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開かずの扉を開けてみよう


 家に着いた私は先程クレイジーハイボアと戦闘したことで汚れてしまった体を洗うため、もう一度お風呂に入りました。



 「ふぅ〜・・朝にも入りましたが、探索ではそれほど疲れていないはずなのに、すごく疲れが抜けていく感じがします。」



 朝と同様しばらくお風呂を堪能した後、お風呂から出るとまた新しい服に着替えると、次にすることを決めます。



 「今日はもう外へ出て探索する気はありませんから、何か家の中でできることを探しましょうか。」



 そう言うと、私は家の中を散策し始めます。


 最初に向かったのはトイレです。


 トイレの部屋では洗面台と男女それぞれの個室が一つずつある簡素な物でした。でもそこに設置されている物はとても高度な物だとすぐに分かりました。



 「そういえば、異世界でこんなに綺麗なトイレは少し驚きです。異世界といえばもっと文明が劣っていると思っていました。」



 試しに鑑定をかけてみたら、やはりこのトイレも魔道具の一種でした。このトイレには〈常時清浄化〉と言う機能が組み込まれており溜められた魔力を消費して常に綺麗に保たれているようでした。


 もはや恒例となった魔力を貯める作業も、サクッと終わらせて次の部屋へと行きます。


 次に入った部屋は、外からお客様が来た時に対応すると思われる応接室です。この部屋は他の部屋よりも少し豪華な印象を受けます。他の部屋には無い調度品が数点置かれており、お客様が座ると思われるソファーも黒い高級感漂う物でした。



 「この部屋はどうやって掃除しましょうか?」



 ここだけでは無いですが、どこの部屋もホコリなどが積もっておりどうやって掃除するべきか迷っています。



 「うぅ〜ん、そうですねぇ・・・一度ここに置かれている家具や調度品を外に出してそのあと部屋は魔法で洗い流して、汚れた水は操作して外に捨てましょうか。」



 家具や調度品などはブラッドボックスを使って外へ出せば問題ないでしょう。他の部屋も同じ容量ですれば綺麗にできるでしょう。しかしこの家を全部綺麗にするには一人では何日もかかるでしょう。



 「人手が欲しいですが、それもまた今度ですね。次は・・ああ〜そうですね。あの鍵がかかった部屋がありましたね。そこを開けてみましょうか。」



 初日にこの家を探索した際に鍵がかかっていて調べることが出来ませんでしたが、そのあと書斎と思われる部屋で見つけた日記にその部屋の鍵と思われるものが挟まっていたので、今からその鍵が本当にあの部屋を開ける鍵なのか調べに行くことにします。


 私は一階の奥にあるあの部屋の前へと来ました。扉は昨日見た時と変わらず閉まったままです。


 私はマジックポーチの中から昨日見つけた鍵を取り出します。


 鍵は見た目は少しSFチックで前世では見ただけではインテリアルとしか思わないような、そんな見た目をしています。でも転生してから身に付いた魔力を感知する力がこの鍵がただの鍵では無いことを教えてくれます。


 取り出した鍵をドアノブの下のある鍵穴へと差し込みます。鍵は回すタイプではなくカードキーのように何かを認識して解錠されるタイプのようで、差し込んだ瞬間カチッと言う音と共に扉にかけられていた魔法が消えたのがわかりました。


 私は恐る恐る扉のドアノブを握りひねり、扉を開けました。


 部屋の中は薄暗く、扉を開けたことで外の空気が入り込んだのか、ホコリが少し舞い上がりコホコホと咳をしました。



 「これは・・実験室・ですかね?」



 吸血種と言う種族の特性である暗視が効いているため、部屋は薄暗いと感じるものの普通にみることが出来ます。


 部屋には大きな机が置かれ、その上に実験資料と思われる紙の束や実験器具と思われるガラス製遺品、さらに何かの鉱物と思われる石や粉、液体などもさん雑に置かれています。


 部屋の隅には棚が置かれその中に机に置かれている物の以外にも実験に使う素材やらなんやらが綺麗に鎮座されています。


 一見して乱雑に物が置かれて汚い部屋に躊躇しながらも、部屋の中に入り調べていきます。


 この世界に転生して2日目の私にはこの実験室と思われる部屋で、何が実験されていたのかは見ただけでは分かりませんが、私がこの部屋を見て思ったのは、まるで錬金術師の部屋のようだと感じました。


 そしてそれを裏付けるように部屋の奥には床に魔法陣らしき物が描かれた空間がありました。



 「まさに錬金術師の研究室という感じですね。日記では娘さんを生き返らせるために色々と研究していたみたいですけど、一体どんな研究をしていたんでしょうか?」



 私は机に置かれた一冊の本を手に取って読んでみることにしました。


 本の表紙には『ホムンクルスの研究と考察』と書かれています。


 内容を読んで色々と難しい解説を私なりに要約してみると、ホムンクルスとは古代人が開発した錬金術の最高等技術の一つである人工生命の生成によって作られた人工生命体を総合して『ホムンクルス』と言うそうです。


 だから必ずしも人型の人工生命体だけがホムンクルスというわけではないようです。ただこの研究をしている人はみんな人型のホムンクルスを研究しているようなので、人型の人工生命体だけをホムンクルスと言っても実質変わりはないでしょう。


 ホムンクルスは肉体が人とほとんど変わりなく人の持つ三大欲求も備わっているようです。人と違う点を挙げるとすれば、一つは心臓の中にコアと呼ばれる高位の魔力媒体が必要であることともう一つ・・・心が無いと言うことだけのようです。


 ホムンクルスはコアを媒体に魔導と言う魔法を恒常的に発動させ続ける技術を使った魔道具で擬似心臓を作り出し、人と変わらない身体機能を維持させるそうです。


 ここで魔導具とは、魔法を発動させる際に込められた魔力を消費するのではなく、空気中の魔力を吸収することで魔力を補給す事なく恒常的に魔法を発動させ続ける、いわば半永久的に効果を発揮しつじける魔道具の一種のようです。


 そしてもう一つの、心が無い事については、まあ当たり前といえば当たり前のことで、ホムンクルスには生物が持っている感情が無いようなのです。学習能力は持っているようで、知識は与えることができるようです。しかし感情が無ければただの人形と変わりないということらしいです。


 他にもホムンクルスを作るにあたって必要な素材やその取り扱いについてや、この素材をいかに低コストで代用できるかについて色々と書かれています。


 これがこの本に書かれていた内容を私なりに解釈したことです。恐らくこの家の前の主人が書き残した日記に書かれていたことはこのホムンクルスの研究についてなんでしょう。そしてこの技術を利用して亡くなった娘さんを生き返らせようとしたんでしょう。


 ここで疑問になってくるのは、この技術を使って娘さんそっくりのホムンクルスを作ったとしても娘さんの心がなければ何の意味もないということなのですが、主人はある方法を使ってこの問題を解決しようとしたみたいです。その方法がいくつか書かれた紙が机に上に置かれていました。


 そこには・・禁呪と呼ばれる魔法や魔導が書かれていました。禁呪とはあまりにも邪悪なため、もしくは威力が大きすぎるために使用を禁じられた魔法・魔導のようです。


 例えば死者の魂を呼び出し依代に宿し生き返らせる【死魂降霊の儀】や、【悪魔召喚】と言う悪魔を現世に呼び出し交渉を持ちかけ悪魔と契約をするなどの方法が書かれています。



 「どうやらこの家の前の主人ー日記の主人は禁呪に手を出してでも娘さんを生き返らせたかったようですね。まあそれだけの覚悟が無ければここまでのことはしなかったのでしょうから、今されではありますが・・・」



 結局はそれらも実行されなかったようですし何かあるわけでもありませんが、もし日記の主人がどれかの方法で禁呪を行ったとしても、娘さんの心がホムンクルスの肉体に宿るとも限りませんし、もしかしたら全く別の何かになっていたかもしれません。そう考えると行われずに済んで良かったと思いました。



 「さて色々と見させてもらいましたが、特に危険なものなどもありませんし、最後に部屋の魔力を調べたら今日は自室に戻って本でも読みましょうか。」



 私は研究室の中で魔力的に何か無いかと見回していると、部屋の奥の棚から魔法がかかっているのが分かりました。棚は研究室の入り口から見て正面の壁に置かれています。



 「あれは何でしょう?棚全体に魔法がかかっているようですが・・」



 私は怪しい棚に近づいて調べてみる事にしました。


 掛けられている魔法について調べてみると、どうやらこれは研究室の入り口の扉に掛けられている魔法と同じ物がこの棚にかけられているようでした。



 「確かこの向こう側の部屋は図書室ですね。・・・おかしいですね。向こう側からはこのような魔法は感知しませんでしたが・・」



 図書室は部屋の壁が全体的に本棚に囲まれているので、もしかしたら繋がっているのかもしれませんが。このような研究室と図書室が隠し扉で繋がっていても何の利便性も感じられません。あるとすれば・・・



 「・・隠し部屋もしくは隠し金庫などでしょうか?」



 まあそれも一度開けてみれば分かることでしょう。


 どうやらこの魔法を解除する鍵は扉に使われているものと同じようなので、私は棚のどこかにある鍵穴を探します。


 数分程探すと鍵穴は棚の内側の側面にありました。そこへ研究室に入る時同様、鍵を差し込むとカチッと言う音と共に棚が動き出しました。鍵は差し込んだまま棚は奥へとスライドしていき横の壁へと収納されていきました。


 棚が消えた先には地下へと続く階段がありました。階段が現れると共に魔道具の一種と思はれる物が光り階段を照らし出してくれました。



 「この先には恐らく日記の主人が研究していた物があるはずです。」



 私は足元に注意しながら恐る恐る階段を降りていきました。


 地下へと続く階段の先には大きな広間になっているようで広い空間へと出ました。


 部屋の床には大きな魔法陣が描かれています。見た限り上の研究室に描かれていたものよりも大きく、何よりこの魔法陣からは嫌な気配が感じられます。


 そして魔法陣の中央には寝台が置かれその上には黒髪の美少女が眠っていました。



 「ほぉ・・・綺麗です・・」



 美少女の顔は眠っていてもキリッとしており髪型はショートヘアーで、入り口からでも分かるくらい綺麗な肌は白く、身長は女性にしては少し高く165センチ程度と言っていいでしょう。(私よりも高いです。155センチ程度)


 私は周囲を警戒しながら彼女の元へ慎重に近づいていきます。


 寝台のすぐそばに着くと私は彼女の胸の中心へと手を当て心臓の動きを確認します。その際短で自分よりも胸が大きいことが分かると元男といえ少し悔しさが湧き上がります。


 まあそのことはいいとして、やはり彼女の心臓は動いていません。さらに肌は冷たくパッとみれば死体のようにもみることが出来ます。


 彼女が恐らく日記の主人が作り出した人工生命体のホムンクルスでしょう。そして日記の主人が生前高位の魔力媒体を手に入れることが出来無かったことでコアを作ることが出来ず、未完成のまま安置されていたのでしょう。


 また家や庭の状態から言って軽く数十年は経過していると思われましたが、彼女は腐ることなく綺麗な状態であることが死体では無いことを表しているでしょう。


 さらに魔力を見た限り彼女には魔法がかけられており、恐らく状態を保つ類の魔法がかけられているのでしょう。



 「彼女が日記の主人の娘さんを模したホムンクルスであるのは間違えないでしょう。だとするとこの床の魔法陣は・・禁呪・・の類でしょうか。」



 最初に見たときにも感じましたが、この魔法陣からは嫌な気配がすると私の直感が訴えかけてきます。



 「さて・・どうしましょうか?見つけてしまったからにはこれからどうするか、決めないといけませんね。」



 恐らくすでに娘さんは輪廻の輪に入り別の記憶を持って別の人生を生きていると思うので、日記の主人の願いは叶うことはないと思います。


 私はしばらく考えてあることを思い出します。それは『はかない夢』そして『薄れゆく希望』これらは昼に見つけたアネモネの花言葉ですが、その中には他にも『期待』と言う言葉もありました。


 私はこの言葉を思い出したことで心は決まりました。



 (これからずっと私一人だけの生活というのも寂しいですしね。この『期待』という言葉は私の今の気持ちに言える事ですね。)


 最後までお読みくださりありがとうございます。誤字・脱字やアドバイスなどのご意見があればコメントしてください。


   次回もよろしくお願いします。

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