第61話 広島と言えばお好み焼きでしょう(3)
家のアパートの近所のおばさんと言うか? この辺りの地域は僕の地元だからね。僕が中学生の頃からよく知っているお好み焼き屋のおばちゃんだから、他人の家庭の事情と言う奴を気にもしないで踏み込み、尋ねてきた。
「えっ!」
僕はおばちゃんの問いかけに対して驚嘆すれば。慌ててエルの方へと視線を変えると。
エルの方も驚愕した顔で『どうしよう?』とでも言いたい様子で僕のことを見詰めてきたから。
僕は『う~ん』と瞬時に思案をして、《《ある言い訳》》を閃いたから。
「……おばちゃん、実は、エルの奴はこう見えても日本人とソ連の人とのハーフでね、家の遠縁にあたってさ。よく家の田舎に遊びにきていてさ、その時に二人で結婚の約束をしていてね、お互いが二十歳を過ぎたから結婚をしようか? と言った話しになり。昨晩仕事帰りに俺が呉まで迎えにいったんだよ……。なぁ、エル」と。
僕はエルにウインクをしながら話しを合わすようにとジェスチャーやサインはVを送る。
「えっ! あっ、そうなんです……。一樹とは幼い頃から結婚の約束をしていて。昨晩私が一樹へと連絡を入れ、押しかけ妻としてきたんです……。今後は主人共々よろしくおねがいします」と。
言語に長けたバイリンガルのエルは、『日本語よくわかりません~』と両手を上げるジェスチャーをする訳でもなく、ペラペラと会話をするものだから。
お好み焼き屋のおばちゃんも、エルがハーフだと告げれば『なるほど』と納得をしてくれた。




