第9話 真冬の怪奇?(2)
《ガシャン、ガシャン》
「はぁ、はぁ」
《ガリガリ》
「うぅ、ううう」
《ズルズル》
「はぁ、はぁ」
《ガシャン、ガシャン》
「うぅ、ううう」
《ガリガリ》
「助けて、助けて」
《ガシャン、ガシャン、ガシャン》
「み、水……。水をください……」
と、先ほどの金属と金属が当たり、擦れる音と──地面を何かしらの金属を引きづる音に混ざり合い、人の声……。
それも女性の声音で荒い息遣いや呻り声……。
僕なのかな? 誰か彼女の知り合いがこちらにいるのかな? 女性は水をくださいとまで言いつつ異常音……。
まあ、多分、怪音と言う奴を出しつつ、僕の方へと向かってきている気がする。
だから僕の口から自然と。
「南無……」と「南無」で「御先祖さま助けてください」と。
僕は恐怖の余り、御経まで唱え、祈り始め、終われば御先祖さまに高名な西〇願寺の御坊さまがいるから、助けてくださいと嘆願をしだ。
でッ、その次は?
「悪霊退散! 悪霊退散ー!」
僕は多分……と言うか? 先ず間違え無しに僕の背後に迫る悪霊……。お化けさまに対して御払いも試みる。
「……頼むから僕の許へとこないで! こないでください! 物の怪さま! 悪霊さま! 幽霊さま!」とね。
僕は自分の背後に迫るお化けに対して、なりふり構わず嘆願、命乞いをしてみる。
しかし彼女はね?
《ガリガリ》
《ガシャン、ガシャン》
「うぅ、ううう」
《ズルズル》
《ガリガリ》
「く、苦しい……。苦しい……。だ、誰か助けて……。助けて……」
《ズルッ》
「み、水……。水をください……」
彼女と言うか、お化けさまとでも言った方はいいのかな? まあ、彼女は怪音を出しながら呻り、命乞い、水をくださいと言いつつ、僕の背後へと、彼女はどうしても迫ってくるから。
「神さま! 仏さま! 女神さま! 哀れな子羊である僕のことを助けてくださいお願いします! お願いしますよ~! 僕の背後にお化けが近づいているので、何とかしてください! お願いします~~~!」
僕はこの通り神頼み……。
そう僕は箱詰めの作業を中断……。自分の手を休め僕は、胸の前で両手を合わせ、漆黒の夜空だろうがお構い無しに……。
僕のこの大事な二つの瞳に月や星すら映らないほどの漆黒色に染まる月夜が見えない夜空だけれど。
僕は天を仰ぎつつ神頼み──。神さま、仏さま、女神さまへとまた祈りを捧げ。
「神さま、哀れな僕のことをお化けから救ってください、お願いします……」と。
「南無……、南無……、南無……」
僕は御先祖さまに高貴な御坊さまいるだけあって御経を唱えることもできるから、仏さまに御経を唱えつつ救いを求める。
この後も神さま、仏さま、女神さまへと何度も魔除け! 悪霊退散! を嘆願し続ける。
しかし滅多と仏壇に向かって御先祖さま達の供養をしない僕だから、神さま、仏さま、女神さまの御利益を得て、祈願達成! 僕は安易に陰陽師か、霊幻道士、悪魔祓いに変身などアニメやマンガの主人公……。
デビ〇マンやド〇ロンえ〇まくん、ゲ〇ゲの鬼〇郎みたいになれる訳でもないから。
「うぅ、ううう」
《ガリガリ》
「あぁ、あああ」
《ズルズル》
と呻り声……。
そして地面に当て──鈍い金属音を更に怪音をだしながら僕の背後へと落ち武者の幽霊だと思われる姫武将の霊……。
そう、この農協が建っている場所はね、毛利元就公が幼少期に過ごした猿掛け城や本城としていた郡山城……。
その他にも毛利両川の武の要である、吉川元春公の小倉山城や館の遺跡も近隣にある、毛利氏ゆかりの地だからね
この辺りは沢山の兵士達が戦死している場所たがら、沢山の地縛霊もあちらこちらに居るとは思われる。
実際場所は、この辺りではないけれど、僕は以前農協の展示会で仏壇屋さんから聞いた怪奇話……。
広島市は祇園──。安芸の武田氏の居城があった、武田山にある団地の一区画に住む御客様の家に、顔に刀傷を負った落ち武者の霊が家のトイレに出るらしいと言った話も聞いたことがある。
だから僕は怪音を聞きつつ、そんな怪談話やその他にも自分が知る怪談話がね。
僕の脳裏をグルグルと回るから、本当の怖くて仕方ないから。
僕は自分の顔色を蒼白させながら震え慄きつつ、背後から迫る物の怪の対処方を思案するのだった。
◇◇◇




