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#9 生まれたての感じがします

 


 梅雨に入る少し前のこの時期、学校のプールはひどく汚れているのはどこも同じ。だがそんな場所に不良がモップやデッキブラシ片手に居るのは、この上なく珍しいのではないだろうか。


「うっわー、一種のホラーじゃん。キモ」

「誰のせいだと思ってんの?」

「ヌメヌメしてます……」

「ったく、さっさと終わらせるぞ」


 歩夢に促され、隆平、蓮、璃祢は水が抜かれぬめりのあるプールの中に足を踏み入れた。


 




 そもそもこうなったのはつい数十分前の事。


 




  ◆


 




 テスト週間真っただ中のこの日は、午前中のみで帰れる。その帰りにいつも通り溜まり場によってこうと約束してた璃祢は、早くHRが終わったので、隆平のクラスに向かっていた。

 


 まだ隆平のクラスはHR中だったので、廊下で待っていると蓮が来た。さらに隣のクラスだったらしい歩夢も加わり隆平が来るのを待っていた。そこまでは何ともない。


 



 問題はそのあとだった。


 




 隆平が長いHRから解放された後、飲み物を買いに行きたいと言い出したので購買の販売機に向かった。そこでパック飲料を買って、ストローを刺したとたん、中身が噴き出した。角を持たなかったのだ。

 






 そしてちょうど通りかかった生活指導兼体育教師にかかってしまったのだ。


 






  ◆




「っつーか、俺ら完全にとばっちり受けてんじゃねーか。テメェ一人でやれや」

「ちょ、この広さ一人って無茶!!」

「安心しなよ、璃祢にこんなことさせたって、副総長には言っとくから」

「それマジやめて――――!!璃祢ちゃんごめんよぉ――――!」

「さっさと終わらせて、及川さんのお店行きましょう」


 ちなみに翔は一足先に下校していた。もしいたら隆平は今頃、残念なことになっていただろう。


 璃祢たちは無心になって広いプールを磨き続けた。


 その途中では様々なことが起こった。


「おい……、大丈夫か?」

「生まれたての感じがします。どうすればいいですか」

「動かなきゃいいんじゃね?」

「うよ……うぬぬ……」


 デッキブラシを杖にして、ぷるぷる危うくたつ璃祢と、それを簡単にあしらってひたすら床をこする歩夢。ちなみに彼は今眼鏡をかけず、プールを囲うフェンスにかけてある。伊達眼鏡らしい。


 この後滑った璃祢に巻き込まれ、歩夢が下敷きにされたのは言うまでもない。


「なかなか落ちない、頑固な汚れ!」

「ちょ、蓮!!それ俺!!汚れじゃないよ俺だよ俺!!ギャ――――!!」


 蓮にひたすらモップ掛けされる隆平。こちらは通常運行ともいえる。


 





 そんなこんなでプールを磨き上げ、解放されたのはそれから3時間がたとうとしていた。


「せっかく早く帰れたのに、おい昼飯おごれ」

「ちょ……歩夢人の5倍は食うじゃん。俺の財布空っぽになっちゃうよぉ――――」

「でもおなかすきましたね」


 


 昼前に学校が終わってそれからプール掃除だったので、4人とも昼ご飯抜きの状態だった。さすがにおなかは限界である。仕方ないので及川の店と学校の中間にあるバーガーショップによることにした。

 隆平一人で4人分買ってくることになり、他の3人は店の前で待つことにした。




 



 ◆


 





 その一時間前――――


 とあるマンションの一室。


 上半身裸のまま、自宅の冷蔵庫からペットボトルを取り出す。自然のまま前に下りていた前髪を茹だるげに後ろに撫でつける。ペットボトルを傾け、水で乾いたのどを潤した。


 ペットボトルをしまい、寝室に戻る。独特の事後のにおいが漂う中、ふと先ほどまで一緒に居た人物の置き土産が目にとまった。



 それは一枚の写真。


 それも隠し撮りでもされたかのように、どこか不自然なアングルで取られたものだった。被写体はとある一人の男子高校生。新入生だろうか、まだ制服に斬られている感じが取れない。幼い顔立ち、きれいな髪の色。



 思わず男の口から笑いがこぼれた。


「見つけたぜ……よーやくな。悪いが俺は……どんな手段でも使う……。手に入れたいものを手にするためにならな」


 その写真を携帯のカメラ機能で撮り、それを複数の人間にメールに添付し一斉送信した。


『こいつを探し出せ。俺に報告。俺が行くまで、手は出すな』


 








 そして30分後。一通の返信とともに、男はどこかへと出かけていった。




少しずつ、考えてるストーリーで進んでます。


が、どうしても違う方へ逸れていくので、気が気じゃないですね。


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