#16 お邪魔します
璃祢の家から数十分ほど離れたところに立つマンションが、絢斗の住むマンションだった。あっけにとられている璃祢を引っ張り、絢斗はその中に入っていく。
エレベーターで7階まで行き、そこから部屋まで向かう。
(え……僕、お泊りしますって言いましたっけ?あれ?)
部屋についたのか、カギを取出し玄関の扉に差し込んであけた。そこで腕は離され、絢斗はそのまま璃祢を置いて先に部屋の中へと入って行ってしまった。「パタン」とドアが閉まり、璃祢は一人部屋の前に佇む。
「あとは自由にしろということですか?」
目の前にあるドアと、来た方向を交互に見る。「ぎゅ」っと通学かばんを抱きしめた璃祢は、絢斗の後を追って部屋の中に入った。
「お邪魔します……」
そろえて靴を脱いだ璃祢はそのまま奥へと進んだ。廊下の両脇にトイレと風呂場があり、その奥にあるドアの向こうは一間の部屋があった。1Kという間取りだ。
箪笥をあさり私服をわきに抱えた絢斗が、璃祢の立つドアのほうに向かってきた。
「俺シャワー浴びてくるから、その間好きにしてろ」
そう言って絢斗はお風呂場へと消えた。璃祢はカバンを隅に置くと、ちょこんとベッドに寄り掛かるようにして座った。小さなキッチンスペースにベッドと丸いテーブル、テレビと箪笥がある。きれいに片付いているというよりは、あまり散らかさないのかもしれない。
ふと箪笥のわきにあるものに目が留まった。するするとそれのそばに向かう。
それはケージだった。1メートル四方もの大きさのその中から、璃祢を見つめる小さな黒い瞳。白く丸い小さな体はもこもこの体毛に覆われている。
「うさぎさん……かわいい……あっ」
その璃祢の声に驚いたのか、うさぎは後ろを向いてしまった。璃祢はさらに悶絶した。
(後姿がかわいすぎます!!ひやああああ!!)
「お前、何してんだ?」
「ふぎゃっ!?」
いつの間にかシャワーから戻ってきた絢斗がすぐそばに現れた。おかげでかわいさに悶絶していた璃祢は、盛大に驚いた。
まだ髪の毛が乾ききっていないのか、風呂上がりの独特の色香を感じさせる絢斗。そんな彼は、うさぎのケージの扉を開けた。
ちまちまと短い脚でケージから出てきたうさぎは、そのまま差し出されていた絢斗の手の上に乗っかった。小さなその体はすっぽりと絢斗の掌に収まっている。そしてそのうさぎが璃祢の目の前にまで近づいた。
「ふわわわわ……」
璃祢の小さな手ではやや収まりきれていないが、柔らかくて軽いそれはまるで綿菓子のようだった。
(どどどど、どうすればいいんですか!?あったかくて、ふんわりで……ぎゅってしたいですけど……できないですっ。潰しちゃいそうですっ……)
しばらくうさぎの可愛さに悶えていた璃祢は、夕飯出来たぞという絢斗の声に気付くまでずっとそうしていたという。
1Kとか、間取り適当すぎます。
うさぎ飼ってないんでおかしなところあったらすみません。
でもうさぎで検索して出てきた画像にやられたのは言うまでもないです。
イメージは、ジャージーウーリーという種類です
ちみっこくてかわいいです。




