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#13 ズル休みですね



 泰章との騒ぎから3か月余りが経とうとしていた。


 あれからというもの、璃祢は不良とのかかわりを以前よりも減らし(といっても、放課後の付き合いだけ)、翔と絢斗以外はほとんど会っていない状態だった。意外だったのは絢斗といるほうの時間のほうが長いことだろう。


「すっかり秋ですね……」

「そうだな」


(会話が恐ろしく続かないのですが……)


 もともとあまり話したことがない二人だったため、共通の話題というのがいまだにわからないままだった。ちょこっとずつ璃祢なりに探りは入れているのだが、何せ返答が短すぎて仕入れられる情報が少なかった。


(僕としてはもう少しお話しできるようになりたいんですけど……。せめて翔君がいてくれたら、もう少しお話しできるはずなんですが……)


 その当人である翔は最近とんと姿を見せていない。学校には来ているらしいが、璃祢にだけ姿を見せない。電話をしてもメールを送っても返事はない。


「あ、ぼく今日はここで」

「どこか行くのか?」

「はい。でもおうちのすぐ傍なので。また明日です」

「あぁ」


 絢斗と別れた璃祢は、そのまま行き慣れた一軒の家に向かった。家に着くとその玄関の前でちょうど出てくる人影にあった。


「あら、璃祢君じゃない。久しぶりね、すっかり高校生になっちゃって」

「おひさしぶりです。これからお仕事ですか?」

「そうなの。翔なら家にいるわ。狭い家だけどゆっくりいて行ってね」

「はい。お仕事がんばってください」


 ここは翔の家だ。翔の母親は近所の居酒屋でバイトをしている。とても働き者で優しいひとだ。

 璃祢は「おじゃまします」と挨拶してから、きちんと靴をそろえて上がった。階段を上ろうとしたら、リビングからテレビの音が聞こえたのでリビングのほうへと向かう。

 半開きだったドアを開けると、そのドアが「キィ」と音を立てた。見慣れた後頭部がおかれたソファの上に見える。


「なんだよ母さん、忘れ物か……え……?」

「おばさんなら先ほどお仕事にいかれましたよ、翔君」

「璃……祢……?」

「ほかの誰に見えますか?……ズル休みですね……」


 そう、翔は今日学校を欠席していた。さぼりではなく、きちんと連絡を入れていたらしく、それを昼休み隆平から聞いた璃祢はお見舞いに来たのだ。

 だがその翔はリビングでのんきにテレビを見ている。れっきとしたさぼりなのは明白だった。


「ちがうっつの。今朝はまじで風邪。熱あったし、頭はガンガン痛かったって。じゃなきゃあの母さんが休ませてくれると思うか?」

「それもそうでした。おばさんはすごくまじめな人です。もうよくなったんですか?」

「まーな。……つか、一人で来たのか?」

「いえ近くまで絢斗先輩に送ってきてもらいました。明日は翔君も一緒に帰れますね」

「そうだな……。そんなとこ立ってないでこっち来いよ。なんか飲むか?」

「病み上がりの人に用意させては申し訳ないです。勝手に飲み物もらいますよ?」

「大したもの入ってないけどな」


 冷蔵庫から麦茶を拝借した璃祢は、コップに次いでそれを持ちソファに腰かけた。







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