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いつも一緒だったのに。  作者: くろねこどらごん
第一部 一学期
12/62

デート日和

僕と佐々木さんが付き合い始めて一週間が経った頃。時間は流れ、5月へと入っていた。高校生活にもようやく慣れてきたところだ。


そんな僕らは高校生になってから初の大型連休、所謂ゴールデンウィークを迎えていた。


うちの学校は強豪校でもないため、部活動に関しては基本的に緩く、合宿などもない。

このゴールデンウィークも休みの日のほうが多く、それを1番喜んでいたのは顧問の先生だった。

家族を連れて旅行に行くのだと張り切っている姿を、部員一同生暖かい目で見守っていた。


そして今日は部活休みの初日である。先生は今頃京都へと旅立っている頃だろう。


僕と佐々木さんにとっては、初デートの日でもあった。

お互いの予定をすり合わせた結果、丸一日予定のない今日になったのだ。

この一週間で佐々木さんの人となりもそれなりに理解できてきた。お互い共通する趣味もあることが分かったし、気まずい雰囲気になることはおそらくないはずだ。

まぁそれも、きっと僕次第なのだろうけど。



今日の僕の服装は青のデニムジャケットに薄手の白パーカー、黒のカーゴパンツである。特に気合を入れたわけでもなく、幼馴染と出かける時によく着ていくお気に入りのコーデだ。

初デートで気合を入れすぎた格好をすると、逆に空回りするのだという友人からの熱のこもった忠告をありがたく参考にしたのである。

…圭吾の経験談なのだろうか。どんな服装でのぞんだのか、ちょっと気になる。



あとで幸子に聞いてみようか、などとちょっとだけ鬼畜なことを考えながら、僕は洗面台の前に立ち、乳液を念入りに顔にすり込んでいた。

これは綾乃から強引に渡されたもので、折角の綺麗な顔なんだからちゃんとケアしないと駄目だよと怒られたのである。

正直男としては全くもって嬉しくない気遣いだったのだが、つけていないか毎朝チェックされるため、今ではすっかり習慣になってしまっている。慣れって恐ろしい。


まぁそのおかげなのか、僕の顔にはニキビ一つできたことがない。ついでにいうなら15歳だというのに、未だに口元や顎にヒゲが生えてこず、鼻から下の手触りはツルツルである。

そのことをクラスの権藤くんに話したところ、普通に怒られた。彼はちょっと毛深いのである。

その後、顔をガン見され、何故か彼が顔を赤らめていたことについては触れたくない。



天気予報も既にチェック済、今日は一日快晴らしい。待ち合わせ場所の駅前広場も、さぞかし人が多いことだろう。


ついでに歯磨きもしながら、少し早めに出ようかと考えていると、玄関からチャイムの音が聞こえてきた。


一度リビングに戻り、カメラをチェックすると、そこにいたのは綾乃だった。僕はいそいで玄関に向かい、鍵を開けた。



「おはよう」


「おはよう、みーくん」


お互い挨拶を交わす。余所行き用のライトグリーンのワンピースを着てきた綾乃は、両手で冷凍パックを持っていた。

いかにも女の子といった服装に対し、所帯じみたプラスチックの箱を掲げている姿に、ちょっとだけ違和感を覚えてしまう。


美少女でも損をする光景ってあるんだな。ちょっとレアなものを見た気分だ。

そんなことを考えている僕に、綾乃はパックを差し出してくる。


「これ、おすそ分け。お母さんと一緒に作った煮物なんだけど、良かったらどうぞ」


「ありがとう。綾乃はこれからどこか行くの?」


僕はそれを素直に受け取ると、思っていた疑問を口にした。僕の家にくるだけだとしたら、ちょっとめかしこんでる気がしたのだ。


「うん、家族でおじいちゃん達のところに泊まりに行くの。高校生になったんだから、顔くらい見せなさいって言われて。…みーくんも、どこか出かけるの?」


綾乃はどこか不安そうな顔で聞いてきた。

僕が休日に出かける時は、大抵幼馴染二人と一緒だったのだけど、今日出かけることは、綾乃や渚には伝えていなかった。


「うん、佐々木さんとデートなんだ」


僕の答えに、綾乃はそっか、と呟いて目を伏せた。

…この子も分かりやすい子だ。元々綾乃は、喜怒哀楽の感情が、ハッキリと顔に出る。

悲しんでいることを、隠しきれていなかった。


僕は誤魔化すように、あえて明るい声で言った。


「僕もこういうの始めてだからちょっと緊張しててさ。綾乃と話せてよかったよ。おかげで少し緊張もほぐれた気がする」


心の中で佐々木さんに謝った。デート前に他の女の子と話すなんて、あまりいいことではないだろう。


それでも目の前の綾乃をほうっておけなかった。この前もこんなことをした気がする。

どうやら思っていたよりも、僕は幼馴染に対して甘いようだった。


「なら良かった。みーくんも楽しんできてね。佐々木さんのこと泣かせたりしたら駄目だよ」


そう言って綾乃は笑顔を作り、自分の家へと戻っていった。

…失敗したかもしれない。どこか無理をしているような、消え入りそうな笑顔だった。


「難しいなぁ」


恋愛も。幼馴染という関係も。


僕は少し頭をかきながら、パックを冷蔵庫にしまうべく、キッチンに向かって歩いていく。


リビングの時計を見ると、時計の針は9時20分を指していた。待ち合わせの時間は10時だ。家を出る予定の時間に近づいている。随分と話し込んでしまっていたらしい。


「ちょっと急ぐか」


僕は二階に上がると、ソファーに置いていたボディバッグを掴み、家を後にした。



5月の朝の風は、少し暖かった。

圭吾くんは初デートで親のスーツを借りました

溜めが長いほど愉悦できるって神父さんも言ってました

どうでもいいですが、湊の外見イメージはアストルフォくんです

自分は爆死しました_(´ཀ`」 ∠)_

現代ダンジョンものも書きたい

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