第35話 昭和のアパートだけれど勇者様は驚愕!(3)
「えっ! エル! 俺が昨晩から何度も言っているけれど。向こうの魔王とこちらの世界の俺は元々別の世界に一体、一体ずついて、別の生活をしていた訳で……。ただ今回に限っては、勇者の君をあのまま城で暴れさせる訳にいかないから、向こうの俺が君を自分達の城と世界から強制的に追い出したいから。俺と一時的に同一化して、この世界へと強制的に転移をさせただけだから。僕と魔王はまた別々の人へと戻っているから、そんな扉などない……。だから俺は自分の食事を自分で作る。わかったかな、エル?」と。
僕は出来たばかりの出し薪卵を包丁でトントン! と切りながらエルへと説明をした。
しかしエルは僕の説明を聞いても「うそ」と「うそつき」と直ぐに言葉を返してきて。
「──じゃ、陛下はまた別れて、別の人へと戻ったと言うけれど。何で陛下は、そんなにも魔力や体力が有り余っている訳?」と尋ね。
「──陛下の今の魔力は、昨晩私が争ったあなたの魔力よりも高く。勇者である私を凌駕している訳? だから昨晩の私は目を覚まして直ぐ、あなたに勝てないと悟ったから降服と命乞いの嘆願をした訳だから。陛下、あなたも私に噓偽りを言っては誤魔化せないでくださいませ」と。
エルは怪訝な表情で僕へと告げてきたけれど。
僕はエルに嘘偽りを言っているつもりはないから。
「……でも俺、エルに嘘偽りを告げているつもりはないから、マジで信じてね。奥さま」と。
僕は苦笑いを浮かべつつ言葉を返せば。
「エル、朝食ができたから食べようか?」
僕は微笑みながら麗しいエルフと呼ばれる精霊さまの奥さまへとおかずが乗っかった皿を夫婦分……。お皿二つを両手に持ち、コタツへと運ぶのだった。
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