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指名依頼

 今日も任務と言われたが、今回の集合場所はノーブルって都市らしい。知らない土地だったので、事前にシェラといつものギルドで合流して、ノーブルまで案内してもらった。


「なあシェラ」



「ん? どうしたのセイン」



「いつもと集合場所が全然違うから、今日の任務は何かと思ってな」



「そうね、今日は護衛の任務を受けたの」



 護衛か••••••となると、またキースのヤツか?


「またキースか?」



「いえ、今回は別の人。この国の貴族様らしいわね。しかも伯爵だったかしら。結構な大物からの依頼よ」



 貴族? それまたどうしてそんな大物が。というか貴族が冒険者を雇うことってあるんだな。



「貴族様ですか••••••既に貴族様であれば、護衛を雇われてると思いますが、私たちを雇う理由はあるのでしょうか」



「確かにな。貴族なら護衛がついてるはずだ。なんで俺たちに?」



「今回の依頼人••••••フォーゲル伯爵は普段は護衛を雇わず、近衛兵すらつけないらしいわよ」



 なんだそれ。護衛が居ない? 襲われ放題じゃないか。大丈夫なのかそれ。



「護衛を雇わない。とは、一体どういうことなのでしょうか。貴族の方は常に身の危険がありますから、つけているのが常識では?」



「さぁね、そこら辺の事情は私も知らないの。それに、そもそも気にすることじゃないしね」



「それもそうですね。私たちには関係のない話です」



「よし、じゃあ行くわよ。伯爵の邸宅はここからすぐのところよ」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「着いたわよ。で、ここが伯爵の邸宅ね」



「やっぱり、貴族の家ってこともあって広いな」


 それに建物もでかいし、家族と言えばって感じの、想像通りの家だな。



「入らないといけないのだけれど。

これ、門を開けちゃっても良いのかしら」



「良いんじゃないです? 門番らしき人も居ませんから、開けないと入れませんし」



「じゃあ開けるわよ」



 ギギ•••ギギィィィ••••••! バキンッ!



 え!?



「意外とこの扉重いのね」



「おいちょっと待て、重いの一言で済ますな。なに平然と鍵かかってる扉を無理矢理開けてるんだよ!?

扉が重いんじゃなくてお前が鍵かかってる扉を無理矢理開けて破壊しただけだよ!」



「え、そうなの? 確かに開く時異常にうるさかったけど。ってあらほんと、下に壊れた南京錠が」



「確かに、何か壊れたような音は鳴ってましたが。本当に壊しているとは」



 おいおい、これから依頼主に会うってのに。

 しかも相手は貴族だ。この事について何か言われたら面倒だぞ。



「何者ですか!?」



「俺たちは依頼で••••••」


 あー!! 使用人にバレたー。こんなの相手からしてみれば、門を破壊した不審者じゃないか。



「分かりました! もしかして、族ですか?」



「族ならわざわざ門を破壊して侵入しないだろ!」



「族なんですね?! 族でしょう!? 退治致します!」



「おいこら、話聞けよ」



「なんの話を聞けと? 門を破壊した言い訳でしょうか?

門を破壊するような方とする話などありません。言いたいことがあるなら捕まった後にしてください!」



 気になるのは、見た感じこいつはメイドだろう。ならなんでメイドが攻撃して来るんだ? 普通は警備とかの人間が出動するんじゃないのか?



「ちょっとシェラ様、どうするんです? 仮にも依頼主の使用人ですし傷つけるわけにも」



「で、でもこのままじゃ捕まって、伯爵の家に侵入しようとした族として突き出されるわよ?」



「おいこらぁ! なに呑気に話をしてんだ! お前らも当事者だぞ」



「私を前に雑談とは良い度胸ですね! 覚悟してください」



「先に話を聞けこら!」



 ペシン!



「ぶぎゃっ!?

一体何が••••••あなた、一体何をしたのですか!?」



「ふっ、目にも留まらぬ速度でデコピンをしただけだ。

依頼主が雇ってるメイドを傷つけるわけにもいかないし、一旦頭を冷やして話を聞け」



「へえ。あんたにもそんなこと考える頭があったのね」



「おいどういうことだ? 俺の事馬鹿にしすぎだぞ。流石にこれくらいを考えられる頭はある」


 本当は2人の会話が聞こえたからデコピンで済ましただけで、元々ボッコボコにする気満々だったんだが。

 まあ終わりよければなんとやらだ。



「と、ところで話とは」



「おっと話が変わってすまない

えっとだな、そもそも俺たちは族じゃないんだ」



「ふぇ? 族ではないんですか!?」



「最初からそう言ってるだろ。まあ良い、俺たちは冒険者だ。今回はふぉ、ふぉ? なんだっけ? とりあえず伯爵の依頼で来た!」


 あれ、依頼主の名前を忘れてしまった。依頼主なんて興味ないから基本覚えてないんだよな。



「フォーゲル様ですか?」



「そうそう、そのフォーゲルからの依頼でここに来たんだ」



「事情は分かりましたが、ではこの門は••••••」



 やっぱりそうなるよな!? クッソ、俺ばっかりなんで話をしてたんだ。この2人もたまには話をだな。



「それは私がやったの、門を開けようとしたら、鍵がかかってたから無理矢理こじ開けたら鍵ごと••••••ね?」



「••••••まあ、そういうことだ」


 いや、どういう事だ?



「いやいや!!? ね? で納得できる訳ないでしょう!? そもそもなんで無理矢理開けようとするんですか!?」



「そうだぞ、なんで開けようとするんだ」



「そうですよシェラ様」



「私が悪いの!?」



「いや、そうだろ」



「右に同じく」



「シェラ様が悪いです」



 むしろなんで悪くないと思ったんだこいつ。



「おっと忘れてました。お客様でしたね、ご案内致します! 着いてきてください」



「それにしても、なんでアンタが俺らを攻撃したんだ? 普通は警備の人間とかじゃないのか?」



「そうね、それは私も気になったわ」



「まさか護衛だけでなく、警備すら雇ってない。とかじゃないですよね?」



「そのまさかです。ご主人様は警戒心の強いお方で、警備や護衛など武装した人間を近くに置くことすら嫌っておられます」



「じゃあなんで冒険者を雇ってるんだ?」


 冒険者なんて荒くれ者しか居ないから、普通に警備や護衛を雇った方が良いと思うんだが。



「それは私にも分かりかねます。ちょうどお部屋に着きましたので、気になる事は直接ご主人様に聞いてくださいませ」



 コンコン



「お客様を連れて参りました。今回ご主人様から依頼を受けたという冒険者の方です」



「そうか、入りなさい」



 ガチャ



「それではお客様をお連れしましたので、私は失礼致します」



「初めましてだね。今更説明する必要はないと思うが私はフォーゲル、伯爵であり君たちの依頼主でもある」



「ええ初めまして、私はシェラ。S級冒険者よ」



「アメリアと申します」



 こいつ、全く金持ちって感じがねえ。着ている物はしっかりしてるが、アクセサリー類を身につけてら訳でもない。一見ただのおっさんだ。


「••••••セインだ」



「セイン君、何か気になることでも?」



「いや、アンタは貴族様でしかも伯爵って聞いてたもんで、もっと高級な装飾品で部屋を着飾ったり、アクセサリーがじゃらじゃらしてる物だと思ってたよ」



「ハッハッハ、そうか。では期待外れかな?」



「そうだな。護衛を雇わずに冒険者に依頼したり、見た目も変に着飾ってない。良い意味で期待外れだ」



「第一印象が悪くなさそうで良かったよ。

早速だが君たち? 話にも出たが、私が護衛を雇わずに君たち冒険者を雇う理由、気になってるんじゃないのか?」



「そうですね、ちょうど聞こうとしていた所です」



「そんなに大層な理由ではない。ただ冒険者の方が信用が出来るというだけだ」



「冒険者の方が、信用出来る••••••?」



「ハッハッハ。みんな理解出来てないと言った顔だね」



「冒険者は荒くれ者が多いじゃない。とても信用に値するとは思えないのだけれど」



「俺も同意見だ」



「普通はそうだろうね。ただ考えてみて欲しい、冒険者である君たちなら知ってるだろう?

冒険者に依頼の失敗は許されない。特に指名依頼なんて大きな仕事はね」



 確かに依頼の失敗は冒険者としての評価を下げ、最悪ランクも下がる。それにペナルティもある。冒険者なら絶対に失敗はしたくないはずだ。



「もちろん依頼主を攻撃するなんてもってのほかだ。それ故に問題を起こすこともなければ、絶対に失敗をしないという気概を感じさせる。それに下手な護衛より実戦経験だってある。

ただ意味も目的もなく、仕事だからとやっている人間より、報酬というハッキリとした目的を持った人間の方が信用に値するのだよ。欲とはそれだけ人を正直にする」


「••••••おっとすまない、話が長くなった。まあこれが君たちに依頼をした理由だよ。納得したかい?」



「ああ」



「そうね。この依頼、受けさせてもらうわ

あなたが少しでも不快な言動をした瞬間殴り飛ばして帰ってたわ」



「おお••••••! ハハッ、そりゃ怖い。冒険者の事を信用できなくなったかもしれないね?」



「ふふっ、なら依頼を取り下げても良いのよ?」



「冗談を。ここで君達を帰しては、わざわざ来てもらったのに申し訳ないだろう?

それに君達は、面白そうだ」

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