近況を報告しよう
「ハァッ・・・ヤッ・・・セイッ・・」
強い日差しが差し込み涼やかな風が吹き抜ける丘のの上で私は今、槍に変えたジーヴィルを手に、日課になった朝の鍛錬をして汗を流しています。
ロシエルを召喚してからもうすでに数か月が経ちました。
あの後、私はロシエルに家を案内し、それから食堂へ移動してこの世界に転生してから始めての食事を二人で取りました。
吸血種の始祖である私は勿論のこと、人工生命体であるホムンクルスのロシエルは基本的に食事を必要としませんが、せっかくなので昼に狩ったクレイジーハイボアをロシエルが調理して、その日の夕食を楽しみました。夕食に関しては彼女は悪魔ですがとてもしっかりとした料理で私の舌を驚かせました。
その後はロシエルと一緒にお風呂に入って、彼女に部屋を案内したらその日は寝ました。
次の日から彼女は家の掃除を始め、私は主人であるからと手伝わせてもらえず、仕方なく私はジーヴィルを扱う練習を始めました。その日から朝は鍛錬を、昼は家の事や家の周辺を探索する事にし、夜は家に残っていた本を呼んでこの世界のことを勉強しました。
この世界に転生して数ヶ月が経って生活にも大分慣れ、世界の事についても知ることができました。
先ず、今の日にちは神歴2002年春の2月赤の3日らしいです。ちょうど私が転生した日が、神歴2002春の1月赤の1日と言うことらしいです。これは前世で言う年明け、元旦の日らしいです。世界ではこの日は祝日で街ではお祭りやお祝いの宴を開いたりするようです。
アストルティア様はどうやら私をめでたい日に転生させてくれたようで、この世界でも生まれた日は誕生日として家族や知人の間でお祝いするらしいです。
時間についてですが、これは前世と余り変わらないようで、二十四時間と言うことらしいです。
次に今私達がいる所は、共和国と呼ばれる国の端にある森の中のようです。
共和国は人間と異種族が共存する国で色々な種族が住んでいて、いわゆる多民族国家のような国です。
ここで言う異種族は異人種のことで、異形種とは区別されているそうです。
本に載っていないことや分からないことは悪魔であるロシエルに聞き見解を広げていきました。
「シア様、朝食の準備が調いました。」
家の方からロシエルが私を呼びにきたようですね。
彼女の私の呼び方は最初は主従関係であることから私の事をマスターやご主人様と言っていましたが、私が少し他人行儀な呼び方が嫌だったので、契約に添わないと言って今の呼び方で呼ぶように命令しました。
「分かりました。今行きます。」
彼女にそう返事をして一緒に家に向かって歩いていきます。
この数か月で私は槍の扱いに関して大分腕を上げ、レイピアの方もまだまだですが様になってきたと思います。
他にも昼の間に家の周囲を探索したところ、いくつか食べることができる植物も見つけることができ、今では少々質素な食事ぐらいにはなってきています。
本当にアストルティア様には感謝しかありません。勿論ロシエルも私の生活をより豊かにしようと色々とやってくれて助かっています。
家の掃除についても彼女の魔法で綺麗に掃除されていて、普通に掃除すれば1〜2週間は懸かるところをたった3日で綺麗にしてしくれました。本当に助かります。
今は庭の手入れをしてもらっています。家の掃除が終わった次の日には裏庭の雑草を刈ってもらい、今まで雑草を踏みつけて足場を整えていましたが、今ではする必要も無くなりました。
ロシエルの後をついて歩いていくと、ちょうど花壇の横を通り過ぎていきます。
花壇は彼女が雑草を全て刈ってくれたおかげで、最初の荒れた雰囲気がなくなりましたがその分、花がないことで寂しさが出てきました。
「この花壇には何か花を植えたいですね。ロシエルは何の花を植えるといいと思いますか?」
「花・・ですか?そうですね・・・ここの地域は凍てつく山脈に近いこともあり比較的寒い環境ですので、寒い環境でも咲く花がよろしいかと。」
確かにここは凍てつく山脈に程近い森の中なので、若干山から下ってきた冷たい風が時より吹き抜けていきます。
「そうですね・・・町にはお花屋さんとかあるんでしょうか?もしあればそこで専門家に聞ければ一番いいんですが。」
「はい。私も花のことに関しては詳しくわかりませんので、その方がよろしいかと。」
ロシエルは私の質問に真面目に答えてくれました。それが嬉しくてつい笑みがこぼれます。
従者だから主人の質問に答えるのは当たり前かもしれませんが、誰かがそばにいて真摯に私の話を聞いてくれる・・・それがたまらなく嬉しいです。
「近いうちに街へ行って色々と調べる必要がありますね。確かこの近くにはリカレオの街がある筈ですから、今日の昼から行き方を調べましょうか。」
この家の前の主人が残した日記にはリカレオの街が近くにあり、そこから調査団が凍てつく山脈へと向かったと書かれていましたから。
「わかりました。今日は私もお供させていただきます。何かあったときに側にいなければシア様をお守りできませんから。」
「一様私はそれなりに戦えますから、自分の身は自分で守れますよ。」
私はロシエルの言葉に反論します。
「承知しております。ですが戦闘だけが問題ではありません。もし人に遭遇したり、シア様が知らない魔物が現れた際、シア様だけでは対処方法を間違ってしまうかもしれませんので。」
ロシエルの言葉に私は確かに一理あると思い一緒に行くことにしました。
そんな風に今日の予定を話し合いながら歩いていると、いつの間にか裏口につきました。
この後は少しお風呂で汗を流し、ロシエルの美味しい朝食を食べます。楽しみです。
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