夏は
2部夏休み編開始です
どうも!佐々木夏葉でっす✩
え、テンション高いって?やだなー、そんなの当たり前じゃないですかー
だってー、今はー
な・つ・や・す・みなんですから!ですから!
大事なことなので二回言いました!反省はしません!
いやー、こうこうせいかつはじめてのなつやすみ♪
平仮名で書くとなんか卑猥な感じがしますね、不思議です!
まぁ悪ふざけはここまでにしましょう。
夏の暑さに、私もちょっとやられちゃったみたいですね!
でも反省はしません!
黙っていたら清楚な文学少女に見えるのに…って響子ちゃんにも言われるんですけどね。
これでも湊くんの前じゃ、結構頑張ってるんですよ。
別に猫かぶりしてるわけではないのですが、これが恋する乙女のなせる技というやつでしょうか。
無意識でやってしまうって怖いですね、遺伝子に刻まれた本能が頑張ってくれているのかもしれません。
恋愛初心者の私には全く持ってありがたやありがたや…ご先祖様、お盆はちゃんと拝みに参ります
閑話休題
ここまで私が浮かれているのには、もちろん理由があります。
私だっていつもこんなテンションではないんですよ、ほんとですよ!
私は今、朝の日差しを浴びながら、駅前の広場に向かっているところです。
昨日は眠れなかったので少し寝不足ですが、テンションが最高潮に高まった今の私には、何の障害にもならないでしょう。
広場に向かう理由はもちろん、私の彼氏である水瀬湊くんとのデートがあるからです。
本当は夏休みに入る前の試験休みに、2度目のデートをするはずだったのですが、いろいろあって予定はキャンセル。
夏休み初日の今日、再デートと相成りました。
夏休み前に前原くんから、湊くんとは別れたほうがいいとかチャットで言われもしましたが、そんなこと言われても正直困りましたね。
湊くんにはなんの不満もないですし、別れる理由がないのにそんなことを言われてもというやつです。
あ、以前のデートがキャンセルになって残念だったとかは思ってませんよ。
彼氏さんであろうとなかろうと、断る理由が体調不良なら仕方ありません。
具合が悪い状態で相手をあちこちに連れ回すほうが、こちらとしても申し訳がたちませんので。
一緒に出かけるなら、やっぱりお互い楽しまないとですから。
当たり前のことです。相手に気を使ってばかりいてもしょうがないですからね。
特に湊くんはそこらへん無理しそうな人なので、向こうから言ってもらえて助かりましたよ。
やはりできた彼氏さんです。えへへへ
さてさて、そんなことを考えてたら、いつの間にか駅前に着いていました。広場は日差しを遮るものなど一切なく、直射日光全開です。
日焼け止めクリームがなければ危ないところでした。
即死とまではいかなくても、肌の弱い私には油断のならない相手。
君子危うきに近寄らずといいますが、私は湊くんがいるなら、虎穴にすら飛び込む覚悟です。
湊くんはもう着いているのかなと、辺りを見回してみると…見つけました。
前回よりも人が少ないというのもあったのですが、すごく目立っていたからです。
私の彼氏、ナンパされてました
…おっかしいなぁ。そこは逆じゃないかナー
これ、私が助けなきゃいけない流れ?え、本気で?初体験なんですけど。いやらしい意味ではなく。
いきなり覚悟を試される事態が起きたようです。どうしてこうなった。
とはいえ、ここは逆に考えましょう。前回の名誉挽回するには絶好のチャンスであると。女は度胸、なんでもやってみるもんさ!
佐々木夏葉、いっきまーす!
私は虎の穴に突貫しました…正直、内心はかなりテンパってました。乙女ですもん。
あ、相手のお兄さんは聞き分けが良くてとても助かりましたね。世の中そう捨てたものでもなさそうです。
「あ、ありがとう。夏葉さん…」
「いえいえ、どういたしまして」
湊くんはかなり恥ずかしそうにしています。
そういう顔が男の人を引き寄せてしまうのではないでしょうか。いいませんけど。
至近距離でこんな顔を見れるとか、まさに彼女の特権と言えるでしょう。
ヨダレは垂らしません。腐ってませんし、私は淑女ですから。
今日の予定は図書館デート。涼しいクーラーの元で静かに過ごしながら、午後はモールまで足を運ぶことも考えてます。
一応、新しい水着も、買ったりして…お、大きくなってますし…
湊くんと一緒にこの夏の間でやりたいことは、たくさんあります。
水族館にも行きたいし、海やプールにも足を伸ばしてみたいもの。
焦ることなく一歩一歩、湊くんと進んでいければ、私はそれで満足です。
…キ、キスとか、まだ早い気もしますし!
でも、今日はちょっとだけ勇気を出して
「行きましょう、湊くん」
私から手を差し出しました。湊くんは私の顔を見て、おずおずと手を伸ばしてきます。
…は、恥ずかしいですね。これは…
私は早くも、夏の暑さではない汗が背中を伝ったのでした。
それでも、ギュッと握った手を離すことなく、私達は歩き出します。
図書館まではちょっと距離がありますが、バスを利用せずのんびり歩いていくのもオツなものです。
青空と白い入道雲、立ち並ぶ街路樹にひぐらしの鳴き声。
すれ違う人々と、暑くなったアスファルトを踏みしめながら歩く二人の男女。
本の中に迷い込んでしまったかと思うほど、今の私達は、青春というものの只中にいるのではないでしょうか。
そんなことを考えてしまうのは、きっと
隣に、この人がいるから
私はもう一度、湊くんの手を強く握り締めました。
…お互い手の汗がだらだらで、結局すぐに離しちゃいましたけど。
でも、これもいい思い出になるでしょう。
だって
―――夏は、まだ始まったばかりなんですから
ブクマありがとうございます
2部もよろしくお願いします
最初は夏葉視点でした。これは予定通りのお話です