#2 会いたいです
地の文?が多いです。
入学式を終え、それから数日間は身体測定や、校内案内、体験入部とめまぐるしく時間は過ぎていった。
去年から5ミリしか身長が伸びてなかった璃祢だったが、がっかりはしていなかった。いつもの目標5センチ伸ばすに届かなかったのにもかかわらずだ。
何せ今、璃祢の脳内は入学式の放課後再会したあの人でいっぱいだったからである。ちなみに、部活は帰宅部なので体験入部は見学に行っただけだ。帰宅部なのはいろいろ家庭の事情と、やりたい部活がなかったためだ。
峯川高校はいたって普通の公立高校。学力は平均並みで、校則はやや緩め。不良の数は全校生徒の半数をやや上回るくらい。どこにでもある高校なのだ。
璃祢のような一般生徒は萎縮していそうなものだが、この校内でそのような光景はない。もちろん不良を前にしてはそうではないが、それ以外の時はごく普通の高校生活が送られている。
それでも、できれば不良とはお近づきになりたくないと思うのが自然の摂理。もちろん璃祢もそう……ではなかった。
昼休みと放課後。璃祢は不良がいっぱいいそうなところをわざわざ徘徊していた。目的はもちろん、あこがれの人に会いにである。
が、此処で運わるく幼馴染に見つかってしまったのだ。
「璃祢?言ったよなぁ、危ないとこに入っちゃいけませんって」
「危なくないです。あの人に会いたいんです」
「いやいやいや、それが危ないの。不良に襲われたらどうすんの?」
「むぅ……でも会いたいです」
断固として譲らない璃祢に、翔は頭を抱える。長年の付き合いで璃祢の頑固さには慣れている翔だが、今回ばかりは困り果てていた。
なぜなら、翔は璃祢のあこがれの人を知っていて、さらに今いる場所も知っているからだ。
だからこそ、会わせたくないと思うのは彼が璃祢に抱く想いからである事を璃祢が知る由もない。
「璃祢……あのな……っていねぇし!!はぁ……。ま、メンバー全員にきれいな茶髪の小さい一年に手ぇ出したらぶっ殺すって伝えたから大丈夫か」
そうつぶやいた翔が取り出した携帯。その画面にはメールの本文が表示されていた。
送り主は、璃祢が探している人物だった。
『だるいから 帰る。 放課後のは任せた』
「いや、任せたじゃないし。つか俺が買った喧嘩じゃないんだけど」
そういう翔もその喧嘩には参加しないと決めていたりする。相手は近隣の高校の不良だが、まぁ今回は下っ端だけでも大丈夫だろう。
「俺は璃祢と帰りたいんだよ。喧嘩なんか知るか」
喧嘩はまず買わないし売らない。何よりも璃祢を最優先する。ずっとずっとそうして、璃祢を守ってきた。そしてそれはおそらくこれからも変わらないものだと思いたい。
ぼやきつつ、不良仲間に自分らの不参加を告げるため、いつもの溜まり場へと向かうのだった。
真田翔。峯川高校不良、№2――――副総長であることを璃祢は知らない。
そして翔は、あきらめてとぼとぼ教室に戻った璃祢のところに、不良が二人訪れていることを知らないのだった。
翔は璃音に不良であることを隠してます。
実はある意味恐ろしい性格してますが、それはまた後ほど。