことなんだと思ってるのかしら」
「冒険ばっかりで家事スキル0の最強冒険者」
「しばいて良いかしら」
あ、やばい。怒らせたかもしれねえ。
「兄ちゃん、注文は何にするんだ?」
救世主! 俺は初めてマルクに感謝した。
「じゃあいつものやつで」
「あいよ。嬢ちゃんは?」
「オススメはあるかしら?」
「この、ホットチキンとかオススメだな。いろんな客から評判いいぞ」
これって激辛の料理だろ。美味いって言ってる人見たことないけど。だいたい顔を真っ赤にしながら辛いって叫んでる人しか見ない。
「じゃあ、それにするわ。少し辛そうだけど」
「あいよ!」
え? それ食べちゃうの? マルク戻って行ったよ、大丈夫か食い切れるかの方が心配だが。
「シェラは、辛いの好きなのか?」
「そうね、辛いのは好きよ。自分でも作ってよく食べるもの」
辛いもの好きたちが撃沈してきた様を何度も見てきたから、少し不安だな。
「そう言ってチキン食べて撃沈したやつが多いんだぞ」
「そんなに辛いのね。まあ大丈夫よ」
本当に大丈夫だと良いんだが。とりあえず届くの待ってよう。
「はい、これいつものシチューと嬢ちゃんにはホットチキンだ」
ゴトッ
「いただきます」
パクッ
「うん、いつも通り美味しい」
が、シェラの方は大丈夫か?
パクッ
「うん、これ美味しいじゃない。極端に辛くもないわよ」
嘘だろこいつ、普通に食ってる。いつの間にか改良して辛さを抑えたのか? それともシェラが辛いものに強すぎるのか。
「なぁシェラ、チキン1口くれない?」
「良いわよ」
シェラ曰く、あまり辛くないんだよな。なら大丈夫。
••••••パクッ
「えっ、カラ!これ辛いじゃねえか!? なんでそんなに普通に食べてるんだ。ゴホッゴホッ」
なんだめちゃくちゃ辛いじゃねえか。シェラが強すぎるだけだ。
「そう? 辛いの苦手なら無理に食べなくて良かったのに」
お前が強すぎるんだよ! 口の中がかなり痛い。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ごちそうさまでした」
ガチャ
「また来てくれよー」
次来た時は絶対ホットチキンは食わねえ。
「満足したわね気に入ったわ」
それ多分お前だけだよ。はあ、地獄を見た。帰るか。