行方
戦闘多め
「やあ、来たね。待ってたよ。早速始めようか。そこと、そこに立ってお互い向き合う形でよろしく」
「分かりました」
「分かった」
「それじゃあ、スタート!」
ザッ!
おいおい、開始から攻撃速すぎるんだよ。てかこういう剣士ってなんでことごとくスピードが速いんだよ。ふざけんな。
「対応しづらいんだよ。もう少し遅く踏み込めねえのか」
ガンッ!
「今ので仕留めたと思ったんだが、やるな」
「アホか、この程度でへばってB級なんてなれるか」
とは言ったが、正直こいつはクロイスより強いかもな。スピードは大差ないが、剣裁きが違いすぎる。こりゃ、ちゃんとやらないと負けるな。
「B級の冒険者ならこの時点で負けてるだろうな」
「そうかも••••••な!!」
カンッ!
おいおい、今の割とちゃんと攻撃したんだが、普通に止められちゃったな。
「今のは少しヒヤッとしたぞ」
カン!カン!
「クッソ、こんなもん食らうか!」
ブンッ
「おい、今のは完全に防ぎ切って俺の間合いだろ。なんで避けれるんだよ」
「バカを言うな、仮にも副ギルド長、元A級冒険者だ。この程度で負けるようならとっくに死んでいる」
「話してばかりで良いのかよ」
ブンッ
「完全に不意打ちかと思ったんだが、それ避けるのはダメだと思うぞ」
ナイフと剣じゃリーチが違いすぎる。俺の方がより懐に入らないと当たらないが、アインの方がリーチの関係で当てやすいし引きやすい。しかも完全に不意打ちでも避け切る反応速度とスピード。分が悪いな。
「相手のことは常に見て警戒をしている。もちろん不意打ちなど効かない」
「思ったより楽に勝てると思ったんだが、思ったより強いな」
「そうだろー、僕の部下は強いんだ」
うん、ヴァースのことは無視だな。こっちに集中しよう。
「どうした、来ないのか?」
って言ってもなあ、不意打ちもダメで、純粋にぶつかりに行っても躱されるか防がれる。
防がれてもカウンターが飛んでくるから迂闊に攻めれないんだよな。
「なんだ、あんなに闘志剥き出しだったのに、いざ戦うと案外ぶつかりに来ないんだな。もう少し押してくるかと思ったんだが、残念だな」
「本当にお前は、私をイライラさせるのが好きだな。良いだろう、本気で相手してやる」
おいおい、本気出したらこいつ、めっちゃ速いじゃねえか。目で追うのがやっとだよ。
「クッソ、うぜえ。なんでそんなにお前速いんだよ。本当に人間かよ」
「攻撃を全て裁き切っている癖によく言う。正直なぜついて来れているのか分からないな」
クッソ危ねえ。かなりギリギリだ、防戦一方だな、どうやって勝つか。
「ただ、今ので気づいたよ。お前とは白兵戦では決着がつかない」
「はい、君達。1回辞めてー」
なんだ、まだ始まったばっかりだろ。決着すらついてない。
「まだ終わってないだろ、どういうつもりだ」
「うーん、僕の気分かな? 元々この試験も僕の気まぐれで始まったんだ。なら僕の気まぐれで終わってもおかしくないでしょ?
じゃあアイン、戻っててくれ、僕はセイン君と話があるんだ」
「おい、俺は別に話すことはないぞ」
「君はなくても僕が話すことがあるんだよ」
「それではヴァース様。失礼いたします」
「僕もすぐ行くよ」
「おい、試合を中断するなんてどういうことだ?」
「だって君達、白兵戦じゃ決着つかないじゃん。流石にそんな光景見続けても飽きるからね。
それにしても、君があんなに一方的に攻められるなんて、自信満々だったのに、どうしたのかな?」
なんだ、煽ってんのかこいつは。ただ事実だから言い返せないのが腹が立つ。
「これは言い訳になるが、俺は加減が下手だ。極端な話、弱い奴なら手加減しても勝てるが、強い奴には本気でやらないと負けるだろう」
「それはそうだね、それでそれで?」
「実際本気を出せばあいつでも殺せたんだが、殺すなという条件付きだ。手加減すれば負ける、でも本気を出せばルール違反。そりゃ本気なんて出せないだろ?」
「なるほど、君にも弱点があったんだね。殺しちゃダメってルールなら、君は勝てないんだ」
「そういうことだな。これ以上の言い訳は見苦しいから辞めとくよ。この試合に関しちゃ、俺の負けだ」
実際、殺し以外であいつに勝つプランが無かった。俺の実力不足だな。
「君って、本当に正直だね。自分の強いところも弱いところも隠さない。冒険者は変なプライドを持つ子が多いからね、君みたいに正直に負けを認める子は少ないよ。それも今回みたいに中断して、明確な勝敗が決まってないなら尚更」
「そうかよ。じゃあ、俺は帰るぜ」
「あっ、待って待って。君の結果なんだけど、D級のままだ。昇格はない」
「なんだ、そんな分かりきった事を言って。俺への当て付けか?」
「そんなんじゃないよ。僕は意地悪な人間じゃないからね
あと、多分君は、アインより強いよ。それじゃあ僕も戻るよ」
「そうか••••••そりゃどうも」
俺も帰るか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ふー、今日も今日とて視線がすごいね。そんなにジロジロ見られてもな。
お、珍しく2人がギルドの前で待ってる。
「よう、おはよう」
「セイン様おはようございます」
「ええ、おはよう。あと既に依頼は決まってるから、早速出発するわよ」
え、早くない? せめて俺が到着してから決めようぜ。
「それで依頼ってのは?」
「またキースよ。指名されたの。行くわよ」
キースって、前に護衛をした金髪の男か。
「またアイツか? 今度はなんだよ」
「とりあえず、話は歩きながらね」
「今回も前回と同様に護衛らしいです。どうやら隣町のゲレーロ地区へ用があるらしいです。道中で賊などに遭遇した時に撃退してほしい。とのことです」
「なるほど。前と変わらないな。そのゲレーロ? って場所まではどれくらいかかる?」
「2、3kmくらいじゃないですか? まだ近い方ですよ」
2、3km••••••めちゃくちゃ疲れねえかそれ。何十分歩くんだそれ。だるい予感しかしない。
「確かに近いけど、だとしても歩きなら結構疲れるぞ」
「冒険者なんだからこの程度の移動は当然じゃない。というか、前に行ったラール平原。あそこまで普通に5kmくらいはあるわよ」
あれ? 思ったより近いか。あれで5kmなら余裕だな。大丈夫な気がしてきた。
「あの時は2人だけだったから、全速力で行ってすぐ着いたけど、今回はキースがいるから、馬車のペースに合わせることになるわね。大体30分くらいかしら」
「それなら全然疲れない気がしてきた。あ、着いた」
「あ、本当ですね」
コンコン
「鍵は開いてるよ」
ガチャ
「やあ君達、久しぶりだね。いや、初めましての方もいるじゃないか。今日もよろしく頼むよ」
「正直、乗り気じゃないんだが」
「大丈夫だ、今回のルートは安全だから賊やモンスターの心配はいらないさ」
「尚更乗り気じゃない」
ずっと歩き続けるくらいなら、敵が出てきてくれた方がまだ楽しいんだが。
「そうね、正直歩くだけなら暇ね」
「同感ですね」
「え? え? 冒険者ってみんなそんな感じなの? 僕としては出てくれない方が安心なんだが」
「そうかもな。早く出発するぞ」
「相変わらず辛辣だね。分かったよ、行こう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やっぱり何もなく来てしまった。道中、戦闘どころか大した戦闘もなく来てしまった。
「よし到着だ。護衛ありがとう。商談の間、外で待っててくれ」
「なんというか、結局暇でしたね」、
「久しぶりにあんなに暇な時間を味わったわ」
「護衛じゃなくて散歩って感じだったな」
ここから更にここで待つ。暇な時間が長くなるな。だから嫌だったんだ。
「でも、暇つぶしはできそうね」
「え、どういう••••••」
ドーン
「ことぉ!? ですか。危ないですね」
こいつら、爆発魔法で歓迎とは良い度胸じゃないの。
「誰だお前ら。急に魔法をぶっ放してくるなんて、盛大な歓迎だな。ありがたいね」
「無駄口は良い。行け!」
こいつら、見る感じまた暗殺者って感じじゃないな。冒険者か? だとしたらなんで俺たちを。
「暗殺者って感じじゃないけど、何者かしら」
「うるせえ! んなもんどうでも良いだろうが!」
タッタッタッ
「あ、こいつら弱いぞ。余裕だ」
ドスッ
「ガハッ。ただのパンチなのに、なんて威力してやがる」
「何をしている! こんなD級の雑魚に手こずるとは」
なんか、筋肉の塊みたいな奴がボスっぽい。
それにしても、俺のランクを知ってるってことは、シェラとエマのランクも知ってて戦いに来てるってことだろ。
「負けるビジョンが見えないね。余裕だ」
「私、まだ何も出来てませんから、私にさせてください」
「こんな女1匹、やっちまえ!」
4、5人で女1人を囲うなんて。返り討ちにあってダサいだけだな。
「あまり舐めないでください」
グサッ
「ぐ、ぐぁ」
ブシャッ!
「ガハッ••••••」
ああ、グロい。こんなのちびっ子気持ち悪くなるだろ。ナイフを抜くなんてまた酷いことを。
「おーい、流石にグロテスクだぞ。この馬鹿、通行人がいる所で攻撃してきてんだ。通行人が見たら吐くぞ。気をつけろ」
「はい。分かりました」
「な、なんなんだこいつら。圧倒的すぎる。リーダー! 聞いてた情報じゃ、全員D級だったじゃないですか。どういう事ですか!」
「う、うるせぇ! 俺も、そんな事知らなかったんだ。完全に、ハメられた」
ハメられた? 誰か依頼主がいるのか?
「おい、どういう事だ。これは誰からの依頼だ?」
「うるせえ、うおぉぉぉ!!」
タッタッ
「私を無視しないでください」
スパッ
「ぐ、足が。動かねえ」
「わお、また綺麗にアキレス腱切ったな」
「ひぃ、こんなの聞いてねえ。逃げるぞ!」
「逃げた奴らは追わなくて良いわよ」
「一体、誰からの指示だ? いや、多分お前らは冒険者だ。依頼の方が正しいか。殺人の依頼なんてギルドではやってないと思うんだが、どういうことだ?」
「も、元々は戝の撃退だった。でも、依頼主が唐突にD級冒険者3人を始末しろなんて。お、俺は断りたかったが、断ったら俺らが殺されるんだ。それにD級3人って聞いてたから、なんとかなると思って」
「ということは、私たちを殺そうとする輩が居るってことね」
こりゃまた、面倒な事になったな。護衛どころじゃないだろ、これ。




