#19 どんな感じだった?
朝から恥ずかしいやりとりがあったその日の午後、璃祢はあクラスメイトより若干少ない分のノートを運んでいた。
今日、璃祢は日直だった。
そのため、休んだり遅刻したりはできなかったのだ。結局あのあと絢斗は二度寝をしてしまったのだ。おそらく遅刻しているだろう。
いくらノートが薄いといっても、クラスメイト分の量にもなると結構な重量がある。若干危ない足取りで職員室に向かっている途中、見知った人物と遭遇した。
「あ、溺愛っ子くん」
「溺愛っ子くんじゃないです。僕は璃祢ですよ、美咲先輩」
ひらひらと手を振って近寄ってきた美咲は、ニコッと笑って続けた。
「でもほんとのことだよ?今日もしかして日直?大変そうだね」
「そうです。ちょっと重いですけど、頑張ります」
「半分持ってあげるよ。俺も職員室いくからさ」
「え、でも……悪いですし……」
「いいのいいの」
そう言って、半ば強引に璃祢からノートを半分受け取ると、そのまま歩き出した。璃祢も慌てて横へと並んで歩く。
廊下を進んでいくなか二人の会話は弾んだ。
「そうそう、そこのモンブランすっごく美味しいから」
「へぇ……先週出来たばかりなのに、情報通ですね」
「まぁね!好きなものには、特に敏感だよ。どんな些細な情報でも逃さないよ」
「モンブラン、今度買ってみます」
「超オススメ。そういえば、この前明星の不良に襲われたんでしょ?」
「はい。でも隆平先輩や翔君が助けてくれたので大丈夫でした」
「明星のトップとも会ったんでしょ?」
「トップというのは、赤い髪の人ですか?」
「そうそう。どんな感じだった?」
「そうですね……すごく怖い人でした。平気で龍平先輩たちに痛い事して……。正直苦手というか……好きにはなれません」
「ふーん……」
「あまりお近づきにはなりたくないですね。美咲先輩たちと一緒にいるほうがいいです」
「そうだね」
◆
某所にある貸倉庫。そこに集う不良はある人物により集められた。
「なぁ、本当にいいのかよ。まぁ俺らにとっちゃ喧嘩できるからいいんだけどよ」
「いいよ別に。ていうか、泰章がそう言ったんだしね」
「じゃ、行ってくっか」
ぞろぞろと出ていく不良たちを見送る、一人の少年はその光景に笑みをこぼした。
(俺よりあいつがいいなんてない……。それでもあいつを見るなら……あいつなんかなくなっちゃえばいいんだ)




