第55話 クリスマスイブの夜(4)
「一樹~! 今私の事……。子供染みた私の様子を見てあなたは、溜息をついたじゃろぅに」と。
翔子が後ろ。カマロの後部座席から、夫の僕へと、自身の頬を膨らませながら不満を漏らしてきたらね。
「いいや、違う。違うけぇ。翔子。お前の勘違いじゃぇ……。俺は。俺はね。何も翔子。お前のことを呆れた奴じゃと思ぅちょりゃせんからのぅ。翔子、お前の勘違いじゃけぇ」と。
僕はバックミラー越から後方──後部座席を、上目遣いの視線で、チラチラ見ながら告げれば。
翔子の奴は相変わらず、不機嫌極まりない顔を、表情を、自身の頬をプゥー! と、フグのように膨らませながら。
「本当に、本当何ねぇ、一樹?」
と、尋ねてきた。
だから僕は再度、自身の頬を膨らませ拗ねる妻。翔子へと。
「ああ、ほんまに。ほんまじゃけぇ」
と、苦笑いを浮かべ言葉を返し、誤魔化し続けながら。クリスマスイブの夜──モミの木森林公園にある。モミの木のクリスマスツリー仕様に飾られている。モミの木のモニュメントを見て、見ながら。家族みんなでクリスマスイブを楽しむ為に、カマロZ28を更に勢い。素早く走らせるのだった。
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