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序
月が翠色に輝いている。
二つの衛星を持っていた藍色の惑星から出発したのは、何日前のことだったのだろうか。それとも、もう何ヶ月も過ぎてしまったのだろうか。
ぽわんとした雰囲気を漂わせて、宇宙探査船の展望室で前方の星々を見詰めている。目頭から目尻にかけて、二重瞼の幅が徐々に大きく広がるすっきりとした輪郭の目が、心地良い表情を作り出す。
「ここから見えるあの明星はまだ小さいけれど、私が見ているこの景色をよく覚えておいてね。たくさんの星々の中であの明星だけが、私たちを結び付けてくれるのよ」
顎を突き出して、口を尖らせた。笑うと幼い顔に変貌する。嬉しい、楽しい、寂しい、悲しいが別々の表情になって幾つもの容貌を作っていた。
公転軌道を回り、宇宙探査船は明星に近付く。
その星に全人類の未来と希望が託されている。
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