冬の川にダイブ
真冬の川は・・・。
それはあっという間の出来事でした。
私は舟のデッキに立ち、竿をかまえて、お客様に乗船を促していました。
乗船場から、お舟に乗っていただく時のこと、片手にコーヒーカップ、スマホをもたれた女性のお客様が、段差のある狭い桟橋でぽろりとスマホを落とされました。
それは、まさにスローモーション。
床に一旦落ち、セーフかと思った瞬間、斜めにはねて、ぽちゃり。
川底へすいーと落ちていきます。
あらら。
幸い、水面は透明度があり水位は浅い状態で、スマホの位置は分ります。
聞けば、生活防水タイプとのこと、ならば・・・。
網で掬いあげようともしましたが、うまくいきませんでした。
私は胸まである専用のゴム胴長をつけ、冬の川へと。
まあ、浅いので大丈夫。
しかしっ!
しゃがんで、手を伸ばすとなると、胸ぐらいまでとなり、水が入ってきます。
(ままよっ!)
思いきって、手を伸ばして底を探ります。
じんわり、水が入ってきます。
「はふっ!」
全身がびしょ濡れになり、冷水が身体を冷やします。
「ひえっ!」
一旦、立ち上がり、呼吸を整えます。
心臓がばくんばくんして、息が変にあがります。
(まずいぞ。これ・・・もう、一回)
今度は腕をしっかり伸ばし、スマホを掴みました。
お客様にお渡しします。
「ありがとうございます」
落とされたお客様はそう、返事はありましたが、どこか第三者的な感じに見えてしまいました。
気が動転していたのかな。
当然、このお舟は次の船頭と変わり、何事もなかったかのように出発しました。
(ふう)
私は、川からあがると、ずぶ濡れの服を着替え、次々の番手に備えます。
真冬の川は寒かとよ~気をつけてね~。
で、奥さんに言うと、
「そんなことまでせやんと、なにかあったらどうすると」
と、憤慨していました。
まあ、そうだよね。
自分の動きも軽率だったかなあ、もっと安全な方法があったかもと思った次第です。
激寒っ!