とっこちゃんの2
「本当に思い出してくれたんだね」
「いや、それはそうだけど……。マジシロ?」
「マジシロだよ!」
身を乗り出してくる女の子、いやシロか。その距離が若干近くて……。
「ちょっと離れて」
「なんでぇ?前は純くんからギュッとしてくれたじゃない」
「それうさぎの時だよね……」
一向に離れようとしないシロ……の肩を掴んで離す。
「本当にシロなんだよね?」
「そうだよ。貴方の飼った最初で最後のうさぎちゃん。品種ロップイアー、現在兎神のシロだよ」
シロはこちらに手を伸ばしながら言う。
「なに?信じてくれないの?純くん?」
「い、いや信じてないとかじゃなくて、急でビックリしたというか……」
「哲学科で鍛えた精神はどうしたー」
「こういう時だけ茶々入れないてください」
新聞をめくる音と同時に浄瑠璃さんの声が聞こえた。さっきからずっと新聞を読んでいて、こっちには干渉してこないと思ったのに……。
「あれ?ていうかなんで最初で最後のペットがシロって知ってるんだ?」
「そりゃあずっと純くんを見てたから……ゲフンゲフン」
……隠せてないよ。ナンテコッタ、ネタのつもりでストーカーと言ったら本当にストーカーだった。
「シロ……だよね?」
「そうだよ」
僕の飼っていたうさぎはストーカー系だったようだ。
「いいねえ、坊主が羨ましいよ。おじさんなんてあのちまっこい神使しか追いかけて来ねえよ」
「今冗談いりません」
「へーへー」
おそらく新聞をさから顔を上げていなかっただろう浄瑠璃さんがまたも茶々を入れてきた。
「そこまで疑うなら……」
「?」
呟いたあとにシロが煙に包まれた。そして掴んでいた肩の感覚がなくなる。
「え、なにこれ?大丈夫なの?」
「大丈夫だろ」
煙にうろたえる僕とは違って変わらぬ調子で言いのける浄瑠璃さん。
やがてけむりが腫れていくとそこには白いロップイアーのシロがいた。
「これで信じてもらえるよね?」
「シロだ!」
思わずシロを抱き上げる。
「やん、大胆。冗談!冗談だから降ろさないで!」
こうしてウチにうさぎが増えました。
兎っ娘と書いて『とっこ』です。作中では使いませんが。
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