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序章

序章


「おい!起きろ!」


痛い。何かにたたかれて俺は目を覚ました。


「うう・・・・・・なんだ?」

「何ボサっとしてるんだ。目の前にいるんだぞ!敵が!」


敵?敵って誰だ?俺は今どこで何をしている?ここはどこだ?そもそも、この刀を持ったおっさんは誰だ?

俺はとりあえず質問をすることにした。


「敵?敵って誰だ?」

「はあ?何言ってるんだ?見ろ!あいつだよ!」


おっさんはそういうと俺の首根っこを掴み、前へ突き出す。不意打ちされた俺は反射的にバランスをとり、顔から地面に激突するのを防いだ。いきなり何をしやがるんだよこいつ。俺が文句を言おうと後ろを振り返った時、前の方から怒号が聞こえ、俺はまた前を見た。


「僕が正しい!全部!お前たちは間違っている!私は混沌をもたらし世界に秩序を与える!俺こそがその権利をただ有しているんだ!」


混沌?権利?何のことだ?よくわからないが、目の前の人物がとてつもない怒りを発露しているのだけは如実に感じ取れる。ただならぬ怒りだ。この世の全てを恨んでいるようだ。


「だから僕の前から消えろ!灰に染まれ!」


そういうと怒っている奴は手から灰色の砂を固めとばしてくる。ん?これ俺にあたるんじゃないか!?俺は咄嗟に避けようとしたが、体が何故か言うことを聞かなかった。やばい、このままじゃ当たる!当たってどうなるかは分からないけどやばい気がする!俺は咄嗟に目をつむった。


「___守りたまえ!シーウォール!」


ん?何だ灰が飛んでこない?俺はおそるおそる目を開けると目の前には水のカーテンがあった。その中にいくつか灰が浮かんでいた。なにやら分からないが、当たらなかったようだ。


「行く!___!合わせて!」


誰かがそう叫んだ。何かの名前を言っていた気がするがよく聞き取れなかった。にもかかわらず、俺はその声の主に呼ばれた気がしたので、武器を構える。・・・・・・武器?俺の手にはいつの間にやらメイスが握られていた。初めて見るものだが何故か手になじんでいる気がした。そして、それを見た瞬間、目の前のあいつを倒さなければならない気がした。そしてそれに気づいたときにはもう口と体が勝手に動いていた。


「分かった!」


俺はメイスを掲げ突撃する。敵は攻撃をしかけるが俺はそれを気にせず突き進む。なぜなら、仲間が守ってくれるからだ。灰弾は全て弾かれ俺を邪魔するものは何もなかった。そして敵と俺の距離が近くなり俺は肉薄した。


「うおおおおお!!」


俺は敵めがけてメイスを振り下ろし_____



「おい!起きろ!」


痛い。何かにたたかれて俺は目を覚ました。



「何ボサっとしてるんだ?速く起きろ!」

「ん?ああ?え?ここどこ?」



「何ボサっとしてるんだ?誰が寝て良いって言ったんだよ。おい!」


そう言うと蹴りが俺の腹に炸裂した。


「うう!痛い……。」


俺は腹を押さえて悶える。


「ギャハハハハ!おもしれぇ!やっぱ——が——を蹴る所見るの最高だわ!」

「やりすぎじゃな〜い?良くないよ〜——くん。」

「いやいや——。コイツにはこれ位が良いんだって。なあ?」


——が俺にそう呼びかけてくる。うるさい。折角良い所だったのに俺を起こすなよ。


「なんだ?その目。生意気だなッ!」


そう言うと——は再び俺の腹に蹴りを入れた。再び俺は悶える。


「ねえねえもう飽きちゃった。ねえ皆、これからあそこいこー。」

「ん?ああ分かったんじゃ行こうか——。」

「うん——くん。」

「おいおい、俺も連れてってくれよ〜。」


そう言うと——達は痛みを抱える俺を他所に何処かへ去っていった。


「クソ……。」


俺だって夢に中じゃ世界を救える人間なのにいつだって現実はこうだ。反吐がでる。俺が何したって言うんだよ。ただ隅で静かに勉強してるだけの俺がお前らに何したんだよ。


たまに会話に入ったこともあったけど、それくらいじゃないか。ここまでする必要はないだろ。俺は恨みながら散らばった自分の荷物を片付けて塾へ向かう準備をした。すると、頬に冷たい何かが打ちつけてきた。


俺は上を見ると曇天の空から水が落ちてきた。雨のようだ。最悪だ。傘は持ってきてないし、予備の傘も数本折られてからは学校にはもう置いてない。俺はずぶ濡れになりながら道を歩いた。


親の期待に応えるため。親に振り向いてもらうため。アイツらを見返すため。俺は塾へ行きあの有名大学へ行く。ただそれだけなのに、何でこんなに毎日辛いんだ?神が見ているって言うんだったら何だって俺をこんな風に人生クソにしやがった。クソが。


俺は心の中で悪態をつき石を蹴る。カラカラと音を立てて転がる石を俺は追いかけて怨みを込めてもう一度蹴ろうと走り出した時だった。横から甲高い音が聞こえたかと思うと、次の瞬間、俺は宙をまっていた。そして強烈な痛みが身体中に走ってきた。あまりの痛さに声をあげようとしたが、声が出なかった。そして、急激に目の前が暗くなって自分の様々な記憶が浮かび上がる。


ん?なんだこれ。走馬灯ってやつか?どうやら俺は何かに轢かれて死ぬようだ。


ハハ。笑えるな。俺の目蓋にはさまざまな記憶が蘇る。親に虐められていることを話したらお前が弱いからだと言われた時。会話に入り込んだ時の嫌そうな——らの目。そしてそれを見て見ぬふりをする教師。合格ラインが足らんといい起こる塾講師。ただひたすらに毎日ノートを書く俺の手。良い大学の名前が映し出された携帯の画面。


死ぬ前だって言うのに何も良い思い出がない。いや、一つだけあった。俺が架空の世界の主人公となって世界を救った時。これだけは良い思い出だ。でもそれ以外は全部クソだった。


あーあ。せめて次からは良い人生を送れるようになれるといいな。


俺はそう思いながら意識が薄れていくのを感じた。






「おーい。起きて!」


「ねえ?聞こえてるよね?」


うるさい。静かにしてくれ。


「いやいや、そうは行かないんだって。時間がないからさ。」


時間?何の?


「キミの魂が消滅するまでの時間だよ!ジ・カ・ン!」


はぁ?消滅?


「キミ死んだんだよ。だから魂だけになってるの。このままだと消えちゃうよ?」


おいおい。天国も地獄もないのかよ。ただ消えるだけ?そうか、ならわざわざ起こすな。もうどうでもいい。このまま消えるから。静かにしろ。


「うんそうしたいよね?でも、生き返る権利。あるよ?」


生き返る権利?転生ってやつか?いや、やっぱやめだ。どうせ記憶を引き継いで異世界行ってもラノベみたいに行くわけない。だからいいわ。このまま消えさせてくれ。


「あーそう悲観的にならないで!ボクの力を少し分けてあげるから転生しない?」


ボクの力?お前は誰だよ。


「うーん……神!そう神様だよ!」


神様?俺の人生を無茶苦茶にした神様?そんな奴の言葉なら尚更信用できないね。


「いや違うって!便宜上神ってだけ。まーとにかく、そう言わずにさ!ボクの話を聞いてよ!消えるまで少しだけ時間あるんだし。」


……まあ、どうせ消えるんだ。だったらどうでもいいか。


「僕ね。ずっとキミの人生見てたの。で、あまりにも可哀想だったと思うワケ。ボクも色んな物を見てきたけど、ここまで哀れなのは初めて見たよ!」


ハ!そうかい。だったら改めて言うんじゃねえよクソ野郎。


「ごめんごめん!でもさ、そんなキミの人生の中でもたった一つキラキラした思い出があったよね?」


ああ、まああったな。小さい頃にやったゲームだったか。アレは良かったな。でも親に取り上げられて捨てられたけど。


「あーそうだったね。まあそれはともかく。もしさ、あんな世界に転生できるならしたいと思わない?」


思わないね。俺があんな風になれる訳ないだろ。


「いやいや、そうとは限らないよ?キミは失敗を沢山したんだ。でも、それを活かす前に事故に遭ってしまった。だからさ、転生したらそれの反省をしつつ行動ができるんだよ?いいでしょ?」


だとしてもだ。俺は力にはないしグズ。精々少し勉強ができる程度だ。そんな奴が環境がガラっと変わった所で何ができるんだよ。


「大丈夫大丈夫。そこら辺は安心してよ。いい感じに介入できる程度に介入して助けてあげるから!ねえ?どう?今転生すると誓ったら、キミの夢の世界へ転生できます!更に今なら、僕の力と手助け機能もついて更にお得!こんな機会、逃がす手はないでしょ?


うーん。正直このまま消えてもいいと思ってる。何故なら俺は転生した所で大して何もできないだろうし。それに、コイツも結局なんだかよく分からない。介入?神じゃねえかよ?そこは手助け機能じゃなくて自由に改変してくれよ。


「あ、ヤバ!キミ消えかてる!ねえ!はやく誓っちゃってよ!」


うるさ。しかしそうだな。転生も悪くないかもしれない。だから……転生することを誓おう。


「あ!転生する!?んじゃ行ってらっしゃーい!あ、灰から鍵を守ってねー!それができないとキミ、転生してもどの道死ぬらしいから!」


は?灰から鍵を守る?何それ?おい、どういう——



俺の意識は再び薄れていった。



「ねえ!起きて!」


うう……痛い。またこの展開か?実はこれも夢だったりして目覚めたらいつも通りの憂鬱な朝か?


「あなた大丈夫?ねえ!」


これで目覚めたら親でも出てくるのだろうか?でもこの声誰だろうか。やたらと綺麗な声だな。さっきのは本当だったのだろうか?


転生して、起こされる。これがラノベ通りの展開なら、次に起こることは分かりきってるよな?俺?なら行動するしかないだろ。





俺は期待に胸を膨らませ瞼を開くと。



目の前には、髭面のおっさんがいた。


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