#27 それなのに……
目が覚めた璃祢はぼんやりとする中、しばらく起き上がることなく天井を見つめていた。しばらくしてそこが絢斗の家だとわかった。どうやらあの後、泣き疲れて寝てしまったようだった。ひりひりと目の周囲が痛む。だがその反面、心は嫌なほどすっきりとしていた。
「今……何時なんでしょうか……」
「昼過ぎだな」
「そうですか……え?」
「よく寝てたな。どっか痛むとこあるか?」
ようやく体を起こすと、別途に寄りかかるように床に座っている絢斗の後ろ姿があった。物音しなかったため、いないのだとばかり思っていた璃祢はぽけっと固まった。それを不審に思ったのか、読んでいた雑誌をおいた絢斗が振り向いた。
「どうかしたか?」
「いえ……いないのだとばかり……」
手を伸ばせば届く至近距離にいるのにも関わらず、全く気が付かなかったせいか、璃祢は心の準備が出来てなかった。
そんな璃祢を見て絢斗は立ち上がった。何か飲み物を取りに行こうとしたのだが、それを見た璃祢に服の裾を掴まれ立ち止まった。何事かと思い振り返るが、璃祢自身もよくわかっていないようで、目を真ん丸く見開いていた。
「はっ」と我に返ったようですぐに手を離した璃祢はそのまま顔を俯かせた。
「あったかい飲み物持ってくるだけだ、ちょっと待ってな」
「はい……」
キッチンに行き、マグカップに牛乳を注いで電子レンジに入れた。温まったところで、ハチミツを少量加えスプーンでかき混ぜたものを璃祢に渡した。
お礼を言って受け取った璃祢は「ふぅ、ふぅ」と覚ましつつ一口飲んだ。ほのかな甘さと暖かさに璃祢の心に安らぎが広がった。徐々に落ち着きを取り戻し、ようやく璃祢は一息ついた。
「やっといつもっぽくなったな」
「そうですか?ご心配おかけしました。あの……僕あのあとのこと覚えてないんですが」
「泣き疲れて寝たんだよ。今の今までな。すっげぇ晴れ晴れとした顔で寝てたから起こさなかったんだよ」
そう言われ、そうかもしれないと璃祢は内心そう思った。今まで渦巻いていたものが今回のことで全て晴れていった。台風が去ったあとのような、気持ちのいい感じがした
「僕の中でようやく、一つの答えにたどり着いたからだと思います」
「……」
「僕は最初絢斗先輩に憧れてました。中学生だった時、助けてもらったんです。覚えてますか?」
「あぁ……」
「ただ純粋に同じ男として憧れて、少しでも近づきたい……そう思って今の学校に入学したんです。ただ同じ学校に通っている、それだけでも十分だったんです。それなのに……」
あの入学式の日、再会した時。会えて嬉しかった。
話すことができて嬉しかった。
こんなにも近くにいられて嬉しい。
もっともっと、そばにいたい。
「気づけば……絢斗先輩しか見てなかったんです。この前、翔君に告白された時も……いつの間にか絢斗先輩のことが浮かんできて。それが何かわからなかったんです。なんでなのか……。そんな時こうしてお泊りに誘ってもらって……なにかわかるかもしれない。ただそんなことを思って、ここ数日過ごしてました……」
そしてようやく璃祢は気づいた。ずっと自分の中にあった、本当の気持ちに。
「僕は、絢斗先輩が好きです」




