#10 どこにいる?
暴力反対〜(´Д`)
さすがに、4人分(それ以上の量はある)の昼食を、隆平一人に持ってこさせるのはいかがなものかと思った璃祢は、一緒に店内に行き軽いものを持つことにした。「璃祢ちゃん優しー」と店内で隆平にギュッとされたのは内緒の話だ。
隆平が前を行く形で、店内から出ようとしていたら、その隆平がいきなり立ち止り、璃祢は鼻をしたたかに彼の背中にぶつけてしまった。両手がふさがってて痛む鼻を押さえることもできない。
「隆平先輩?」
「やっば。なんであいついんの……璃祢ちゃんこっち」
「ふへ?」
いきなり腕を掴まれ、店の脇の路地に引っ張られた。訳もわからない璃祢を物陰に隠すようにし、隆平は持っていた荷物を地面に置くと、璃祢の方を振り向いた。
「璃祢ちゃん。悪いけどここで荷物番してて」
「え?」
「ちょっと野暮用かたずけてくんね。だいじょーぶ、すぐ戻ってくるから。あ、先に食べちゃダメ―だからね!」
「はい」
「じゃ行ってくるよん」と言って行ってしまったが、それまでの隆平はいつもより少し真面目な顔をしていた。だからこそ、璃祢も何かあるんだと思いそれに従った。
◆
店を出て隆平の目に入ったのは、何の変哲もない風景だった。そう店の前は何の変わりもない。でも、待っているはずの二人がいない。不審に思って少しあたりを見回すと、20メートルほど先に二人の姿が見えた。そしているはずのない、むしろいられると困る人物の姿も見てしまった。5人の見知らぬ不良とその前で堂々としている男。
あの赤い髪は間違いなく奴だ。
そう確信した隆平は、まず喧嘩に巻き込まれてはいけない璃祢をどこかに身を隠させることにした。そして無事に路地に隠すことに成功、璃祢も荷物番を了承したから、あそこから出てくることはないだろう。そして隆平は、その渦中に自ら入って行った。
「やっほーなにしてんのー?」
「隆平!?」
「うわなに、うぜーのもいんのか」
あからさまに隆平の登場に顔をしかめたそいつは、やっぱり隆平の予想通りの人物だった。肩にまで届きそうな、長い髪だが、癖っ毛なのかワックスでもつけたように跳ねあがっている。妙に隆平のウルフカットとかぶるのだが、そういうとぼこられるのは目に見えているので言わない。右耳にピアスが三つ、左にも一つ。さらにアクセサリーが首や手にいっぱい光っている。すべてシルバーだ。そしてシャツで見えにくいが鎖骨から首にかけて蛇のようなタトゥーがある。
峯川高校にはライバル校と言っていい高校があった。しかも一駅しか離れてないため、学区がものすごく重なっている。
そのため、不良はよく縄張り争いでもするかのように喧嘩をするのだ。
そのライバル校こそ明星学園高等学校である。そして今目の前に居る赤髪の男こそ、そこの不良の頂点――――真野泰章。
「真野じゃんー。何々?俺らになんかよぉ?うちのトップさんならいませんよ―」
「お前と話してるとストレス溜まってしょうがねーよなッ!!」
「っがは!?」
「蓮!!」
そのストレスの穿き口にされたのは、隆平ではなくその横に居た蓮だった。容赦のない蹴りが蓮の腹に食い込み、蓮はそのまま近くの壁に吹っ飛ばされた。痛みとこみ上げてくる吐き気にあらがう様に咳き込む蓮。
すぐに隆平と歩夢が駆け寄るがそれよりも早く蓮の下にたどり着き、その体を起こした人物がいた。
「テメェ、蓮を下せ」
「あぁ?何言ってんだ屑ども。お前ら立場わかってんのか?あ?」
いち早く蓮に近づき、首を掴んで持ち上げたのは真野だった。
「しっかし、細い首してんな。簡単に捻れそう」
「離せよ……っ……お前は屑じゃない愚図だ」
「あ?お前もわかってねーの?つか、わりと良い顔してんな。一回抱かせろよ」
「何言ってんだ、ふざけんな。お前女好きじゃなかったのか?」
「あ―それ中学ん時ね。今はどっちも。好みでその気になれば」
「マジ愚図……あがっ!?うぁ……」
蓮の首を掴む手に力を込めた。今にも握り潰されそうなほど、その力に加減された様子は見えない。
「蓮!!徴発はよせ!!」
「そうそう、俺が手を滑らせてもいいんだぜ?俺さ、人探ししてんだよ。それに協力しろよ。簡単な話だろ?」
「人探しだ?セフレでも探してんのか?」
「会ったことねーし。まぁ……顔は良かったな。テメェらなら知ってんだろ?」
「は?」
なぜ明星のトップが探している人物を自分らが知っているのか、3人には見当もつかなかった。トップの絢斗を探してるなら最初からそういうだろうが、そうではない。しかもあったことがないということは、峯川の不良ではないということだろうか。
「テメェらさ……最近一人の後輩可愛がってんだろ?」
その泰章の言葉に、3人は凍りついた。3人の脳裏にはとある共通の人物が浮かび上がる。
「そいつ……どこにいる?」
やっと出てきました
この作品で一番の問題児
真野泰章くん。
暴力的なほうでも、性的な意味でも問題児です。
でも書いてて楽しかったりします。




