王子様のカゴの中
八歳の春。王家主催のお茶会が開催された。王子と令息令嬢の交流の場であり、貴族なら誰もが未来の側近と妃を決める会だと知っている。この日の為に、同年代の子どもたちは、一定の水準以上の躾をされているといっても過言ではない。
私、レイチェル・バウシュストは伯爵家でも中の下の家系に生まれた。のんびりした両親とマイペースな兄に放牧され、過分な教育はされず長閑に暮らしていた。
穏やかな日差しが心地いい午後。王家の紋章が封蝋された封筒を手に案内されたのは、城内の庭園。同じように招かれた子が一様に挨拶をしてくる。大人のミニチュアなだけの仕草に驚き慄いてしまう。ああ。こんなに天気がいいのなら、帰って芝生に寝っ転がりたい。
あちこちで談笑の花が咲き始める頃、庭園の奥を散策したいなとソワソワしていると、数人の大人を連れて王子が歩いてきた。背筋を伸ばし、堂々とした足取り。周りの子たちも大人びていたけれど、比ではない。貫禄が凄い。これが王族か、と呆気に取られていると、真っ直ぐ前を向い中央で立ち止まった。あっ。
「…かっこいい」
慌てて口を塞いだ。会場中の視線が一斉に突き刺さる。
お父様、ごめんなさい。
誰もが固唾を呑む中、沈黙を破るように小鳥の囀りが聞こえた。ああ。何て最期なんだろうと、よぎる走馬灯は、王子の声で掻き消された。何もなかったように挨拶をする王子が輝いて見える。こちらをじっと見、言いたげな子が数人いたが、同伴者に諌められた為、この場は事なきを得た。
王子との関係も横の繋がりも得ないまま、三日。楽しめればいいと、成果は求めていなかった両親に対しても申し訳ない気持ちは残る。昼食後、いつものようにクッションを手にソファーにもたれていると、一通の手紙が届いた。差出人は、フェリックス・ハウシュドルク。王子だ! あのときは、素敵な方だと思ったけれど、このタイミングで送られてくる手紙なんて、悪い予感しかない。折角のお茶会に水を差したと裁かれに決まっている。
「待っていたよ」
開けられたドアの中で、真っ先に出迎えてれたのは、王子本人だった。今日もかっこいい。お茶会のときよりも少しだけ、ほんの少しだけ砕けた格好もよく似合っている。……。帰りたい。会いたくない。失態が甦ってくる。心臓がうるさい。王子のか格好と、言い渡されるであろう罪状、どちらが原因だろう。
恐る恐る視線を合わせると、王子は微笑みを浮かべ、席に着くよう促した。スマートだ! 兄にも是非見習って欲しい。王子が着席するのを見届けてから腰を下ろす。うわっ。座面がふかふか。姿勢を正すように、わざと重心を動かしてみる。
「ふふ。気に入ったの?」
「はい。とても柔らかくて、心地よくて、深く沈まなくて。不思議です」
「気に入ってもらえたなら何よりだ。今日来てもらったのはね、君に伝えたいことがあるからなんだ」
ついにきた。
王子の優しい笑みに、つい和んでしまっていたけれど、ここからが本題だ。
「そんなに緊張しないで、よく聞いてね。婚約者候補の一人に君はなったんだよ」
「……婚約者ですか?」
「そうだよ。君を含めた三人は、特別な教育を受けてもらうことになった」
え。嫌だ。
王子に会えたのは嬉しい。かっこいいし。優しく話しかけてくださるし。かっこいいし。きりっとした表情もよかったけど、柔らかい笑顔もいいし。かっこいいし。遠い世界から眺めているだけでいい。王子の婚約者なんて冗談じゃない。何かの間違いで選ばれたら妃! 無理! お茶会での視線を思い出してしまう。注目されたくない。将来は、領地でのんびり暮らすと決めている。両親も兄も許してくれている。
「教育は厳しいと聞くけど、もし理不尽なことがあれば教えて。君には、安心して授業を受けてもらいたい」
やはり厳しいんだ。帰ったら辞退できないかお父様に相談してみよう。
「そうそう。王命だから」
「えっ」
「断るつもりでいたの?」
「そんなことないです」
「そう? これからよろしくね」
ああ。光が降り注ぐ。今日一番の笑顔をいただきました。ずるい。断れるわけがない。王命だから断れないんだけれど。断れないなら……、脱落させられるまでだ。
成績不順を目指したものの、どうも負けず嫌いだったようで、出された課題に全力で取り組んでしまっている。手を抜いてしまえ、わからないフリをしろ、と囁く私を許せない私がいる。私以外の候補者、公爵令嬢と子爵令嬢の成績が気になる。教えてはもらえないから余計に気になる。初めての授業の日、二人と上手くやっていけるか気を揉んだが杞憂に終わっている。授業は、教師と生徒の一対一。それぞれ個室が設けられている。
十五歳の夏。お父様から、立太子の儀が行われたと聞いた。日程は明かされず、公示は少し遅れてくる。建国から続く決まりだ。
王子が立太子されたからと言って、私の生活に変わりはない。授業が終わり、いつものように城を歩いていると、視線の先に圧倒的なオーラを放つ人物が現れた。
「そのままでいいよ」
膝を折るところを制止された。七年ぶりに間近で見る王子、王太子殿下は頭が一つ上にあり見上げる形となる。噂では、剣の腕も立つと聞いている。よくよく見ると、随分体格も変わったように感じる。すっかり男の人みたい。
「レイチェルだよね。今から帰るのかな」
「はい」
「そう。わかっていたら空けていたのにな」
「はい?」
王子は何やら呟くと、じゃあまた、と来た道を戻っていった。
翌日。教室に入ってきた教師から、王太子殿下と過ごす時間が月に一度出来たと告げられた。
偶然廊下で出会った日から六日。王太子殿下と庭園のベンチに腰掛けている。
「呼べません」
「本人がお願いしているのに?」
「恐れ多いです」
「僕は伴侶となる人には、名前で呼んで欲しいんだ」
「でしたら、未来の御正妃様にお願いし」
「レイチェルは婚約者になるつもりがないのに、授業を受けているの?」
「それは。そんなことございません」
痛いところを突かれた。授業で得る知識はいつか役に立つ気がして、積極的に質問をしている始末。結局、逃げ出すタイミングを掴めないまま、ズルズルと時を重ねている。候補者だという自覚もないくせに。
「名前で呼んで?」
「……かしこまりました」
「仰々しいのもやめて欲しいな」
「それは無理があるような気がします。私は、あくまでも候補者の一人に過ぎません」
「もっと仲良くなりたいんだ」
「わかりました。……、フェリックス殿下」
「はい」
フェリックス殿下は破顔してみせた。かっこいいのに可愛いってどういうこと。
「破壊力抜群ですね。耐えられそうにありません」
「なにそれ」
フェリックス殿下は笑い出してしまった。予想外のことに驚いてしまう。王太子とは思えない親しみやすさを感じ、無性に嬉しくなる。お腹を抱える王子が可笑しくて、擽ったい。瞬間。風が吹き、下ろしていた髪が宙を舞う。他の二人も、同じような時間を過ごしているのだろうか。
「フェリックス殿下。お疲れ様です。また強くなったのではないですか? 向かうところ敵なしですね。かっこよ過ぎます」
フェリックス殿下にタオルを渡す。汗を拭う仕草も、稽古を続ける騎士を眺める横顔も、大人の男性だ。何度でもドキドキしてしまう。
十六歳になると、授業が減った。
十七歳になると、二人で公の場に出るようになった。候補者は、周囲に見定められているのだろうか。
「そうだ、レイチェル。僕の婚約者は君で確定だ」
確定とは。頭がついていかない。フェリックス殿下の婚約者。私が。
「今度の夜会で正式に発表するよ」
「私で、私で、いいのですか」
「ずっと教育を受けてきた結果だ。代わりなんているはずないよ」
完全に逃げそびれた。
文句の言いようもない。脱落を目指していた私は、覚悟もないままに学び続けてしまっていた。
「レイチェルをエスコートするのは僕だ」
「あの……。足を踏んでしまったらごめんなさい」
「レイチェルのダンスはお墨付きだと聞いているよ」
「フェリックス殿下を前に、平常心でいられる自信がないです」
「なにそれ。慣れてもらわないと困るよ。僕たちは婚約者で、夫婦になるのだから」
腰に腕を回され、引き寄せられる。えっ。ちょっと。広くてかたい胸の中、離してもらえそうにない。どうしようかと逡巡していると、フェリックス殿下の鼓動が聞こえる。まさか。
「ね。僕だって緊張している。やっとレイチェルに触れられるのだから」
フェリックス殿下でも緊張するんだ。ん。やっと?
「外だからこれで勘弁してあげる」
外。今いる場所を思い出し、一瞬で血の気が引く。剣と剣が交わる音、騎士団長の怒声。消えていた音が聞こえ始める。急いで辺りを見回す。
「顔が真っ赤だよ。可愛い」
「かっ可愛いだなんて」
「僕のレイチェルは可愛いよ」
「え」
「僕の婚約者は、ずっとレイチェルだけだ」
「フェリックス殿下。それってどういうことですか」
婚約者候補は三人。他の二人の様子は何一つ教えてもらえなかったし、直接お会いしたことはないけれど、馬車をお見掛けしたことはあったし、ダンスの練習などで場所を移動した際は、先程まで誰かがいただろう空気があることもあった。どういうこと?
「明後日には、夜会のドレスが届くから。試着してみてくれるかな。細かいところを調整しよう」
「ご用意してくださったのですか」
「当然だよ。気に入ってくれるといいな」
「当然です。そんな失礼なことはしません」
「失礼だからじゃ困るんだけど」
「え?」
「ううん。何でもないよ」
フェリックス殿下は私の頭を撫でると、打ち合う騎士たちの元へ戻っていく。
フェリックス殿下は、今日もかっこいい。優しい。かっこいい。剣を振る姿は凛々しい。強い。かっこいい。包み込まれるような笑顔が好き。
将来を領地で探せなくなったことは惜しいけれど。無自覚にズルズルとここまできてしまったけれど。フェリックス殿下と離れずに済むのは、嬉しい。学んだことはそのまま妃になる為に……。これでよかったのかな。
***
八歳の春。無駄なことをするものだ。未来の伴侶なんて誰でもいい。両親が選んだ人物に間違いはないだろうし、選ばれた令嬢は、もれなく厳しい教育を施されるのだから。
俺は俺で毎日の授業で手一杯。お茶の時間くらい、ゆっくりと過ごしたいのに。窓から外を見下ろすと、招待された令嬢たちが、同伴者とともに庭に集まっている。彼らも、それぞれの家で躾けられてきたのだろう。型にはまった仕草にうんざりする。なかでも令嬢たちは、大人と同じようにお互いを値踏みし合っていて呆れてしまう。王侯貴族の結婚は政略結婚。悪夢でしかない。
時間だと声を掛けられ会場へ向かうと、作り笑いを擦り抜け、会場の中央へ歩く。
「…かっこいい」
何事かと思った。声の方を見れば、一人の令嬢が必死に口を塞いでいる。彼女か。静まり返った会場は、彼女に視線が集まる。大袈裟にすることはないのに。小鳥の囀りと同じ、可愛い声だった。何事もなかったように招待客への挨拶を済ますと、途端に数人の令嬢に囲まれる。やれやれと周りを見渡すと、少し離れた所で同伴者にせっつかれている者もいる。大変だとは思うけれど、同情はない。教師と何度か市井を回ったことがある。あと半年もすれば、両親と教会の孤児院を訪問するようになる。それぞれの場所で違った大変さがあるのだと聞いている。目で見て、耳を傾け、感じとることで始めて、国を築けるのだと。
一緒に築いていくのなら、先程の彼女がいい。彼女となら、退屈せず共に歩めそうだ。そうと決まれば、当たり障りなく今を終わらすまで。グラスを手に同伴者と立ち尽くしている彼女をそっと見る。
「待っていたよ」
家格や派閥に問題はなかった。幸運にも王妃自身、格式ばったことには懐疑的で、彼女の振る舞いを問題視することはなかった。ただ、自由気ままに振る舞っていいわけではなく、妃教育には礼儀作法もしっかり組み込まれている。少し窮屈な思いをさせてしまうのは申し訳ないか、引き返すつもりはない。
席に着いた彼女は、目を見開くと椅子の座り心地を確かめている。自由だな。このままの彼女が欲しい。
「ふふ、気に入ったの?」
「はい。とても柔らかくて、心地よくて、深く沈まなくて。不思議です」
「気に入ってもらえたなら何よりだ。今日来てもらったのはね、君に伝えたいことがあるからなんだ」
彼女の教室は、同じ工房の家具で揃えてもらおう。これから彼女は城へ通うことになるのだから。
「そんなに緊張しないで、よく聞いてね。婚約者候補の一人に君はなったんだよ」
「……婚約者ですか?」
「そうだよ。君を含めた三人は、特別な教育を受けてもらうことになった」
予想外だという顔をする。一つも喜んだ様子がなく、むしろ愉快になる。待ち受ける道は決して平坦ではないが、過度な我慢や無理強いは絶対にさせない。彼女そのものがいいのだ。どこか上の空になっているところに念を押す。
「そうそう。王命だから」
「えっ」
引き受ける気はなかったのか。王命なんて嘘だ。過去、辞退を申し出た者はいないらしいが、罰せられることはない。しかし宣告してよかった。彼女なら簡単に辞退を告げてきそうな気がする。心の内で、安堵の溜息を吐くと、壁際で控える従者に頷く。
不本意な筈の妃教育。彼女の成績は有難いことに、他の二人より少しばかり上だった。口さがない連中を黙らせやすくなる。心配していた礼儀作法も難なく乗り越えているようだ。
立太子の儀に彼女の姿はなかった。当然といえば当然だ。俺には兄弟がいない為、継承権争いに巻き込まれることは少なかったが、慣習を変えることは出来ない。
公務の都合で、教室の近くにさしかかる。偶然でも会えればいいと角を曲がると、静々と歩く令嬢が立ち止まる。
「そのままでいいよ」
膝を折ろうとした彼女を制止する。
「レイチェルだよね。今から帰るのかな」
「はい」
「そう。わかっていたら空けていたのにな」
「はい?」
彼女は首を傾げる。膝を折る大人びた姿も魅力的だったが、変わらない愛らしさを残していることに愛おしさが高まる。一緒に過ごしたい。
一ヶ月に一度、彼女と過ごせるようにし、待ち侘びた初日。今日の願いは一つ。
「呼べません」
「本人がお願いしているのに?」
「恐れ多いです」
伴侶には名前で呼んで欲しいのだと畳みかける。無論、関係性だけで名前呼びを許す気などない。彼女だから呼ばれたいのだ。稀に許可もなく不躾に呼んでくる令嬢もいるというのに、彼女は頑なに首を縦に振らない。ましてや未来の妃にお願いしろと言ってきた。
「レイチェルは婚約者になるつもりがないのに、授業を受けているの?」
彼女は黙り込んでしまった。変わらない彼女は、変わっていない。わかっているつもりだったが、現実を突きつけられるようだ。もっと仲を深めたい。調べ聞かされた生い立ち、日々の報告事項ではない。彼女が見たこと、聞いたこと、感じたことを知りたい。フェリックス、とその声に呼ばれたい。
「名前で呼んで?」
「……かしこまりました」
「仰々しいのもやめて欲しいな」
「それは無理があるような気がします。私は、あくまでも候補者の一人に過ぎません」
「もっと仲良くなりたいんだ」
「わかりました。……、フェリックス殿下」
望んだのは俺なのに、予想外のことに驚いてしまう。レイチェルと初めて向き合えた気がする。無性に嬉しく、擽ったい。
風が吹き、レイチェルの髪が宙を舞う。その一筋さえも手にしたい。
「フェリックス殿下。お疲れ様です。また強くなったのではないですか? 向かうところ敵なしですね。かっこよ過ぎます」
レイチェルからタオルを受け取り汗を拭う。やっと二人で公然の場に出られるようになった。俺を見上げるレイチェルは、一段と立ち居振る舞いに磨きがかかったことで、城内でも声を掛けられるようになったらしい。流石に俺が横にいるときに近寄る愚か者はいないが、馬鹿はどうしてもいるらしい。まーあと僅かだ。
「そうだ、レイチェル。僕の婚約者は君で確定だ」
理解が追いつかないらしく、レイチェルは首を傾げる。癖と言ってもいい仕草は、俺だけに見せてくれるものだ。厳しい教育を受け続け、城を出入りする者からは、妃に一番近いと囁かれているにも関わらず、出会った頃の面影を色濃く残す彼女を、やっと手に入れられる。しかし、彼女から同意は感じられない。
「私で、私で、いいのですか」
「ずっと教育を受けてきた結果だ。代わりなんているはずないよ」
のらりくらりとしてきたのは彼女だ。重ねた時は戻らないのだ。
「レイチェルをエスコートするのは僕だ」
「あの……。足を踏んでしまったらごめんなさい」
「レイチェルのダンスはお墨付きだと聞いているよ」
「フェリックス殿下を前に、平常心でいられる自信がないです」
「なにそれ。慣れてもらわないと困るよ。僕たちは婚約者で、夫婦になるのだから」
腰に腕を回し引き寄せる。離したくない。固まってしまったレイチェルは、はっと気づいたように顔を上げる。
「ね。僕だって緊張している。やっとレイチェルに触れられるのだから」
僅かな甘さと爽やかな香り。潤んだ瞳。染まる頬。驚きで開いたままの唇。こんな場所で、勘弁してほしい。
「外だからこれで勘弁してあげる」
自戒の念を込める。ここがどこかすっかり忘れていたレイチェルは、キョロキョロ見回すと、恨めしげな目を向けてきた。可愛いだけだ。
「顔が真っ赤だよ。可愛い」
「かっ可愛いだなんて」
「僕のレイチェルは可愛いよ」
「え」
「僕の婚約者は、ずっとレイチェルだけだ」
「フェリックス殿下。それってどういうことですか」
ごく一部しか知らされていないが、俺の婚約者は、始めからレイチェルだけだ。他の令嬢も、同じ日程で同じような教育を受けているから疑う者はいない。公爵令嬢は、西国の第二王子の正妃になることが決まった、と二ヶ月後に発表される。子爵令嬢は、一ヶ月後に商家の嫡男と結婚。レイチェルは、それぞれ良き縁があったと思えばいい。
「明後日には、夜会のドレスが届くから。試着してみてくれるかな。細かいところを調整しよう」
デビュタントのドレスは俺が贈った。レイチェルは、両親からの贈り物だと信じている。あのときの採寸表通りで問題ない筈だ。それでも念には念を入れ、最高の状態で仕立てたい。アクセサリーや靴も。俺以外からの贈り物などいらない。魅力でもあるが、レイチェルは多少鈍感なきらいがある。俺からの贈り物を、失礼にあたるから気に入らないわけはないと言ってのけた。俺に対して失礼かなんてどうでもいい。俺を、俺からを喜んで欲しい。
「え?」
「ううん。何でもないよ」
レイチェルの頭を撫で、再び騎士たちの訓練に参加する。
ああ。結婚式は三ヶ月後だと伝えていなかった。最短に縮めた割には、待たされることとなってしまったが、あと少し。夜会が終われば、そのまま城に住まわせる。




