信じられないのはお互い様でした
健闘したものの、残念ながら我が3組は準優勝という結果に終わった。
ちなみに、優勝したのは敬太様率いる2組。漫画通りの結果でちょっと悔しかったけど、『微笑みあう敬太様と真凛ちゃんの図』という原作ファンにとっては垂涎モノのシーンが見れたので個人的には良しとしよう。あぁ、眼福眼福。
……その際、ガッツポーズの代わりに拳をギュッと握っていたら
『……西園寺。お前の悔しい気持ちはよく分かるが、今は抑えろ。この借りは秋の運動会で返せばいい』
『あ、あのね西園寺さん!真凛は優勝したのが嬉しくて笑いあってるんであって、決して西山君を横取りしようとしてるわけじゃないから!大丈夫だから!!』
と、菅原様と真奈さんからワケのわからないフォローされたのはここだけのハナシ。
っていうか、一体私はどんな風に見えたんだよ二人とも!別にそこまで悔しがってないよ!嫉妬もしてないよ!!
やめろ、そんな優しい目でこっちを見るんじゃないうわぁぁああああ……と叫びながら走り出したいのをこらえているうちに、レクリエーション大会は無事に終了となった。
それから、今更ながらに始まった菅原様の説教(見学者は大人しく見学してなきゃダメだとかなんとか)を笑顔で聞き流しつつ、副委員長の仕事をこなして――現在。
「遊びに来たぜ、じゃじゃ馬さん」
「お帰りくださいこの不法侵入者め」
割り当てられたホテルの一室で休憩していた私は、部屋に入ってきた敬太様を見た瞬間思わず暴言を吐いていた。あらいけない、大和撫子の仮面が崩れかかっているわーウフフフフ。
気を取り直して大和撫子スマイルを浮かべていると、不法侵入者は「まぁそう睨むなって」と言ってニヤリと笑った。別に睨んでいませんよ。ケッ。
「……それで、なんの御用ですか?」
「あ?用がなきゃ来ちゃいけねぇのか?」
「(いけないに決まってんだろうが!)……ご用件は?」
ツッコミを必死で飲み込みつつ笑顔で促せば、敬太様は少し不満そうに唇を尖らせた。ふはははは、いつまでもお前の挑発に乗る私だと思うなよ!
心の中で密かにガッツポーズしつつ、私は敬太様を部屋の中へ招き入れる。
当然のように部屋の椅子へと腰掛けた敬太様は、正面の椅子へ私が座るのを待ってから静かに口を開いた。
そして次の瞬間……敬太様の口から飛び出したその言葉に、私は絶句する事となる。
「その……悪かったな。星華の言葉を信じなくて」
「――ッ!?」
「お前だって子供じゃないんだし、体調がどうかなんて自分で分かるよな。それなのに俺は……って、なんだよその溶けたチョコみたいな顔は」
「あぁ……鞄の中で溶けると大惨事ですわよね……」
私は敬太様の言葉を聞き流しながら、フラリと椅子から立ち上がった。
そして、怪訝そうに眉を寄せる彼の額にゆっくりと手を伸ばす。
「熱はなさそうですわね。……という事は、もしかして本気で謝ってらっしゃるのですか?」
「あぁ、もちろん……ってなんでそんなに怖がってるんだよ!?」
「す、素直に自分の非を認めて謝るなんて……そんなの敬太様じゃないですわ!」
「残念ながら本物の西山敬太だよ悪かったな!っつーか星華の中で俺は一体どんなヤツなんだよ!?」
「粘着質で俺様な上に人の話を聞かないエセ王子」
「予想を遥かに超えた低評価!しかも真顔で言い切られたし!!一体俺が何をしたっていうんだ!?」
混乱した敬太様がツッコミを入れてきているが、そんなの知ったこっちゃない!こっちは『敬太様が謝ってきた』という事実に驚くので忙しいんだよ!!




