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ACT.0 夜桜

ちょっと空を見上げてみた。

明るい太陽の光が丁度よいぐらいに肌を照らす。

寒くなり始めたこの季節にはこのぐらいの天気が心地よい。


けど、私は嫌いだ。太陽そのものが嫌い。

なんだか私の本当の姿を太陽だけが上から見ている気がして。


早く日が暮れないだろうか。私が私になれるのは今じゃない。




ACT.0 夜桜




「今日は来てくれてありがとう」


そう言ってホストのカケルはグラスに上等なワインを注いでくれた。

グラスを合わせて乾杯をした後、軽く傾けて赤いワインを口に含む。


「毎日来てくれるのは嬉しいけど、お金とか大丈夫?」


「全然心配ないわよ。今日もいっぱい頼むからよろしくね」


所詮親の金だからね。とは心の中だけで発した言葉だ。


ホストクラブは女が男にハマる方が多いみたいだけど、私にとっては遊び。

本気になんてならないし、むしろ男をどうすれば本気にさせられるかっていう駆け引きが最高に面白い。


それに、私みたいな人間にとってはホストの話術は勉強になる。

スポーツ、芸能、政治。ありとあらゆる方向からお客の話題についていって話を盛り上げてくれるんだから。


お酒が回ってきた所で切り上げる。無茶をして翌日に響かせるわけにはいかない。


「カケル・・・また来てもいいかな?」


見送りに出てきたカケルは嬉しそうに笑う。


「待ってるから絶対に来てよ?」


そう言いながら私の頬に口付けをしてきた。


「じゃあまた今度ね」


手を振りながらタクシーに乗り込む。


座席に座って運転手に行き先を告げる。


窓の外にはキラキラと赤や黄色のネオンが流れていく。


ボーっと外を眺めていたのだが、目の端に面白そうなものが映った。


「ちょっと止めて!」


急ブレーキをかけてタクシーが止まる。


「ここでいいから降ろして」


運転手に代金を渡すとタクシーから降りて建物を眺める。


・・・・ここならちょっとは気分も紛れるかな?




一人の女がヒールの音をゆっくりと響かせながら建物の中に入って行った。





こう思ったことはないですか?



自分の人生は生まれる前から決められていて、自分はただ決められた道の上を歩いているんだと。




初投稿で色々と至らない部分も多いかと思いますがよければ最後までお付き合いください。


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