番外編2
レグリズもメルフィトと同じような方法をとった。
魔物を倒すときに彼は攻撃と同時に癒しも使っていた。
それは、オーリアを守るためだろう。
彼女は人間。
きっと、傷ついた彼女を早く治すことを考えた。
マスターの命の「守ること」が無意識の中で働いたのだろう。
そんなことをして大いに疲労したレグリズ。
私にとってはラッキーね。
だって、マスターの命を果たせも同然。
疲弊すれば、人間としての意志の拒絶がなく、すんなりと人形と入れ替われる。
メルフィトは力を使って疲れていたけれど、レグリズみたいに顔が真っ青になったりしてはいない。
この顔色も人形の自身を自覚すれば治るわ。
兎に角、とてつもなく疲れているから私が彼の人形としての名前で呼ぶことで完全に人形にできるだろう。
メルフィトの場合は完全に人形にすることは怪しまれたくないために避けた。
しかし、レグリズにそれは必要ない。
もうすぐ、マスターの下に着く。
完全に人形にできるならしてしまいたい。
意識の入れ替え。
作られた意思の交換を拒絶なく行えるなら、ダメージが少なくていい。
人間の意志が精神的に傷つくと人形の彼も少しだけ傷つく。
どのようにと言われると説明するのは難しい。
レグリズもレリスも一緒の存在。
どちらかが傷つけば、どちらも傷つく。
人間の彼と人形の彼は魂が同じ。
同じ魂が傷つくことは避けたいこと。
魂の修復は長い時間を要するし、マスターの意に従わない壊れた人形になってしまっては大変。
マスターなら魂の修復なんてすぐにできるだろうから傷ついてしまっても問題はなさそう。
しかし、なるべく問題はない方がいい。
メルフィトには少し拒絶反応が出ているが、半分が人間、半分が人形の状態なので魂の傷みも問題ない程度だろう。
まぁ、早くマスターの下に行って人形にしてあげないと徐々にボロボロになって、最後には……。
そんなことにならないためにも急がなきゃね。
疲れているレグリズの下に行った。
メルフィトは何も言わない。
人形の意思をもっているからね。
「レグリズ。いや、レリス。マスターの命によって人形に戻りなさい。」
言葉も抵抗もなかった。
すんなりと受け入れた。
人形の名前を……。
レルーがレリスの名前を使っていたから、違和感なく認められたのかもしれない。
レリスの名はレグリズの人形としての名前。
この名前を使うことをマスターが推奨していた意味はレグリズのことがあるからだった。
レグリズはレリスと入れ替わる。
入れ替わるというのはおかしいかもしれない。
元々は人形。
元に戻っただけだ。
でも、偽りの人間の意思が人形の意思に塗り替えられた。
人形に主導権を握られた。
入れ替わったという表現もおかしなことではないかもしれない。
元に戻っただけだが、偽りの意思を持った人間になっていて人形に戻された。
裏と表。
表が裏に、裏が表に……。
例えると、そうなっただけ。
マスターに会った彼らは完全に人形になった。
オーリアはマスターの手の中に落ちた。
全てを忘れて……。
それで、おしまい。
マスターは私たちをオーリアを守るために使う。
今はただ、それだけの存在。
いつか、人間のように自由になれるといいな。
マスターを裏切ることになってしまったときには……。
まぁ、そんなことはあり得ないけどね。