#1 見つけました
今度は不良君達が多く出てきます。
主人公は不良じゃないですが……
わちゃわちゃした彼らをよろしくお願いします。
入学式も終わり、今は午後からの始業式も終わろうとしている時間だ。真新しい制服に身を包んだ、明らかに新入生と思わしき生徒が一人、峯川高校の正門に居た。
新入生はすでに下校している時間なのだが、彼がそうではないのは昨日かわした約束のためだった。
入学式を終え配られた大量のプリントが入ったカバンを胸の前で抱えて、そわそわと校舎の方を見る。先ほどチャイムが鳴ったから、もうしばらくしたら約束の相手が来るはずなのだ。
しかし、彼――――清水璃祢が思いもしなかったことが起こった。
「あんれぇ?なんかちっこいやついんな」
「ピカピカの一年生じゃね?」
現れたのは派手な髪の色をして制服も着崩した、不良である。しかも3人いる。
「一年でこんな髪の色してるとか、生意気じゃん」
「そうそう、一年は坊主でよくね?」
「ぷっ、ウケルわ」
璃祢の髪はきれいな琥珀色だった。というのも母親が西欧人だからであり、決して染めているわけではないのだ。
しかし、瞳の色は父親の遺伝が強かったのか茶色なので、よく髪の毛は染めているんじゃないかと疑われがちなのだった。
「髪は……染めてないです」
璃祢にしてみれば、いつもの調子で弁解しただけだったのだが、それが不良たちの癪に障ったようだった。
「あぁ?生意気に言い返してんじゃねぇよ」
「あ、俺カッタ―持ってるわ」
「お、いいじゃん。生意気な口きけないようにしてやろうぜ」
なんでそんなもの持ってるんだろうか。そう璃祢は思ったが、太陽の光を浴びて怪しく光るカッターの刃に思わず言葉を失った。
(この人たち、本気で言ってるの?)
鞄を抱きしめる力が自然に強まった。逃げ出そうにも、足がすくんでしまって動かない。そんなことになるのは人生で二度目だ。
不良の一人が璃祢を羽交い絞めにし、カッターが迫ってきたその時だった。
「ちょいちょーい。君たちぃ、何しちゃってんの―?」
「そうそう。つーかさ、ちょっとあそこ見てみなよ。面白いから」
「「え?ひっ!!?」」
現れたのは二人組。
そのうち背が高い方はまばゆいオレンジのウルフカットヘアー。両耳に合わせて6つものピアスをつけている。先に話しかけてきた方である。
そしてもう一人は璃祢とあまり変わらない体系で、不良に目をつけられそうな感じを持っていた。だけど、この状況で笑ってるのでそうではないだろう。そしてたぶん不良だろう。
見事なハモリっぷりを披露した不良たちは、ある一点を見て顔を青ざめていた。璃祢もそのほうを見て、一気に思考が飛んだ。
璃祢がそうなってしまったのも無理はない。相手の姿は璃祢を驚かせるには十分だった。
まず目に入ったのは、きれいな金髪だった。璃祢の母親よりもきらびやかな金色は、恐らく人工のものだろう。だがそれよりもさらに璃祢の目を引きつけたのはその彼の瞳だった。遠くからでも、その色は際立って見えた。
(真っ赤だ。すごい、きれいな真っ赤な目)
林檎よりも、苺よりも深くだが、どこか透明感のあるその赤い色は誰の目でも一瞬にして引き寄せるほどだ。今までその瞳が、絡んできた不良たちを睨みつけていたが、彼らが自分の事に気付いたとわかると、反対方向に視線をそらしてしまった。
「はい、うちの不良の掟の一は?」
「「校内では騒ぎは起こすな」」
「ぽんぴーん!正解―!!いいんだよ―このまま続けちゃってもねー。総長キレさせてもいいんなら……ね」
「「すいませんっした――――!!」」
なぜかわからないが、不良たちは一斉にそのばから立ち去っていった。
否、逃げ去っていっただろうか。
「大丈夫だったぁ?禿げてないねぇ?」
「ああいうときは、先輩だろうとなんだろうと構わず、殴り殺せばいいんだよ。俺みたいにチビだろうとなんだろうとね」
「あ、はい……助けてくださってありがとうございました」
「君、一年生―?」
「はい」
「そっかぁ。入学早々ついてなかったねぇー。でも大丈夫―、うちは平和な不良が集まる高校さ!」
親指を立てて、ドヤ顔でそう言ってきたウルフカットの不良。
その不良を数秒もたたないうちにもう一人の不良が蹴り飛ばした。そしてにこりと笑って着地する不良。
「このバカのいうことは気にしないでいいよ。つか、早く行かないと俺らが総長に殺されそう」
「ヤッバー!!じゃ、新入りくん、バイビー!!」
「バイビーとか古」
騒がしく去っていく二人の不良は、あの金髪の不良の下へと駆け足で向かって行った。
お礼のお辞儀をしていた璃祢は、顔をあげて赤く染まった顔でその姿を見送った。
「見つけました……やっぱり、この高校だったんです!!」
そう、璃祢はこの高校にどうしても進学したい理由があったのだ。それこそ、先ほどの金髪の彼だ。
中学2年生の時、璃祢は町で不運にもカツあげに遭ってしまった。そして、助けてくれたのがあの彼だった。
璃祢は彼に憧れを抱いた。ただ単純に、自分とは違い男らしいということにらしい。そして、その時彼が来ていた制服がちょうど幼馴染の通う高校と同じもので、すぐに高校がわかった。
そして、その日から璃祢は再び会いたいという思いを胸に、猛勉強してきたのだ。
そして入学式を終え、運命的な再会を果たしたのだった。
高鳴る胸を弾ませていた璃祢のところへ、鞄を肩に担いだ生徒が駆け寄ってきた。
「璃祢!!わりぃ、HR長引いた」
「翔君、僕この高校に入学できてすごくうれしいです」
「は?なにいきなり?」
昨日の約束の相手、幼馴染の真田翔がわけがわからず首をかしげる。その様子になんでもないです、と返した璃祢は翔とともに正門から帰路へと着いた。
少し書き方変えました。
あと1話1話の長さも長くなってます。
更新速度はどうなるかわかりません。
それでも頑張ります!!