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前世が魔人の青年

会話は「」

モンスターの鳴き声や叫び声等は『』のカッコで分けてます

 俺はセイン、前世は魔人だった。あんまり記憶はないけど。魔人ってのは人間よりも身体能力も高くて、魔力の量や魔法の威力も強い、ただの人間の上位互換的存在。


 ただどういう訳か、何故か魔人の時の能力を引き継いでるみたいで、俺普通の人間より強いらしい。

 俺は、冒険者をしている。下からF E D C B A Sの順番でランクがあって、俺は今Eだ。全くの無名。もちろん雑魚扱いだな。


 そんな俺は今、冒険者ギルドに来て受付で依頼を受けるところだ。簡単な依頼はないらしい、薬草採取とか清掃とか無駄に時間に掛かるものしかない。薬草採取はまだ理解できるが、清掃の依頼なんてF級の冒険者でも出来るだろ。


 ただ、別に冒険者が嫌いなわけでない。モンスターの討伐とかは面白いんだが、E級ではモンスターの討伐依頼は少ない上に、討伐依頼は報酬金が比較的多いからみんな争奪戦。

 まぁ、E級にいる奴なんてたかが知れてる。大体の奴らは負傷して帰ってくるか、モンスターに負けて死ぬ奴が多い。


 ん? それにしてもさっきから外が騒がしいぞ。なんでだ。



「おい! あれシェラだ!」



 シェラ? 確か滅茶苦茶強くて、S級冒険者だったよな。

てことは、あいつと組めば、討伐依頼がたくさん••••••?

 確かあいつはソロだったから、チャンスはあるな。依頼を楽しめて金も入る。これはやるしかねえ。



「あの、依頼はどうされます?」



「すいません、やっぱり依頼はなしで! さよなら!」


 シェラ、シェラ••••••お! いたいた。注目の的だから見つけやすい。

 

「あの、ちょっと良いか、話が」



「何かしら? サインとかのファンサービスならお断りよ」



「なんだ、俺がファンだって? ないない。俺は自分のためにお前の勧誘に気たんだから」


 あ、やべ。思ったこと全部口に出た。しかも明らかに『何言ってんだこいつ』って顔してるし、しくじった。



「へえ、あなたが私を仲間に? 冗談なら他所(よそ)でやってくれる? 私はあなたがそこまで強そうに見えないし、そもそも誰かしら? 勧誘に来た割には自己紹介もしないのね」



 いつも1人だからてっきり無口キャラでコミュニケーション面倒くさがるタイプかと思ったけど、結構お喋り。


「お、それは悪い悪い。俺はセインだ。E級冒険者のな!」



「E級で何故そこまで自信満々なのかは知らないけど、とりあえず場所を移しましょう、ここじゃ人が多い」



 お、とりあえず話を聞いてくれるだけ良いな。他の奴らは勧誘したことあるが、E級なのを知ると話も聞かずに断られたからな。まだマシかな。口調は少し強いけど。



「それで? E級冒険者様が勧誘なんてどういうつもりかしら? 少なくとも私は仲間募集もしてなければ、E級を仲間にするつもりもないのだけれど」



 うわー、厳しい。まぁ無名のE級程度の冒険者が、急にS級の自分を仲間にしたいだなんて言われても、意味わからないよな。


「確かに俺はE級だ。でも実力はあるぞ。実は結構強いんだぞ」


 うわ、不審者を見るような冷たい視線。まだ信じてないらしい。いや信じるわけもないか。



「実力があるとしても、なんでE級に居るのかしら? もっと上のランクに居ても良いんじゃないかしら」



 ごもっともすぎる意見。ただ面倒なんだよなぁ、昇格試験。受けたことないから分かんないけど、受ける気にもならない。


「だって、昇格試験ってめちゃくちゃ面倒くさそう。だから、受けてないんだよ」



「面倒くさい••••••? 私からしたら試験に受からないから言い訳して逃げてるように聞こえるわね」



 なんだ、これは俺は喧嘩売られたのか今。絶対弱いって言われたよな今。まったく、失礼な。


「それは、俺に喧嘩を売ってるって事で良いのか? 間違いなく俺、D級昇格試験すら受からない雑魚って言われたよな」



「どう受け取っても良いけど、私は逃げてるようにしか聞こえなかったのよ」



「そこまで言うなら俺と決闘するか? ここまで言われちゃ、俺の実力を教えてやらんと気が済まなくてな」


 流石にここまで言われて我慢してやるほど俺の器は広くないからな。それにこいつを仲間にするためにも実力を教える良い機会だしな。



「はぁ、分かったわよ。じゃあその勧誘とやら、考えてみる。ただ条件がある」



 お、今までのやつとは大違いだ。ちょっと腹立つけど。それでも、考えてくれるだけ十分だね。


「条件? お前と戦って勝つとかじゃダメか?」



「あのね、私たちは主にモンスターを討伐してるのよ。そりゃもちろん、討伐以外の依頼はあるけど、私たちレベルになるとほぼ強力なモンスターの討伐なの。あなたがいくら私に勝ったところで、対人とモンスター討伐は別物なのよ」


「それにね、実際私と決闘して勝った人は何人かいるの、でもそんな人でもモンスターに殺されたり、負傷してその後遺症で冒険者を辞めたりしてるの」



「そんな強いやつでも普通に死ぬのかよ」



「だから言ってるでしょ、別物って。いくら私に勝ったところで、モンスター討伐で使い物にならないなら意味がない」



 こいつ、腹立つしちょっとうざいけど、言ってることはごもっともだな。S級なんて偉そうにしてるバカばっかりかと思ったけど、少し意外だな。


「それで、条件とやらを教えて欲しいんだが」



「そうね••••••じゃあ、私について来てくれるかしら?」



 なんだ、この場じゃできないことなのか。


「何処に行くんだ、この場じゃ出来ないことか?」



「うるさい、早くついてくる!」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「それで、ここは? 見る感じ森っぽいんだが」


 でも意外と陽が入ってきて明るいな、周りを見ても植物や木も結構生えてるし想像した通りの森って感じだ。


「ここは、ワレム森林って言って、モンスターが多くて危険度が高いのよ」



 確かに依頼文にワレム森林って書いてある事多いな。それで、こんな危険なところに何があるのか。



「あなたには、ここでモンスターと戦って欲しいの。それも強力な」



 条件ってそういうことかよ。確かにモンスター討伐できないと意味ないとは言ってたけど。

 まあ楽しめそうだから良いか、まず死ぬ訳ないし。


「分かったよ。それでなんのモンスターを狩れば良いって?」



「なんでも良いわよ。言い忘れてたけど、ここはワレム森林の中でも危険地帯だから、出てくるモンスターはほぼ強いから」



 あ、結構ちゃんと危険な場所だった! まあなんでも良いなら、普通に手当たり次第狩るか。



 それで? なんでシェラがついて来てんだ。俺がやるはずなんだけど。


「なんで君はついて来てるのかな」



「何言ってるの、こんな森林で離れて合流するなんて難しいことしないわよ面倒くさい。それにね、あなたが死にかけたら私が助ける為ね」



 滅茶苦茶ちゃんとした理由だった。それにしても、放置で狩ってこいじゃなくて、ちゃんと着いて来てくれるって、実は結構良いやつなのか? よくわからないけど、他のやつよりは大丈夫そう。


「そりゃありがたいね、流石に俺も死にたくないから。でも君の出る幕はないかも」



「言うじゃない、それじゃあ貴方の実力見せてもらえるかしら。ちょうどそこにキングベアーが居るわよ」



 あ、本当だ。なんだこのクマでかいなぁ。大体3〜4メートルくらいかな。俺が知ってるクマの2倍くらいあるんだけど。


「このクマが? デカいだけで特に強くはなさそうなんだけど、こんなやつでいいの?」



「はぁ••••••貴方キングベアーも知らないの? B以上の冒険者しか討伐依頼を受けられないモンスターで、普通に強いわよ」



 思ったより危険度高かった。でもB以上のモンスターが当たり前に出てくるってことは、本当にここは危険度高いんだな。


「まあでも、強いって言っても俺の敵じゃないだろ」



 シャキンッ!



「ちょっと、そんなナイフ1本でなんとかなるようなモンスターじゃないわよ!」



「俺を甘く見るんじゃないよ、なんとかなるって」


 って言ったものの、一応強いらしいし、俺も戦ったことないから、警戒はした方がいいかもな。


「クマっころ! はじめましてだな!」



 ザシュッ!



『グァァォォァ!』



 は!? なんだこいつ硬すぎるだろ。全然斬れねえ。筋肉の塊じゃねえかどうなってる。


「おい! こいつうるせえし硬いし最悪だな!」



「モンスターと戦ってる時によそ見しない!」



「うるせえ! 早く黙れクマっころ」



 ザクッ! ザクッ!



「こいつマジでどうなってんだよ、ナイフで刺しても全然深くまで刺さらねえぞ」


 幸い動きは遅いからヒットアンドアウェイでなんとか立ち回ってはいるが、全然致命傷にならない。


「いい加減倒れろデカグマ!」



 グシャッ!!



『グゥ••••••』



 ドサッ••••••



 試しに胸に刺してみたが、心臓達したのか? ナイフってこんな簡単に心臓に達するんだな。


「ふう、ようやく倒れた。こいつ強くはないけど硬すぎて大変だな。ん? どうした、変な顔して」



「貴方、一体何したの?」



「何って、見てた通り。戦って俺が勝った」



「そんな事聞いてるんじゃないわよ。キングベアーは戦って分かったと思うけど、かなり皮膚や筋肉が硬くてまともに刃物が通らない。剣ですら。それをナイフで討伐するなんて有り得ないわよ」



 自分でも忘れてたけど、俺は魔人の能力引き継いでるんだっけか。そりゃ普通の人間の力じゃ無理だよな。


「確かに硬かったな、ナイフが刃こぼれしまくってる。こんなに硬いとは思わなかった」



「でも、そうね。貴方面白いから良いわよ、仲間にしてあげる。流石にキングベアーを魔法もまともな武器も使わずに、ナイフ1本で勝つ人なんて初めて見たもの」



「本当か!? じゃあこれからよろしくな? シェラ」


 とりあえず仲間になったぞ。これからもっと討伐で金稼いで。想像すると楽しくなってくるな。



「こちらこそ、セインだっけ、よろしく。1回ギルドに戻りましょう、パーティを組む時に申請しないといけないから」



「わかった、じゃあ戻るか」



  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「それで、パーティ申請をしたいのだけど、良いかしら?」



「えっ!? あぁ••••••はい、少々お待ちください」



 ザワザワ



 ん? なんか周りがうるさい。あー、なるほど。その場にいるだけで騒がれるやつが、全くの無名冒険者とパーティになるって言ってるんだもんな。そりゃザワつくよな。

 ただ、驚きの中に殺意のこもった視線が。確かシェラは強い上に綺麗だからパーティを組みたいって男が多いんだっけか。これから面倒くさいことになりそう。



「えー、シェラ様とセイン様なんですが••••••」



「どうしたの? 何か問題があったかしら」



 なんだなんだ、早速問題発生か?



「いえ、問題というか、セイン様はE級ですので、本当にパーティを組むという事でよろしいでしょうか」



 ザワザワ



「ええ、問題ないわよ。そのまま手続きを進めてちょうだい」



 俺がE級とかいうからさらに注目が集まった。しかも笑い声も聴こえるし。悪いなE級で。



「おい小僧、お前本当にE級でシェラとパーティ組むつもりか? やめとけやめとけ、お前じゃ足手まといになるだけだよ。ハッハッハ」



 お、なんだこのおっさん、初対面でいきなり喧嘩売ってくるとか悪い趣味だな〜。まったく、ここの連中はやっぱり物騒な奴が多いな。


「おっさん誰だ? 悪いんだけどモブのを覚える趣味はなくて。俺の記憶の中にあんたの顔と名前はないね」



「なんだとクソガキ、舐めてんのか!」



 フッ!


 ドスッ!



「人のこと舐めてるのはどっちだよ、急に喧嘩売ってきたと思ったら、こんな遅いパンチ当たるわけないだろ?」



「うっ••••••」



 ドサッ



 あれ? もしかしてやりすぎた? でも腹に拳1発。あ! また忘れてた、俺パンチも強いんだ。



「まあ、これは相手が悪いわね。セイン、これからはあんまり揉め事を起こさないでね?」



「わかったよ、多分ね」



 ザワザワ



「シェラ様、セイン様、お待たせいたしました。手続きが完了いたしました」



「ありがとう。それじゃセイン、改めてよろしくね」



「こちらこそよろしく、シェラ」

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