第13話 宇宙人なのかな?(1)
冬の夜、広島の田舎町の農協前の駐車場……。
冷たい空気が鼻を刺すけど、どこかで聞こえる風の音が、まるでクリスマスソングみたいに感じられて、心の奥がじんわり温かくなる。
「ゴクゴク」って、彼女がコカ・コーラを飲む音が車内に響いた。
俺が自動販売機で買ったコーラを飲んでいるのは、マツダのボンゴの後部座席で横になっている彼女だ。
「なんでこんな田舎の、しかも真冬の夜に?」
辺りは中国山地の中腹……農協の購買部の灯りがぼんやりと漏れていて、冬の空気は澄み切っている。星がいつもより近く感じられた。
彼女は洋式の甲冑を身に纏い、まるで異世界から迷い込んだ姫武将みたいだった。
最初は幽霊かと思ったけど、吐く息は白くて温かい。
抱きかかえると、冷たい甲冑の下からちゃんと体温が伝わってきた。
「生きてるんだな、これが」
山口の岩国にはアメリカ軍の基地がある。
もしかしたら、アメリカ兵の誰かが趣味で甲冑を着て迷子になったのかもしれない。
そんなことを考えながら、僕は彼女の小さな口にコーラを注ぎ続けた。
でも、ちょっと目を離した隙に、コーラが口元からこぼれてしまった。
「あっ、やばい!」
慌てて拭こうとしたけど、彼女の髪や耳、喉元がびちゃびちゃに濡れてしまった。
僕の相棒、マツダ・ボンゴはエンジンをかけたばかりで、まだヒーターの温かい風は出ていない。
真冬の冷たい風だけが車内を吹き抜けている。
「風邪ひいたらどうしよう……」
心配で顔色が変わるのも仕方ない。
でも、困ってばかりもいられない。
僕は車内を探し回った。
「タオル、タオルはどこだ?」
後部座席も荷台も見たけど、見つからない。
腕を組んで、考える人のポーズ。
「お昼に使ったタオル、どこに置いたっけ?」
「うーん、うーん……」
彼女の髪や頬はまだ冷たく濡れている。
コーラはまた口の端から垂れてきて、僕は焦りが止まらなかった。
「やばい、やばい、どうしよう?」
真冬の冷たい風が吹く車内で、彼女が風邪をひいたらと思うと、余計に慌ててしまう。
それでも、僕は諦めずにタオルを探し続けた。
「タオル、タオル、タオルはどこだぁ?」
考える人のまま、僕はまた車内を見回す。
彼女の髪や頬が濡れたままなのが気になって仕方なかった。
◇◇◇




