赤ん坊編
この時代はこだわってもしょうがないのでサクサク進みます
実際に転生してみて、いくつか分かったことがある。
第一に、転生もので、恥ずかしいから一切泣かなかったとあるが、あれは嘘だ。
ここに断言したいと思う。
泣かなければ死ぬ。
赤ん坊というのは自分では動くことすらままならない身、そんな状況で唯一のアピール手段である、泣き声を封じたら、一体どのように周囲に自分の意思を伝えることができるだろう。
例えば表情、範囲が狭九、場合によっては気づいてもらえません。
お漏らしした臭いなんて本末転倒だ。
泣かなければ、おなかすいてもミルクなんてくれないし、トイレの場合も同様。
そういった人たちは精々ほったらかしにされて餓死するというのが、関の山といったところだろう。
それに、よくテンプレで行われている、小さなころから魔力を消費して、魔力量を引き上げる行為。
あれはやばい、ものすごくやばい。実際やってみて死にかけた。
体力がない赤ちゃんの時代に疲れることをやった自分は本当にダメダメだ。
だって、そうでしょ。多くの作品で魔力が何なのかなんて彼方に放り投げられた疑問だけど、精神力とか、その他もろもろを消費してしまうなんて設定はよく見られる。
疲れても不思議はありませんし、赤ん坊とは体力がありません。
体を鍛える赤ん坊が存在しないのは、鍛えたら死にかねないからだ。
確かに、シマウマの赤ん坊は生まれてからすぐに立ち上がることができるが、生物界でもっとも難産な生き物である人間に対して、そこまで丈夫な子供を作れというのは無茶な話だ。
こんなスーパー赤ちゃんを作るには、母体から何らかの調整が必要だろう。そして、ごく普通の生まれの私には不可能なのだ。
結論、赤ん坊の仕事なんて食っちゃねすることのみ。
そんな小さな子供に働けなんてダメダメね。
実際やろうとして死にかけたし。
重労働ダメ絶対。恐らくテストにも出るだろう、これは。
やはり、現実はテンプレ通りにいかないことを確認する今日この頃である。
そんなこんなで、私は困り果てていました。
初めに建てていた計画が根こそぎダメに。
つまりは、そう、人を確実に殺すには足らない毒、されど、退屈という神すら殺す毒に蝕まわれているのだ。
だって、そうでしょ、何か月間も全く身動きが取れないのよ。
ネットに慣れ親しんだ、典型的な現代人である私にとって、何もすることがないという現状は何にもまして辛いことだ。
せめて動き回れるなり、自己強化なりが出来ればだいぶ違うのかもしれない。しかし、当ては外れた。
こうなると、何をすればいいのか本当にわからない。
だからこそ、遊んでくれる他人というのはとても貴重な存在だった。
大人にしてみれば赤ん坊の行動というのは大きな疑問があるものだが、実際問題赤ん坊になってしまうと、その疑問点は大きく解消されました。
泣きわめく行為というのは、一種の自己主張であり、甘えるという行為も、退屈を解消するというだけで、ここに労働を加えたのならば、大人の生活と何一つ代わりなどありません。
赤ん坊の文化レベルの高さにびっくりだ。
こうして見ると、人間というのは、赤ん坊のころからさしたる進歩がないと言っていいのか、赤ん坊も人間という生物の一つの過程であり、大きな変化はありはしないと捕らえるべきなのか分からない。
そんな学術的な考察に没頭することにより、過ぎていく毎日。さっさと過ぎ去ってくれないかと願うが、中々うまく行きません。
ですが、幸運なことに、特に疲れる演技をしなくとも、向こう側も、こちらをただの赤ん坊程度にしか思ってはいないだろう。
赤ん坊だって、人間なんだよ。
言い訳じゃないから、これ重要‼
それと、今私は親元を離れて、庶民の家に暮らしている。
ゲーム内では大して描写されていなかったけれど、ヨーロッパ系の世界ということもあって、一定以上身分がある人物は子供を乳母に預けるみたい。
隣にいる赤ん坊もかわいらしく、よく遊んであげている。
待って、おばさん、違うの、これは違うの、私はこの子を虐めてなんかいない。
だって、そうでしょ、このころの遊びなんてこれぐらい普通よ、普通、それをいちいち咎めるなんてどうかしている。
やめて、お願いだから、そんな真摯な顔でそんなこと言わないで……。
大人である私が赤ん坊を虐めているなんて判定されたら、立ち直れないから。
( ゜д゜)ハッ!
私は一体何を……。
これからは、兄弟? 乳母兄弟とじゃれ合う時には、もう少し気をつかおう。そうでもしないと、罪悪感でどうにかなってしまいそう。
それから、最近分かったんだど、このこ、私の幼馴染? この表現は変だな? ヒロインの幼馴染? もう、私のでいいか。 私の幼馴染であるフレックだ。
ゲームではとび色の紙が素敵な好青年だったけど、今からでも、その兆候は見える。
こんな、かっこいい子が未来の伴侶候補でしかも、幼馴染なんて、神様グッジョブ。
お~と、これはいささか失礼かもしれない。
これでも将来の仕事の一つに修道女を入れているのだから。
前世では、まったく神様という存在を信じていなかったけれど、実際に神様がいると分かったんだ。
こうなれば、信じるという気持ちにもなってくる。
もっとも、今が楽しいから、状況によっては大きく変わるけど、王妃にでもなったら、大聖堂の一つや二つ立ててやろう。
そうやって、思索と幼馴染で暇をつぶし、神への感謝を行うのがこの頃の私の日常だ。
神への感謝、神への思い、そういった点は、物語を通して重要な立ち位置にしたいと考えています。
それにしてもヒロインの名前どうしよう、悪役もですけど、ストーリーはある程度あるのですが、名前決めていないよ。