第56話 エルフな、きよしこの夜(6)
「よ、洋子って……。あんな大きな熊や猪を追い払えるぐらい強いんじゃねぇ。ママは知らん。知らんかったぁよ……。じゃ、もしも? ママと洋子が親子喧嘩したら。ママが洋子にしばかれてしまうねぇ」と。
まあ、相変わらずと言うか? 家の奥様だけはと言うか? 美紀の奴は相変わらず抜けた事、変わった事を告げる。呟くなと、僕は思いながら美紀に対して「あのなぁ、美紀?」と、呆れ声で問いかければ。
「あっ! 一君がまた私の事をバカにし始めだした。私は一君の娘を産んで必死に守り育ててきちょぉるのに。ほんまに酷いんじゃけぇ。一君だけは」と。
これも我が家のいつもの如く調子、振る舞いと言った感じでね。と、言うか? 僕と美紀との関係は、二人が最初に出逢い。お付き合いを初めてからもいつもこの調子でね。僕よりも年下であり。後輩でもあった美紀の事を僕は、妹のような扱いで接するところ、癖が中々抜けないところがある。
だから僕は、自身の妻から脹れ顔。不貞腐れ……。
そう、自身の頬を可愛く膨らませながら不満を漏らす。呟く。嘆かれる事も多々あるのだ。
まあ、僕と美紀とで、こんな感じの夫婦漫才をしていると。
「ママ、シッ! みんな……。動物さん達が……。シッ! と、言った顔をしているよ。ママとパパが煩いから。エルママの歌声をちゃんと聞けない。聞きとれないからと、不満のある顔で二人のことをジロリと睨んでいるよ。だからママもパパも静かにしてお願いだから」と。




