ストリートペーパー
初投稿です。
新聞売りは生活の収入源だ。文字なんて読めないが売ることはできる。
「また物騒な事件だ」
「事件?」
同じ路地に暮らすノーマンは文字を読める。売る前の新聞の一面を見てノーマンが言った。
「ああ、カスイ川で遺体が見つかったって書いてんだ。顔もわかんねぇぐらいぐちゃぐちゃなんだと」
サッと血の気がひいていくのを感じた。
今からそこで新聞を売ろうとしてたのに!
その悔しさと怯えがノーマンに伝わったのだろう。ノーマンはガラリと笑って肩を叩いてくる。
「あーそっか!おまえいつもそこで売ってたな!わるかったよ」
「どうしよう⋯他は別の人の区域だし」
「相変わらず怖がりだなあ」
怖がりで何が悪いんだ!僕はそうやって今まで生きてこれたんだ!
彼にムッとするも言葉にはできなかった。言い返すことですら怖いのだ。
「それに今日の新聞ならカスイ川で売りどきだぞ。事件のこともあるから人がごった返しに違いない」
「⋯でも」
「仕方ねぇなあ。じゃあ今日は俺がついてってやるから冬支度は手伝ってくれよ」
「あ、ありがとう!」
ノーマンと共にカスイ川へ向かった。
カスイ川はシェットランド領と王都の間を通っている。王都とシェットランド領の間にある石橋は馬車などは通るが人が足を使って通ることはあまりない。普段はそこで新聞の販売を行っているのだが、今日は雑多に人が溢れかえっていた。
警備隊の姿も人混みの中に確認できる。
「うわ、多いな」
「⋯そうだね」
弱々しく呟いた声に「こんなに人いるのにまだ怖いのか」と呆れられてしまうが怖いものは怖い。
「ほら、さっさと売ろう」
「う、うん」
こんな大勢いるんだ、大丈夫だよな
勇気を振り絞り新聞の販売を始める。販売中も気が気でなくて周囲を気にして変な奴だと遠巻きに見てくるやつもいたが、それでもノーマンの言った通り新聞はすぐに売れた。
翌日からは販売前に事件の話がないか聞くようにした。日を追うごとにいつまでも事件の警備隊が進展をみせることはなく段々と事件のことを新聞に記載されることもなくなってきた。
そんなとき、またカスイ川で遺体が発見された。
その日の新聞は随分多かった。前回の事件の売れ行きが良かったのでそれに合わせて部数を増やしたらしい。
嬉しくはあったが人混みがどれだけあってもやっぱり怖いのでノーマンにまた付き添いを頼んだ。部数が多いのでその分収入も増えるので、酒を奢ることを条件にすればついて来てくれた。
一件目の事件も解決できず二件目の犯行が行われたことに、新聞は恐怖を煽るような発言ばかりが続いていたらしい。ノーマンはいつも怖がらないようにそして理解できるように簡単に教えてくれた。
そして時間が経つと警備隊への批判に変わった。これは怖くはないと言ってノーマンに一語一句違わずに教えてもらった。どうやら、いつまでも事件を解決しない警備隊を無能だと罵っているらしい。
スカッとする!
胸に広がったのは爽快感だった。
警備隊は浮浪者たちを見下して殴ってくるから嫌いだった。恐怖は拭えないが、それでも警備隊が馬鹿にされてるのは気持ちがいい。
今日は一人でカスイ川で販売だ。警備隊を罵倒する文言を飾った新聞だ。もう事件が起きてから数日たっているから人は少ないけれどそれでも生活がかかっているから売らねばならない。
「おいおまえ!」
「ひっ!」
新聞を売ってて半刻ほど経った頃、怒鳴り声で近付いてきたのは三人の警備隊だった。一人が手に持っているのは今売っている新聞だ。
「なんだこの新聞は!」
「俺たちがお前らを守ってやってんだぞ!」
「浮浪者の分際で!」
そこからは泣きながら謝るしかできなかった。
暫く痛みと恐怖で動かなかった。その期間の新聞はノーマンが代わりにやってくれた。
無能な警備隊と蔑む新聞をノーマンに読んでもらっている時が唯一の救いだ。
だが、事件が続かなければ関心が薄れてしまい警備隊を揶揄う記事は減っていった。
そして三人目の犠牲者がカスイ川に浮かんだ。
警備隊を罵倒する記事に舞い上がった。怖いけれどそれでも嬉しさが勝った。
またノーマンに付き添いを頼んだ。彼は立て続けに起こる事件に不安を抱き始めたらしい。二つ返事で了承してくれた。
いつもの場所はやっぱりごった返しで野次馬がすごい。だがそれよりも警備隊のはいつも以上に多かった。
「警備隊が増えたなあ」
「今回の遺体が警備隊の人らしいよ。だから増えてるんだと思うんだ」
「そうなのか!警備隊がやられるなんてな⋯」
この場所は怖い。事件が発覚してからは警備隊が増えてもっと怖くなった。けれど、新聞は沢山売れて稼げるから悪いばかりじゃない。
四人目の犠牲者は案外早く見つかった。
新聞には《警備強化していても防げず》ど書いているらしい。警備の穴をついた犯行は新聞を通すとかっこよく感じる。
「なあ、もう拠点変えないか? 警備隊やられてるんだ。いつ俺たちが殺されるかわかんねぇよ」
いつも怖がる僕を馬鹿にしていたのに!
新聞を読んだノーマンが不安顔で言ったことに酷く慌てた。ノーマンが殺人鬼に怯えていてどうしても元気付けてあげたかった。
「だ、大丈夫だよノーマン!ノーマンは殺されないよ!」
だって、新聞読んでくれる人がいなくなるじゃないか!
軽い説明になるんですが
主人公が、怖いと言ってるのは警備隊のことです。
最初の遺体のときも、「バレたらどうしよう怖い」でした。
犯人は自分なんで殺人犯は怖くはなかった。
新聞をノーマンに読んで貰ううちに快感になってしまって、また記事に書いてほしくて犯行を繰り返します。そんな感じの話です。