#15 今、なんと?
これまで悩みがない生活を送ってきたというわけではない。それでもそういう時は悩みを聞いてくれる人物がいた。
(いつから……なんでしょうか……)
好きだと、そう伝えてきたときの翔の顔が離れないでいた。あんな表情をする幼馴染を見たことがなかった。
あれから一晩考え込んでいた璃祢だったが、一向に答えは出てきそうになかった。昨日の出来事を思い出すたびに、のどに何かが詰まったような苦しさを覚えた。
そんな璃祢の自室のドアを誰かがノックした。
「璃祢、朝ですよ。もう起きなくては、学校に遅れてしまいます」
「お母さん……おはようございます。すぐ下に行きます」
「朝ごはんできてますからね」
「はい……」
重く感じられる体をゆっくりと起こし、制服に着替えると階下に降りた。ダイニングにはすでに和朝食が出来上がっていた
「おはようございます……」
「おはよう……あら、璃祢。顔色が悪いようですけど、具合悪いんですか?」
「いえ、大丈夫です。いただきます」
◆
登校してからも璃祢は上の空だった。いつもならしっかりと真面目に授業を受けているが、今日はもうすでに4回も先生に注意されていた。自然に小さくため息すら出てきた。
学校に来ても、翔と出会うことはなかった。今までも元々学年が違うため、会うことは放課後くらいしかなかった。今はそれが少しうれしくすらあった。
(今度は……答えられるでしょうか……。あの時は、逃げ出してしまいました。翔君はふざけてたわけでも、冗談で言ったわけでもなかったんです。それなのに……それなのに僕は、逃げてしまった。答えが分かりませんでした……)
今ですら、自分の中にあるはずの答えが見つからないでいた。
いつも気になって仕方がないほぼ無言の絢斗との下校すら、今日の璃祢にとっては全く気にならなくなるほどだった。
◆
そんな状態が一週間ほど続いた。璃祢はほぼ寝れない夜が続き、それを見た璃祢の母が、心配して璃祢に問いかけた。
「何か悩みでもあるのですか?」
「え……いえ、何でもありません……。最近疲れがたまってるんだと思います」
そんなやり取りを交わした日の放課後。無意識にため息をついてしまった璃祢に絢斗が気づいた。
「最近やけにため息をついてるな」
「え?そうですか?」
「……何かあったのか?」
「いえ、少し考え事があって……それでそのせいで母に心配をかけてしまってるんです。でもまだ答えは出そうにないですし……。明日の朝にでも、問い詰められてしまいそうで……。おうちに帰りたくないなんて、今まで思ったことなかったんですけど」
「俺はしょっちゅうだけどな」
そうつぶやくと、今度は絢斗の方がため息をついた。
「すみません、気にしないでください。僕の問題ですから……」
「なら……俺の家に来るか?」
「はい……ん?え?……えっ!?」
思ってもいなかった返答に、思わず璃祢は立ち止った。それにつられるように絢斗も数歩先に立ち止り振り返った。
「絢斗先輩?」
「なんだ?」
「今、なんと?」
「家に帰りたくないんだろ?ならおれの家に来い」
「え……でも、先輩の家にお邪魔するの迷惑になります。そんな急に……」
「実家暮らしじゃねぇよ。高校入ってからは一人暮らし。お前一人っ位変わりねーよ」
(確かにおうちに帰れないです。帰ったらお母さんに取調べされます。でも……絢斗先輩のおうちにお泊りするって……。でも……)
「ほら行くぞ。こっちだ」
「ふえ?あの……先輩―!?」
あたふた考えている璃祢の腕をつかみ、絢斗はそのまま住んでいるマンションへと向かっていった。
敬語で話してると、璃祢の母が外人であることがわからないですね。
金髪美人で着物だと私的にはいいんですが……




