別れの日
大変お待たせして申し訳ありません。
私立ち上がれるようになりました。
もう三歳なのだから当然といえば当然。よく噛んでしまいますが、しっかりと会話もできる。
もはや立派なレディーと言っても差し支えはない。だから、さっさと実家に帰りたいという思いも芽生えてきました。
だって、ここには何もないんだもの。
立ち上がれるようになってから、私の世界は大きく変わりました。
なんと、外に出歩けるようになったのだ。
ハイハイとは全くことなる景色に戸惑うことはありますが、幼馴染ともども充実した毎日を送っている。
ここでうれしい誤算が一つありました。この世界の食事は美食大好きな現代日本人をうならせるに足る素養を保持していました。
ですから、立ち歩いては近所の気のいいおじいちゃんに食べ物をねだるというのがここ最近のマイブーム。
分け前が減るので、幼馴染は連れて行きませんが、大満足。
ジィージ、バァーバはお菓子の元、今は成長期真っ盛り、カロリーなんて気にする必要がないのだ。
この事実のなんと嬉しいことか。
私は今、どんなに食べても太らない肉体を手に入れたのだ。
期間限定だけど。
おかげですくすくと成長している。
だが、ここで問題が一つ、幼馴染であるフリックよりも身長が高いこと。
女の子にとって身長というのは重要なファクター。高いモデル体型というのは捨てがたいが、ヒロインという存在はかわいい系を前面に押し出すタイプが多い。
私もその例に漏れないが、身長が高すぎるとね……。
それに自分より低身長の人物と恋人関係になるというのも気が進まないというのがある。
だって、そうでしょ、エスコートの時様にならないし、高身長というのは彼氏にする時の一種のステータスでもあるものだ。
高いに越したことにないと考えるのは、私だけではないだろう。
だからと言って、私の糧を分けてあげる気にはならなうが。条件付きで許している。
ちなみに最近の私のマイブームお姉ちゃんと年下の男の子に呼ばれることだ。
胸がドキドキし、非常にあたたかい気持ちが舞い上がってくる。
ですが、そんな楽しい日々も終わりを迎えようとしていました。
そう、実家に帰る時がやってきたのだ。
あれほど帰りたい帰りたいと、思っていたというのに、いざ実家に住まわなければならないとなると、様々な思い出がよぎってくる。
前世、日本人であった私にとって、ここでの生活というのは何かと不便を感じるものではあったのだが、庶民の生活というのは精神的なフィーリングは非常にマッチしていました。
だから、ここでの生活にそこまで不満があるわけではなく、ここにもうしばらく住んでもいいかなという思いもあったのだ。
しかも、向こうはこちらが子供ということもあって当然言い出してきて、心構えを行う時間もありません。
だから、とめどなく流れ出る涙もしょうがないことなのだろう。
いつかは、ここを出るというのはわかりきったことでした。なのでここから出るときは泣かないようにしようと思っていたのだが、この突然の告知に泣かされることになりました。
きっとあいつらは幼女を泣かせて喜んでいるのだ。
慎重に吟味したタイミングで、悲しいお知らせを行い。長年住み慣れた我が家から引きはがす。突然の事態に混乱して、心理的なガードが下がることも織り込み済みのはず。
心理的な手法をふんだんに使用した嫌がらせに違いない。
そのような卑劣な手に、四苦八苦していると、私に、泣くに泣けない理由ができてしまいました。
ポロポロと涙を流している私の横で、フレックが大泣きしている。
お姉さんとして、どうにかしないといけない。それなのに、私の視界も濁っていて、うまく対応することができません。
「な、なきゃないでよ」
この頃になると、おおよそこの地の言語というものを理解しており、自分が噛んだという事実を認識してしまう。泣いているうえに、幼児特有の滑舌の悪さが加わっているのですから、当然といえば当然、けれども、耳が赤くなるというのも当然だ。
でも、少しだけ落ち着いた。
「エミー、いかないで、いっちゃやだよ」
そう言って、フレックは私の服を話しません。
けど、住所の人にやさしくその手は振りほどかれ、私は馬車のなかへと。
「また来るから、すぐにここに来るから、だから待ってて!! 約束よ!!」
これ以上待てないとせかす皆さんを振りほどき、私はそれだけいいました。
あれほど涙を我慢していたのに、今や号泣しており、なりふり構っていられません。
ですが、馬車が進み落ち着きを取り戻して、一つだけ思えることがあるならば、馬車に乗せようとして一時間近く駄々をこねた私に辛抱強く付き合ってくれた従者の皆さんに感謝の思いでした。
エミーは主人公の愛称です。