03 急襲
(* ̄□ ̄*;
気がついたらめちゃくちゃ間が空いてました…
ゴメンナサイごめんなさいごめんなちゃ…舌噛んだッ!?
しょ…しょれではどうぞ…(まだ痛い)
「美里!!待ってください。」
『御門』の本家、源家の敷地を歩いていた花散美里は、誰かに声をかけられ振り返った。
パタパタとひざ下までの長いスカートを翻し、その声の主は走ってきた。腰まで届く長いストレートの黒髪に知的なメガネが印象的な彼女…源葵は、美里の前に立つと分厚い書類の束を渡した。
「これ…中将兄様があなたに渡してくれって。」
「これは…この前のDNA鑑定の結果…?」
書類を読んでいく彼女の瞳がだんだんと鋭さを帯びていく。最後のページまで読み進めてから考えこむように目を閉じ、またすぐに開いた。
「そう…やっぱりあの死体は弥生雅彦だったんですね。」
「ええ…あなたの報告通りでしたら殺したのはやはり……でも、いったいなぜなのでしょう?彼を殺す事による利益など、彼女たちにはないはずですが…」
「私たちへの警告かもしれません。あいつはこういった派手なことが好きですから。
…では失礼いたします。【切花】の皆にもこのことは報告しなくてはなりませんゆえ。」
「美里。光治にも伝えてやってはくれませんか。」
「……………」
「…なぜそんな嫌そうな顔をするのですか。」
「私は彼が嫌いです。いくら『藤宮』の人間でも弱すぎます。足手まといになるだけです。
それに……失礼ながら葵様。『御門』は彼を仲間にしたのは藤宮紫が目的なのでしょう?いえ…仲間などではありません。むしろ人質に近いのではありませんか?」
「美里…!?貴方いつから…」
「失礼いたします。情報を手に入れ次第、随時連絡しますので。」
礼儀ただしくぺこりと礼をして、美里は一度も振り返らず源家の敷地から出て行った。
葵はその様子を見て大きなため息を突く。
「全く…切れ者過ぎるというのも困りものですね。まぁ彼女が光治の入門の手伝いをしたのですから気づいてもおかしくはないのですけれど。
しかし…『花散』が紫のことを知っているのであれば…」
そこで葵は一段言葉を切った。
最近滅多に会わなくなった幼なじみの顔が浮かぶ。殺し屋の師弟としての関係ではない、『葵』として大切な大切なひと。
「光治……気を付けて。どうか……無事に帰ってきて。」
『御門の後継ぎ』ではなくただの『葵』としての願いを月にかけ、何事も無かったように業務に戻った。
しかし…この願いが叶わなかったことを、葵は後になって知るのだ。
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「お兄ちゃんっ!!起きなさい、学校遅刻しちゃうよ!?」
「ぐわぁああ!!?」
どてんっ!!
「い…いてぇ。何すんだよ紫!んな布団はいで起こすことなんかしなくても揺すり起こすとかあるじゃねぇかっ!!」
「だって前にそれやっても起きなかったんだもん。それとも何?あたしに『おにいちゃ~ん、早く起きないと遅刻するよぉ~』とかっていて欲しいの!?」
「い…いや、それもなんか違和感を感じるんだが……」
「とにかく!!早くしてよ。あたしだって学校あるんだからね。」
「へいへい…」
「へいじゃないっ!!はいは一回!!」
「はいっ!!」
朝、紫に布団をはぐというアニメの中でしかやらなさそうなことをされて起こされた。
しょうがねぇだろ…昨日だって仕事入ってて帰ってきたのは3時ぐらいだったんだから。と心の中で舌打ちしながら朝飯のトーストを口に詰め込み家を出た。もちろん弁当は忘れずに持っておいた。
弥生組が何者かに惨殺された日から、ちょうど4日がたつ。あれから花散とは仕事で組んでないし、連絡すらない。DNA鑑定にかけたんだったらそろそろ結果が出てもいいころだと思って会話をちょくちょく期待しているんだが…相手は全くの無視。ツンとすました顔でいつも本を読んでいる。
あー…なんか思い出したら腹が立ってきた。
オレの気持ちと反対に空が気持ちいいぐらいに晴れ渡ってんのが余計にイライラする。
「……父さん、母さん」
ふと、二人のことを思い出し視界が霞む。っ…なんでこんなとこで泣いてんだ。男泣きって…恥ずかしい、みっともねぇ。
強引に制服の袖で涙をふいた。
その時だった。
「ごきげんよう。藤宮光治様。」
ゾクリと。
一瞬で背筋が凍った。
「な……!?」
殺気!?
振り返って声の主を見る。そこには、着物を着た少女がいた。
歳は、オレと同じぐらいだろうか?
雪のように白い肌に、少し茶髪が混じっている黒くまっすぐな髪。腰まで届くそれには紺色のリボンがつけられている。紫色の蝶や赤い椿が彩られた真っ白な着物は赤い帯で締められ、唇は妙に紅く艶めかしい。
そして何よりも特徴的なのはその瞳。霞みがかかったような不思議な色合いで、紫色をしている。
その瞳が、オレをまっすぐに見つめてきている。うっすらと笑みを浮かべているが…それがかえって薄気味悪い。容姿だけを取れば、花散や葵さんに並ぶぐらいの美少女なのに…。
思わず見とれてしまっている自分に気づいて、慌てて目を背ける。気味が悪いのになぜだか眼が離せなかった。
「っ…なんでオレの名前…知ってんだよ。ていうかお前、だれだ?」
「わたくしは、『朧月詩織』と申します。」
「朧月…詩織…?」
「はい。詩織、とお呼びくださいませ。」
よく通る凛とした声で彼女―詩織は言った。
その声には先ほどのような殺気は込められてはいない。普通の綺麗な声だった。
だが…さっきから頭の中で警報が鳴り続けている。殺し屋をしてきた勘…とでも言うべきだろうか。
こいつは、ヤバイ。
それこそたくさん人を殺してきた中で、おそらく…最も強い殺し屋だ。
オレじゃあ絶対に敵わない。
ごくりと唾を飲み込む。自然と身体が戦闘態勢になり、手にはじんわりと汗をかいてきた。
幸いにも人は通っていない。戦闘をしてもすぐにはばれたりしないだろう。こいつはそれがわかっててオレをこんなところで呼び止めたのか?
ったく…今日はついてねえな。
覚悟を決め口を開く。
「それじゃあ詩織、もう一度聞く。お前はなんでオレの名前を知っていたんだ?目的は…なんだ。」
「ふふ…。理解が早くて助かりますわね。貴方のお名前は殺し屋の間では噂になっておりますから。
では本題に入りたいと思います。藤宮光治様。わたくしは貴方に交渉をしに来たのですわ。」
「交渉?」
「ええ。貴方の妹…藤宮紫様を貰い受けたいのです。」
「っなんだと…!?」
嫌な予感がした。もし、その理由があのことを目的にするものだったらー!!
「なんで…紫が必要なんだよ。」
「それは、貴方が一番よく知っていることでしょう?わたくしは紫様の『神子』の力が欲しいのです。」
「!!!」
あのことがもうばれたのか!!
一気に心臓の音が跳ね上がる。こいつは完璧にマジだ。手に入らないのならオレを殺してでも紫を奪いに行くだろう。…断る選択肢なんてどこにもないってことか。
どうする?どうすれば…紫に危害が及ばなくなるんだ?
こいつに真っ向から勝負を挑んでも絶対に勝てない。一方的にいたぶられて…おそらくそれで終わり。紫は自動的にこいつの手の中に収まる。
素直に渡せばオレは死ななくてもすむし、紫だって…おそらく悪いようにはされないはずだ。一番安全で、なおかつ効率の良い解決方法。結果だけ見れば…この策が最善だろう。
でも……あいつは……!
『お兄ちゃん…お兄ちゃんはずっと、ゆかりのそばに…いてくれるよね?
お父さんとお母さんみたいに…ゆかりを、ひとりになんか…しない、よね?』
『一人になんか、するわけねぇだろ…ずっと側にいて、お前を守ってやるよ。』
『ほんと…?約束してくれる?』
『ああ!約束する』
『…うんっ!!ずっといっしょだよ、お兄ちゃん。うそついたら、針千本のましちゃうんだからね!!』
「………………」
一年前に交わした、大事な約束。
破ったらあいつ…きっと怒るだろうな。
………よし。決めた。
「さて、そろそろ結論をお聞かせくださいませ。大人しく紫様を渡せば、悪いようには致しません。
さぁ、どうしますの?」
オレの結論。それはー!!
「…はっ、紫を渡すなんて嫌だねエッ!!」
オレは足元にあった砂を思いっきりつかむと、詩織に向けて投げつけた。
「っ!?砂埃…ですって!?」
「こういうときは、逃げるが勝ちなんだよっ!!」
そのまま思いっきりダッシュする。相手は人間なんだからこれで少しは時間が稼げるはずだ。
その間に紫を安全なところに避難させないとー!!
「…あらまぁ…わたくしも舐められたものですわね。これしきのことでまけると思っていましたの?」
ふわりと。
視界が暗くなったと思った瞬間、彼女は目の前にいて……
「さようなら、藤宮光治様。」
ぞくりとする声とともに、どこから取り出したのかも分からない大きな槌がオレの頭上に降りおろされた。
「…何やってるの。本当にあんたはスキだらけね。」
カキン、と。
軽い音を立てて槌がオレの頭のすぐ上で止まった。
間違えるはずがない。この皮肉っぽい声は…!!
「っ……また…貴方ですの、美里!!」
「お久しぶりね、詩織。その歳になってまだそれを使いこなせてないの?」
花散美里が、そこにはいた。
個人的にこの作品で出てくるキャラ(これからも含む)の中では今回の新キャラ『詩織』が一番好きです。
後ほど説明も着けて行きたいと思っていますので、みて好きになってくれれば…嬉しいですね(^^♪
感想、ぜひぜひくださ~い!!