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高千穂 天の浮き舟
先の平元の戦で都を追われた大智瑛麟は、故郷九州へ逃げ帰った。三十万の精鋭はほとんどが海すら越える事なく周防の海に消えた。わずかに付き従うものは15名を数えるだけだったという。彼の長子麒鳳丸もまた十五才の命を壇の浦に散らしていた。豊後の国表の臼杵城すらも、彼の凋落ぶりに気づいた島津勢に奪われていた。
「おのれ、平雅盛、必ず帰って見せるぞ。」
そうさけぶ大智瑛麟の髪には白いものが混じり始めていた。
討っ手の追撃をさけ、玄岳城を目指して、瑛麟はあえて山間に馬を進めた。夏とはいえ、道亡き道を越える強行軍である。一人、また一人と倒れ、あるいは逃げていった。
高千穂の峰にたどり着いたとき、五人となった部下の一人が谷底に眠るそれを見つけた。鈍色に輝くそれは巨大な鳥の卵を思わせた。そして、突如、それは巨大な岩を吹き飛ばして空へと舞い上がったのである。
「天の浮き船」
誰ともなくその言葉を漏らしていた。
恐れおののく一同の前に白い羽衣に包まれた乙女の姿があった。勾玉をかけ、輝く羽衣にその身を包み、艶やかな髪を後ろで束ねていた。瞳は閉じられたままだった。
「ようこそ、我が血を継ぐ者よ。汝の望みをかなえん。我が血の一族によってこの豊葦原を再び治めん。」




