#18 いい加減にしてください!
R-15……です?
合わさる唇から漏れ出す熱を含んだ喘ぎ声。それは相手の動きに合わせて徐々に荒くなっていっていた。一つに交わった個所から聞こえる卑猥な水音が、室内に響く。
「あっ……やっ……ぁああぁっ……んあ……ひあっ!」
唇同士が離れて、大きくより鮮明に聞こえるその声が、とても男の放つ声とは思えないほど甘く耳に届く。押し寄せる快楽と、このひと時に感じる幸福感に溺れる。
「きゃぅっ……あぁ……だめっ……も……イっちゃ……あっ……あぁああ!!」
突き上げられる快感が、ついに限界に達し片方が果てるともう片方もそれにつられるように熱を放った。
荒く上がった息遣いだけが、部屋に聞こえる。ぐったりとした体をベッドに預け、ふと今までつながっていた相手を見る。だが無情にもその人物は携帯のディスプレイを見つめていた。
その表情は目を疑うほど優しげだった。何かを愛しんでいるような、そんな表情にも見える。
(何見てるの……。そんな顔で俺を見てくれないのに……。抱くだけ……じゃ……もう我慢できないのに……。どうしたら俺を見てくれるの?ねぇ……泰章……)
◆
少しだけ開いたカーテンの隙間から、わずかに差し込む朝日により璃祢は目を覚ました。眠たい目でぼやける中、起き上がろうとする璃祢だったが、それは何かによりはばまれた。
(絢斗先輩にぎゅってされてます。……起きれないです……)
璃祢の背中に回されている絢斗の腕が、力強く璃祢を抱きしめて離さない。何とか抜け出そうともがくが、その拘束は外れなかった。
仕方なく、璃祢は絢斗の体をポカポカ叩いた。
「ん……だよ……」
「絢斗先輩、朝ですよ。起きる時間です」
「まだ寝かせろ……」
そういって、さらに抱き寄せられる。璃祢の頬が完全に絢斗の体と密着し、起き上がるどころか悪化した。
「学校ですよ?朝ごはんも食べないとだめですよ?」
「んな早く行ってどうすんだ……寝る……」
「だめです。僕が遅刻してしまってはおこられてしまいます。それはだめです。絢斗先輩は勝手にどうぞ寝ててください。そして怒られちゃえばいいんです」
「お前なぁ……」
「おはようございます、絢斗先ぱぁ!!?ちょ!?」
不機嫌になりながらも、ようやく目を開けた絢斗に挨拶をした璃祢。だがそんな璃祢を絢斗は抱きしめたまま仰向けになった。自然に璃祢は絢斗の上に向き合った形で寝そべったようになった。
「絢斗先輩……僕おなかすきました」
「だから?」
「む……」
「そんな風にすねたって嫌だね。俺はまだ寝る」
「だめです!もう……どうすればおきて学校行ってくれますか?」
「キスしてくれたら考えてやる」
「な……」
とんでもない発言に、硬直する璃祢。そんな彼の様子を絢斗は面白そうに見上げていた。きゅっと絢斗が来ているスウェットを握り締めた璃祢は、うつむいてあれこれ考えているのか、ふるふると震えている。
「い……」
「い?」
「いい加減にしてください!」
「ぶふっ!?」
絢斗の顔にまくらがぶつけられた。もちろん璃祢によってである。そしてその衝撃で緩んだ腕から、璃祢はするりと抜けだしベッドから離れた。
「朝からそんなのだめです。エッチです。勝手に学校行っちゃいますからね!」
璃祢はそういうと、洗面所に向かうためドアから出て行った。
一人ベッドに残った絢斗は「くくっ」と笑いをこぼし上体を起こした。
「エッチって……俺すっげぇ我慢してんのに。ありゃねぇだろ」
(まぁ、だからこそ手に入れんのを楽しんでんのか……。あーやべ……煙草吸いてぇ)
R-15って言っても璃祢たちの絡みじゃないですね……
ていうかあるのか、どうか怪しいですね……え?




